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
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「世界で活躍する
16人のクリエイターと共に」
世界で活躍する16人のクリエイターが、渋谷の公共トイレを生まれ変わらせる。創業者精神にも通じるプロジェクトに20、30代の若手社員たちが名乗りを上げた。
![[恵比寿公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main01.jpg)
![[恵比寿公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main01_smp.jpg)
![[西原一丁目公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main02.jpg)
![[西原一丁目公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main02_smp.jpg)
![[代々木八幡公衆トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main07.jpg)
![[代々木八幡公衆トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main07_smp.jpg)
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渋谷のトイレが変わる画期的なプロジェクト
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日が暮れて、渋谷の空に夜が広がり、公園や道は薄暗がりの中。だが、そこに人の往来が絶えない場所がある。人々が向かう先には「見たことのないような公共トイレ」があった。
THE TOKYO TOILET(ザ・トウキョウ・トイレット)。渋谷区にある17カ所の公共トイレを、世界的な16人のクリエイターが生まれ変わらせるという日本財団のプロジェクトだ。クリエイターは一流の顔ぶれがそろった。建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞受賞の建築家から、日本を代表するクリエイティブディレクターまで。彼らがデザインしたプランを基本・実施設計に落とし込み、施工する役割を大和ハウス工業が担う。
プロジェクトリーダーである営業の平は、この話を聞いた当初、「できないと思いました」と笑う。クリエイターの方々からはどんな個性的なプランが出てくるのか予想もつかず、スケジュールや予算も心配だった。それでも平は「参加されるクリエイターのお名前を見て、本当にワクワクしました。こんな仕事に携われるんだ」と胸を躍らせた。
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 建築事業部 主任
平 眞弓
MAYUMI TAIRA
![[恵比寿東公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main03.jpg)
![[恵比寿東公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main03_smp.jpg)
![[神宮前公衆トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main08.jpg)
![[神宮前公衆トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main08_smp.jpg)
![[鍋島松濤公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main09.jpg)
![[鍋島松濤公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main09_smp.jpg)
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妥協せず最後まで突き詰める
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社内のプロジェクトチームは20、30代の若手で結成された。一流クリエイターとの共同事業を通じ、若手社員が経験を積むという大きな目的があった。各事業部内で募集をし、意欲的に手を挙げた者が参加した。半数以上を女性が占め、女性の現場監督も多い。事業部は3つにまたがる。主に事業施設を手がける建築事業部、商業施設が得意な流通店舗事業部、賃貸住宅を専門とする集合住宅事業部だ。これから伸びる若い社員たちが、このプロジェクトに参画すれば、会社全体の底上げにもつながるだろう。
チームのメンバーはそれぞれ担当するクリエイターを訪ね、そこで最初の衝撃を受けることになる。坂茂氏の事務所で目にしたのは、透明でカラフルな模型だった。トイレの壁が電気のON/OFFで透明から不透明に切り替わる。想像を超えたデザインに、帰り道、皆の興奮が収まらなかった。槇文彦氏の事務所では、発注から短期間にもかかわらず、基本設計の高い精度に驚いた。タコ公園と呼ばれる公園に新しく生まれる「イカのトイレ」、その親しみやすいデザインの裏にある、建築家の緻密な計算に引き込まれた。
実施設計や施工に入ってからは、クリエイターの方々が最後の最後まで突き詰めようとする姿勢を学んだ。「屋根の鉄板をあと1cm薄く」「製作した部材の位置がずれているから、一から作り直そう」「景観に合わない自動販売機や監視カメラの位置を変更できないだろうか」。誰もが快適で安全に使用できるよう、点字の触地図などのデザインにもこだわった。どの事務所でも事あるごとに、妥協しないクリエイティブを目の当たりにし、設計者としてあるべき姿を教わった。
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社内プロジェクトチームの定例会議
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タコ公園と呼ばれる恵比寿東公園
![[はるのおがわコミュニティパークトイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main04.jpg)
![[はるのおがわコミュニティパークトイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main04_smp.jpg)
![[東三丁目公衆トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main05.jpg)
![[東三丁目公衆トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main05_smp.jpg)
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自分たちの強みと足りなさを知る
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このプロジェクトには日本財団をはじめ、渋谷区、クリエイターの方々、場所によっては土地オーナーさまなど、実に多くの人が関わっている。さまざまな意見をまとめる際には、大和ハウス工業が日頃から複雑なスキームの案件を扱っている経験が生かされた。
狭小地での施工実績も役立った。工事担当の田島は「敷地や道路が狭く、事前協議や申請が通常より多く必要でしたが、経験を生かしてスムーズに着工することができました」と語る。基本設計の段階から工事部門として入るのは初めてだったが、おかげで施工に配慮した図面ができた。また、高い施工品質が要求されるだけに、腕のいい協力会社を選抜。現場所長として臨んだ恵比寿公園トイレは、杉板型枠のコンクリート打ち放し壁がデザインの要だった。緊張しながら型枠を外すと、木目がきれいに浮かび上がった。クリエイターの方にも喜ばれ、優秀な施工会社とのネットワークを築いてきたことが功を奏した。
リーダーの平は、トイレが完成するたびに、クリエイターへ設計・施工を通じて大和ハウス工業の良いところ、悪いところをお聞きした。16ものクリエイター事務所との協働は、自分たちと同業他社を比較し、次につなげる学びの機会となっている。社内横断チームでの活動も発見の連続だ。「同じ会社なのに、事業部によって仕事の方法が全く違って面白いんです。各部門の役割分担や仕事の進め方など、取り入れたいことは自分の事業部にフィードバックしています」
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京工事部 主任
田島 雄介
YUSUKE TAJIMA
![[神宮通公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main06.jpg)
![[神宮通公園トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main06_smp.jpg)
![[恵比寿駅西口公衆トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main10.jpg)
![[恵比寿駅西口公衆トイレ] 写真:株式会社エスエス](/innovation/soh/vol14/images/index_main10_smp.jpg)
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世の中の役に立つから、やる
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2020年夏、先行する7つのトイレが完成した。建築雑誌や海外メディアでも取り上げられ、カメラやスマートフォンを手にした人々が現地に足を運んだ。公共トイレのネガティブな印象は一新され、昼も夜も次から次へと利用者が入っていく。人や社会に「開かれた建築」の力が、そこにあった。
クリエイターのお一人、安藤忠雄氏からは竣工後、手書きの礼状をいただいた。若いメンバーたちの努力が報われた。世界で活躍するクリエイターの方々と共に建築物をつくりあげた経験は、メンバーはもとより、大和ハウス工業にとってもかけがえのない財産になった。
優れたデザイン・クリエイティブの力で社会課題の解決に挑戦するプロジェクトは、大和ハウス工業 創業者の信念とも重なっていた。「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」。そう、役に立つことは、喜びにつながる。前へ進む力になる。THE TOKYO TOILETで得た全てが、私たち大和ハウス工業の背中を強く、まっすぐ押してくれる。
※地図内の赤色マーカーをクリックすると詳細をご覧いただけます。※地図下の赤色マーカーをタップすると詳細をご覧いただけます。
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笹塚緑道公衆トイレ
渋谷区笹塚1-29
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本社 集合住宅事業本部 設計推進部
プロジェクト設計部 中高層設計3グループ 担当課長
鎌田 広
HIROSHI KAMADA
京王線笹塚駅の高架下に、耐候性鋼板パネルでつくった円筒を並べ、円い大庇で覆ったトイレです。小林先生は、東京タワーや成田国際空港など数多くのトイレを手掛けるプロフェッショナル。構想にあたっては、トイレの利用頻度を時間帯、ジェンダー、年代、職業(想定)など徹底的に調査することから始められ、いかに快適に利用できるかを突き詰めていかれました。その姿勢から、公衆トイレを重要な都市インフラと捉え、都市の財産をつくる責任を学ばせていただきました。

写真:株式会社エスエス
設計は困難を極めました。敷地内には高架の橋脚と基盤。地下には橋脚の地中梁と排水管。前面道路の地下には玉川上水旧水路が通っていて積載荷重に制約があり、乗用車程度しか入れません。クレーンや重機は使えず、建物の軽量化が絶対条件でした。そこで先生が採用されたのが、2枚の鋼板をチャンネルで溶接した軽量の構造体、鋼板パネル構造です。造船技術を持つ会社が、さびで耐候性を増す鋼板でパネルを製作。現場に足場を組み立ててウインチでパーツを吊り下げて設置溶接し完成しました。
プロジェクトを振り返って
高架にぶつからないよう苦労して設置した円い大庇は、満月の月明かりのように見え、小窓に描かれたウサギが愛らしさを添えています。トイレ内の間接照明で照らされる曲面壁の錆も美しい見どころです。今回、クリエイターの想いや姿勢に触れ、公共施設の在り方や仕事への取り組み方について考える機会も増えました。建築に向かい合う新しい視点を得ることができ、私にとっても、大和ハウス工業にとっても意義のあるプロジェクトになりました。
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幡ヶ谷公衆トイレ
幡ヶ谷3-37-8
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 建築設計部 主任
武田 祥佳
SACHIKA TAKEDA
人通りの多い交差点の角に建つ幡ヶ谷公衆トイレ。最大の特徴は、天井高約5mのオープンスペースが、まちに向かって大きく開いているところです。このスペースは、ギャラリーやポップアップストアなど地域コミュニティの場として活用できるように計画。「公衆トイレに+αの機能」ではなく、「+αの機能に公衆トイレを付随させる」という逆転の発想がユニークで、参加した私もワクワクしました。既存トイレの利用状況調査や、最も利用効率の良いトイレ個数を算出する過程も拝見し、きれいに建て直すだけでなく、現状の問題点を改善していくことが重要なのだと感じました。
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写真:株式会社エスエス
いただいた基本設計では、躯体を構成する金属パネルの角度が小数点以下2桁まで緻密に計算されていました。また、隣には公園があり、そちらへ続く階段や建物奥のスリット窓など動線・視線が抜ける配慮もされていました。その基本設計をベースに微調整しながら、工事をよりスムーズに進められるよう実施設計を行いました。
プロジェクトを振り返って
笹塚・幡ヶ谷・初台を中心にまちづくり活動を行う団体「ササハタハツ」との打ち合わせにも参加したのも良い経験です。オープンスペースはどんな使い方ができるのか、コミュニティ花壇は残せるのかなど、地域の方の「生の声」に寄り添いながらプロジェクトを進行。以前は利用率が低く暗くて汚かったトイレを、「地域に溶け込んだ場所にする!」という熱量を、関わる人全員がプロジェクト完成まで持ち続けたことに感謝し、その一員になれたことを誇りに思います。
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 建築設計部 課長
内田 成紀
MASANORI UCHIDA
スクリーンにもなる白い壁には、クリエイターのこだわりが込められています。ネジ1つとっても、どこに取り付けるかを吟味。私たちも詳細設計や施工の精度に最大限の注意を払い、オープンスペースのある内側と建物外側の境がなく、壁がシームレスに続く建物を完成させることができました。また、屋根の形状が非常に複雑で三次元に折れ曲がっているところもあり、納まりの良さも本当は見ていただきたいポイントです。
オープンスペースの床からポールを引き上げ、木製の座面をわたすとベンチになり、配置も自由に変えられます。以前の暗いイメージが一新され、昔は歩道を通っていた人たちも、今はオープンスペースを近道として利用されるようになりました。夜、ライトアップされた建物は、交差点を照らす一つの大きな照明のようにも見えます。トイレは主役ではなく、そこに周辺住民のにぎわいを持たせたい。そう願ったクリエイターや関係者の想いが見事に結実しました。
プロジェクトを振り返って
このプロジェクトには、大学教授のペニントン氏や研究室の方々のほか、学生さんも参画されています。それもあってか、トイレの設計ながら、トイレではないものを中心に置く、建築へのアプローチの自由さに驚かされました。柔軟な視点を持つことで、新たな着想を得ることができる。それは、私が長年仕事に従事し、忘れかけていた初心です。これからはもう少し自由に、多角的な視点で設計を考えたい。そう思える貴重な機会となりました。
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七号通り公園トイレ
幡ヶ谷2-53-5
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京流通設計部 主任技術者
福本 義忠
YOSHITADA FUKUMOTO
ドアを開閉する。ウォシュレット®を操作する。水を流し、音楽をかける。全ての動作を声で操作できるボイスコマンド式のトイレです。クリエイターの方々との初顔合わせから竣工までは約2年。途中、建築場所が急きょ変更になり、候補地の絞り込みから敷地調査、実施設計、申請、地域の方々へのご説明まで短期間で突き進むことに。全ての関係者が一丸となり、3カ月後、予定通りに着工の日を迎えることができました。
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写真:株式会社エスエス
建物は球形の鉄筋コンクリート造です。コンクリートの型枠は、特殊な形だけに仮組みをしてチェック。現場では内側の型枠をドーム状に組み、その上に鉄筋を張って、外側の型枠をかぶせ、型枠の間にコンクリートを流し込みました。型を外すと、出来栄えは予想以上。難しい球面の塗装も何度も塗り直してクオリティを高めるなど、日頃から信頼する協力業者の方々のおかげで、本当に美しい躯体が完成しました。
プロジェクトを振り返って
天井高が最大4mある内部は、ぼうっと広がる間接照明で安らげる雰囲気づくりを実現。私の声に反応してくれるボイスコマンドにも愛着が湧いてきます。その開発の場には私たちも立ち会わせていただきました。クリエイターの方々が今までにないユーザー体験を設計しようとアイデアを熱くぶつけ合う姿を見て、私たちも「建築」に作り手の想いをもっと注ぎ込まなくてはと思うように。多くの学びを得た現場でした。
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西原一丁目公園トイレ
西原1-29-1
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京建築設計部
辻林 希
NOZOMI TSUJIBAYASHI
このプロジェクトは、私が設計・監理において「代表となる一級建築士」として建てた初めての建物です。竣工後、当社の長所として「若い年代の人が名前を出して進めていること」とおっしゃっていただきました。坂倉先生をはじめ、事務所の方々は若い私とも対等に接し、案内設備のデザインやライニングの納まりなどのご提案も受け入れてくださいました。建築士として名前を出して前に立ったからこそ、私の決定力やスピード感も増し、信頼してくださったと思っています。
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写真:株式会社エスエス
実施設計のプランが決まりかけた頃、「行燈(あんどん)」というコンセプトをより忠実に表現するため、ガラス面を追加することになりました。案の練り直しや各方面への確認に奔走し、ついに完成へ。樹木のシルエットをプリントしたフィルム貼りガラスから光がきれいに差し込むのを見て、建築家の強い想いがあったから、このカタチができたんだと実感しました。昼間だけでなく、初めて夜に照明をつけて公園に「行燈」がともったときも興奮を覚えたことを思い出します。
プロジェクトを振り返って
「ガラス張りのトイレ」を実現するため、渋谷区や日本財団、クリエイター事務所、TOTO株式会社、地下を走る鉄道会社など、関係者の方々と何度も協議を重ねました。ガラスの透け具合や利用者の使い勝手、近隣への配慮・・・。多様な意見をまとめる際には、日頃、物流施設や事務所の設計など、多くの関係者が絡む複雑なスキームの案件を扱っている経験が役に立ちました。
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西参道公衆トイレ
代々木3-27-1
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
本社 2025日本国際博覧会(大阪・関西万博)推進室 主任
池田 健
TAKESHI IKEDA
クリエイターと初めてお会いした際、狭い敷地にも関わらず「かなり自由度がある」とおっしゃったことに、まず驚きました。そして、公衆トイレを都市の中の水場、街の泉であると考えられ、曲線で構成した大きな「器・泉」を設計されました。パースを拝見した瞬間、「ぜひ実現したい!」と興奮したのを思い出します。その後、いただいた3Dモデルをもとに、構造体などの実施設計を進めていきました。
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写真:株式会社エスエス
現場で曲面をつくる工事の過程は、最も大変で面白かったことの一つです。下地をつくり、モルタルを塗り重ね、最終的な曲面は左官職人さんが仕上げ塗り。クリエイターご本人や事務所の方にもご確認いただきながら、何度も調整を繰り返しました。また「シームレスにしたい」とのご要望から意図をくみ取り、床面に目地を入れない、壁の目地を隠すなどの工夫も随所に。思わず触ってみたくなるトイレに仕上がったと思います。
プロジェクトを振り返って
完成後、通りすがりの方が手洗いを使って会話していたり、小さなお子さんが曲面をなでたりする様子を見るとうれしくなります。このトイレを実現する過程で、藤本先生はあらゆる諸問題に対して柔軟かつ粘り強く解決案を模索。常にポジティブに物事を捉えられ、建築に対する取り組み方を学ばせていただきました。この経験が後押しとなり、社内で公募があった大阪・関西万博のプロジェクトに私も参加。藤本先生も会場デザインプロデューサーとして携わっておられ、大きな勇気をいただいています。
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代々木八幡公衆トイレ
代々木5-1-2
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本社 集合住宅事業本部 中高層設計部 設計第二グループ 主任技術者
鎌田 広
HIROSHI KAMADA
代々木八幡宮の参道横にあるキノコのようなトイレです。建築にあたっては「伊東先生のアイデアを100%実現したい。難しくても逃げずに挑もう」と強い想いで臨みました。最も苦労したのは丸い屋根。建築基準法に合致する材料の選定から困難を極め、東京駅丸の内駅舎保存・復原工事に関わった金属加工会社にご協力いただき、ステンレス鋼板をたたいて広げ、溶接して1枚の円形に。完成品が現場に運ばれてきた時は本当に感動しました。
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写真:株式会社エスエス
裾広がりの建物に合わせて曲げた扉部分の三方枠や、壁の上端に載せて雨水を防ぐ水切りプレート、屋根の脚などは工場で製作。これら工場製作の円形部材と現場打ちの円形コンクリート躯体を合わせるのは至難の技です。しかし、ここが合致しないと美しく見えません。現場では毎日のように微調整を繰り返し、完成後、「丁寧につくっていただいた」と伊東先生がおっしゃったと聞いて皆でほっとしました。
プロジェクトを振り返って
このトイレはどこから見てもデザインに死角がありません。ぜひ横の階段を上って屋根も眺めてみてください。私は建築を学び始めた大学時代から伊東先生の作品のファンでした。今回一緒にお仕事ができた上、問題解決の際にはわれわれのアイデアも聞いてくださり、深く建築を議論するまたとない機会となりました。伊東先生の作品にわずかでも携わった者として襟を正し、今後も良い仕事をしていきたいと思います。
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はるのおがわ
コミュニティパークトイレ
代々木5-68-1
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京流通設計部 主任技術者
福本 義忠
YOSHITADA FUKUMOTO
中に入って鍵を閉めると、透明なガラスの壁が不透明になる。完成前からSNSで話題になり、メディアでも取り上げられるなど、大きな反響を呼んだトイレです。私たちも模型を目にしたときは驚きました。初めて坂先生の事務所へご挨拶に伺った時点で、ほぼ完成形に近い模型が既にできあがっていて、調光フィルムで透明・不透明になる仕組みを体感。一緒に行った全員が興奮したのを覚えています。
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写真:株式会社エスエス
デザインに対しては細部にいたるまで強いこだわりをお持ちで、施工図を提出してはチェックしていただき、また修正する、その繰り返しでした。一連のやりとりを通じて、納得するまで議論を尽くす大切さを教えていただきました。特にガラスを固定するサッシと庇(ひさし)の接合部は、外観デザインに影響が出るため、部材の再製作なども行って調整。世に出すものには決して妥協されない姿勢が印象に残っています。
プロジェクトを振り返って
坂先生が考案された安全できれいな「透明トイレ」を具現化するには、調光フィルムが重要なポイントでした。そこで、どのメーカーの製品がベストなのか、透明/不透明を切り替えるシステムをどう構築するのか、社内の工事・購買・設備など関連する部署が集まり、あらゆる方向から検討。その結果、調光フィルムを使った日本で初めての公衆トイレを完成させることができ、自社の総合力とモノづくりにかける熱い魂を感じました。
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代々木深町小公園トイレ
富ヶ谷1-54-1
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京流通設計部 主任技術者
福本 義忠
YOSHITADA FUKUMOTO
中に入って鍵を閉めると、透明なガラスの壁が不透明になる。完成前からSNSで話題になり、メディアでも取り上げられるなど、大きな反響を呼んだトイレです。私たちも模型を目にしたときは驚きました。初めて坂先生の事務所へご挨拶に伺った時点で、ほぼ完成形に近い模型が既にできあがっていて、調光フィルムで透明・不透明になる仕組みを体感。一緒に行った全員が興奮したのを覚えています。
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写真:株式会社エスエス
デザインに対しては細部にいたるまで強いこだわりをお持ちで、施工図を提出してはチェックしていただき、また修正する、その繰り返しでした。一連のやりとりを通じて、納得するまで議論を尽くす大切さを教えていただきました。特にガラスを固定するサッシと庇(ひさし)の接合部は、外観デザインに影響が出るため、部材の再製作なども行って調整。世に出すものには決して妥協されない姿勢が印象に残っています。
プロジェクトを振り返って
坂先生が考案された安全できれいな「透明トイレ」を具現化するには、調光フィルムが重要なポイントでした。そこで、どのメーカーの製品がベストなのか、透明/不透明を切り替えるシステムをどう構築するのか、社内の工事・購買・設備など関連する部署が集まり、あらゆる方向から検討。その結果、調光フィルムを使った日本で初めての公衆トイレを完成させることができ、自社の総合力とモノづくりにかける熱い魂を感じました。
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裏参道公衆トイレ
千駄ヶ谷4-28-1
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 建築設計部
大橋 龍
RYO OHASHI
建設地は首都高速道路の下で、高低差が大きい道路内の敷地です。屋根は高架下ぎりぎりで、高さ2mほどの石垣も建造。完成までには多くの課題に直面しましたが、普段は使わない材料の選定や納まりに挑戦できたことが大きな収穫になりました。例えば屋根は、日本の伝統的な「蓑甲(みのこ)屋根」で銅板葺き。一見シンプルですが三次元曲面がいたるところにあり、模型や3Dで検討を重ね、宮大工さんが現場で採寸しながら木材で下地をつくり、銅板を葺きました。
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写真:株式会社エスエス
イギリス在住のニューソン氏は多忙な方だけに、一度のメールでいかに密度の濃い意思疎通をするかが重要でした。相談事項は可能なかぎり視覚化・図解化し、プレゼン資料のようにまとめて英訳も記載。こちらの提案や代案も柔軟に検討され、譲れない箇所と変更可能な箇所をご判断いただいたことで、私たちのするべきことも明確になりました。私たちの提案や、言語と時差の壁がある中でスムーズに進めるために試行錯誤したことを、先方に褒めていただいた経験は、かけがえのない財産です。
プロジェクトを振り返って
デザインを具現化するため、世界的デザイナーが「こだわるポイント」とそれ以外にどのように差をつけ、アプローチするか、目の前で学ぶことができました。都会の真っただ中にオブジェのように置かれたトイレは、風景の一部となって街に溶け込んでいます。「建築物が経年変化し、時とともに街になじんでほしい」と望まれていたように、銅色に輝いていた屋根が緑青に変わっていく時の変化を、私も楽しみにしています。
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神宮前公衆トイレ
神宮前1-3-14
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京建築設計部 主任
殷 ゆえ
YUE YIN
原宿の片隅に建つ古き良き一軒家。その建物プランを狭い変形地にどう納めるかが実施設計における最初の課題でした。扉や窓枠のミントグリーンや白いセラミックタイルなど、色や建材は当初からご指定に。塗装の色味は、ステンレスやスチールなどの材料によってブレが出るため、塗装サンプルを現場で並べて色味を統一。コンクリート塗装の外壁は、左官工事に十分な時間をかけることで、凸凹が感じられない精度に仕上げました。
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写真:株式会社エスエス
設計者として思い入れがあるのは、小屋組を見せたトラス構造の屋根裏です。コンクリートや鉄骨、ボードなど、構成する部材がかなり多く、矩計図(詳細な断面図)などの作図には通常より時間をかけました。また、梁に付けたシーリングファンの露出配線を隠すため、鉄骨リブに事前に穴を開けて配線を通すなど、できるかぎりの工夫を凝らしました。
プロジェクトを振り返って
原宿竹下通りのすぐ近く、ビルが建ち並ぶ明治通りにポツンとおうちのようなトイレが現れました。工事現場事務所から現場へ向かう時に渡る歩道橋からは、工事の様子を俯瞰でき、トイレの成長が感じられて、とても好きな光景でした。今回、クリエイターのデザインにかける想いや素材へのこだわりに触れ、自身の仕事への意識も変化。実現したい設計やデザインがあれば、積極的に挑戦しようと気持ちを新たにしています。
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神宮通公園トイレ
神宮前6-22-8
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京建築設計部 主任
石崎 春奈
HARUNA ISHIZAKI
木々の緑の中にひっそりと佇む「あまやどり」と名付けられたトイレです。今回、安藤先生が造形を考えられ、事務所の方も加わって広げていき、その詳細設計を私たち大和ハウス工業が行うという一連のプロセスに参画。世界屈指の建築事務所での設計・監理方法を間近で見られたことは、私にとって貴重な体験になりました。また、外構や触地図のデザインなどはお任せいただき、一緒に建物をつくる楽しさも味わわせていただきました。
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写真:株式会社エスエス
竣工まであと2週間に迫ったとき、予定になかった入り口上部に「ルーバーを追加したい」とのご要望をいただきました。急きょ建築担当者や工事担当者、協力会社の方々が集まって検討し、なんとか工期内に追加することができました。いざ取り付けてみると、確かにルーバーを追加した方が完成度が高く、一同納得。竣工直前まで建物をより良くするよう考え続けられる姿勢に大いに刺激を受けました。
プロジェクトを振り返って
私たちには「この建物を安藤先生のイメージ通りに仕上げたい」という共通認識があったため、設計から施工までチームワークを発揮して進められたと思っています。協力会社など関係者の方々にも本当に助けられました。その甲斐あって、竣工後の記者発表時に、安藤先生からねぎらいの言葉をいただき、手書きのメッセージも頂戴しました。このプロジェクトに参加できたことは一生の思い出です。
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鍋島松濤公園トイレ
松濤2-10-7
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
金沢支社 北陸・信越建築設計部 主任
川口 典宏
NORIHIRO KAWAGUCHI
緑豊かな公園に5つの小屋を建て、「森のコミチ」を出現させる。その発想に驚き、ぜひ意図されているものを作り上げたいと決心しました。外装のルーバーは当社創業者の生誕地にゆかりのある吉野杉で、樹皮を残した板を240枚使っています。板は数パターンの形状に絞って製材し、ランダムに見えて実は出寸法や角度まで決め込んだ施工図を作成。建物コーナー部分の取り付けは、隈先生およびスタッフの方々と現場でも微調整しました。
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写真:株式会社エスエス
現地は高低差のある傾斜地で、一部に擁壁をつくる計画でした。しかし、森の雰囲気を壊さないためには擁壁よりも植栽の方がいいのでは、と提案したところご快諾くださり、法面の植栽計画をお任せいただきました。また、間伐材のウッドチップを埋めた階段は、スタッフの方々とご相談しながら蹴上部分にフラットバーを採用。隈先生がお考えの世界観に合った材料を選定することができました。
プロジェクトを振り返って
隈先生たちが建築のコンセプトを貫こうとする姿勢は非常に勉強になりました。例えば外装ルーバーは、人が触れるところのささくれを削り、足元を植栽にするなど安全性に配慮。デザインを最後まで通すためのマネジメント力に感服しました。私は途中で転勤になりましたが、完成検査には参加。夜の照明がともり、最初に隈先生が描かれたスケッチそのままの光景を目の当たりにし、改めてその素晴らしさを実感しました。
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京建築設計部
大橋 龍
RYO OHASHI
私は、川口の設計サポートから入り、着工以降、本格的に担当させていただきました。最初にデザインを拝見した時は「面白そうなプロジェクトだ」と参加できることを喜んでいたのですが、具体的に納まりを考え出すと、絵をどう形にするのか、困難の連続でした。しかし、スタッフの方々が目地の色一つにもこだわり抜かれ、小さな建物であっても決して手を抜かない姿勢とプライドを肌で感じ、大いに感銘を受けました。
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写真:株式会社エスエス
もし現地に行かれて、メタセコイアとサクラの輪切りが飾られた男性用トイレを見る機会があれば、壁面の仕上げにご注目ください。ここは「タイルの目地はできるだけ小さく」「壁とタイルはできるだけフラットに」とご要望いただき、何案かの納まり図をご提案して可能なかぎりフラットな壁面を完成させた場所です。細かい部分ではありますが、設計や施工の緻密さを感じていただけると思います。
プロジェクトを振り返って
私のお気に入りは敷地最上部の「森のコミチ」です。広い通路ではないので、木製ルーバーの表情を間近に見ることができ、さらに足元はウッドチップ、視線の先には木々と空があり、森に包まれている感覚に。ここを歩くのが本当に好きでした。建築は、ほんの少しディテールを変えるだけで印象がガラッと変わることを教わりました。ここでの学びを自分の中に落とし込み、社内にも水平展開できるよう、これからも努力し続けます。
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東三丁目公衆トイレ
東3-27-1
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京流通設計部 主任技術者
福本 義忠
YOSHITADA FUKUMOTO
パースを見た瞬間、衝撃を受けました。真っ赤な色で、日本の贈り物文化のシンボルである「折形」からインスピレーションを得た造形美。「かっこいい。このデザインをこのまま形にしたい」と思ったのが第一印象でした。ニューヨークを拠点にする田村先生とは、オンラインでイメージを共有。デザインのプロセスが非常に明快で、強いメッセージ性もある。建築とは違う視点で、私たちには考えもつかない発想がとても新鮮で楽しかったです。
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写真:株式会社エスエス
敷地は、線路沿いの細い三角地。この狭さを逆手にとったシャープな研ぎ澄まされたデザインをなんとか実現しようと、施工図を描き起こす前から設計と工事部門が一体になって施工方法を協議しました。最も苦労したのは屋根です。ご要望は「庇(ひさし)を紙のように薄くしたい」。試行錯誤の末、通常、屋根には使わない構造用鋼板を使用することで20mmという薄さにたどり着きました。建築物ではほとんど見られない壁の薄さにもご注目ください。
プロジェクトを振り返って
途中、微妙な色のニュアンスをご相談するため、サンプルをニューヨークへ送ることに。ところがコロナ禍で国際配送がストップ。海外事業部の助けでようやく送れたこともありました。トイレ完成後、田村先生からメッセージが届きました。「驚きのお願いが多かったかと思いますが、いつも穏やかに対応してくださり、とてもスムーズにプロジェクトを進めることができました」。設計や工事、社内のネットワークなど、大和ハウス工業の総合力でご期待にお応えできたと思っています。
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恵比寿公園トイレ
恵比寿西 1-19-1
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
本店近畿建築設計部 主任
九野 朱美
AKEMI KUNO
片山先生のプロジェクト参加を希望した後、以前、私が好印象を抱いた建物も手がけられた方と知り、ますます期待が高まりました。最初の打ち合わせで、細部まで丁寧につくりこまれた模型や美しい図面を拝見。プレゼンテーション資料も、建物も、照明ひとつにおいても美しさを追求される姿勢に深く感じ入りました。そして、妥協せずに突き詰めると、できないと思ったことでも違う解決策が見つかり、次につながるんだと実感させられました。
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写真:株式会社エスエス
デザインの要となる壁は、杉板を型枠にしたコンクリート打ち放し仕上げです。15枚の壁をランダムに並べる複雑な設計で、型枠の割り付けについては工事・構造・設備担当者と打ち合わせを重ね、施工図を何度も修正しました。また、デザインプランを最優先しつつ、構造上必要な微調整もご提案。THE TOKYO TOILETの中で最初に竣工を迎え、片山先生をはじめ、関係者の方々に仕上がりの完成度を喜んでいただけました。
プロジェクトを振り返って
トイレの外まわりには回転灯をつける必要がありました。デザインと安全性のバランスに苦慮していると、渋谷区から「独立サインだったらOK」とのご提示。そこで、回転灯と点字の触地図を一体化したサインをご提案し、ほぼそのまま承認していただいて入り口に設置できました。また、トイレ正面の植栽もお任せいただき、公園の緑化図面を取り寄せて樹種を選定。私の計画したものがプロジェクトに組み込まれ、参加できた喜びをかみしめています。
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恵比寿駅西口公衆トイレ
恵比寿南1-5-8
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京建築設計部 主任
渡部 萌
MEGU WATANABE
建物は、上部から浮かせたアルミルーバーで中央のキューブを囲む構成になっています。ルーバーの間隔は20mm。クリエイターが実寸大の試作品で、面としてのバランスや美しさを検証されました。ミリ単位で追求されたデザインを実現するには、設計や施工の精度も求められます。ルーバーの鉄骨下地は隙間から見えないように数ミリずつ図面を調整し、ルーバーのラインや色がきれいに出るようサンプルをいくつも準備して、クリエイターのイメージを形にしていきました。
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写真:株式会社エスエス
目指したのは、あらゆる人を包み込むインクルーシブなトイレです。男女を分けず、乳幼児を連れた方、高齢者や妊産婦、介助ベッドを使う方など、個人の特性によってブースを選べる設備やプランとしています。また車椅子動線の適正な勾配を考慮しつつ、傾斜した周囲の敷地に外構の高さを合わせた設計をし、壁の塗料は汚れや落書きが取れやすいものにするなど、デザインを守りながら使い勝手や保守性にも配慮しました。
プロジェクトを振り返って
THE TOKYO TOILETのピクトサインは佐藤可士和氏のデザインです。建物に取り付ける際、配置のバランスや高さなど、私の意見も取り入れてくださったことは、うれしい思い出です。工事中は曇りや雨ばかりでしたが、完成間近のある日、まぶしいほどの晴天に。光が反射する真っ白な通路から空を見上げると、ルーバーをつる鉄骨で額縁のように切り取られた青空が見えました。難しい案件でしたが、完成したという想いと共に、その美しさが今も心に残っています。
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恵比寿東公園トイレ
恵比寿 1-2-16
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京建築設計部 主任技術者
長谷部 祐司
YUJI HASEBE
「槇先生のプロジェクトを担当させてください」と手を挙げ、これまで設計された建築物をいくつも見学してイメージを膨らませていました。ところが予想とは全く違うデザインで、しかも約1.5カ月という短期間で基本設計やパース、模型、曲面屋根構造の基本検討まで終えられていることに驚嘆。世界的な建築事務所の意気込みとプライドを感じ、私自身も「基本設計の精度」について考える良い機会になりました。
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写真:株式会社エスエス
タコの遊具がある公園にできた「イカのトイレ」。軽快な曲面屋根は16mm厚、重さ約2トンの鋼板を薄いフラットバーで支える独創的な構造です。さらに、一般的には屋根に軒樋(のきどい)をつけますが、この建物にはありません。屋根の落とし口に雨水が集まる仕掛けを屋根上面に施し、軒樋のないデザインを実現されているのです。雨仕舞いひとつとっても、そこまで計算されているのかと想像しながらご覧いただけたらと思います。
プロジェクトを振り返って
今回、槇先生の事務所と協働するという、またとない機会をいただきました。そこで「公共トイレ」という条件下で独創的なデザインを貫きながら、利用する人の目線で設計される様子を間近で拝見し、私自身、大きな収穫を得られました。私はプロジェクトの全体最適化や各部署との調整などのプロジェクトマネジメントを得意としてきましたが、今回の経験を糧に、さらに広い視野を持てるよう努力してまいります。
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大和ハウス工業株式会社
東京建築設計部
辻林 希
NOZOMI TSUJIBAYASHI
昔から「人が集まる施設を建てたい」という想いがあり、このプロジェクトに立候補しました。完成後、学生時代から読んでいた建築雑誌に取り上げられ、スタッフの一人として自分の名前が載ったときは感慨深いものがありました。恵比寿には他のトイレも点在しているので、プライベートで恵比寿のトイレツアーをしたことも。いつ訪れても建物の写真を撮っている人たちがいて、このプロジェクトへの注目度を肌で感じています。
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写真:株式会社エスエス
印象に残っているのは、事務所のご担当者がおっしゃった「利用される方の使いやすさ、安全が第一」という言葉です。デザインにこだわり、ディテールまで一切妥協されない反面、行政が求める「使いやすさ」や「安全」に関わる部分は柔軟にご対応。デザインと運用面をバランスよく考えられる姿勢に感心しました。さらに、元からある監視カメラや自動販売機の位置など周辺環境までも検討され、設計者としてのあるべき姿を教えていただきました。
プロジェクトを振り返って
このプロジェクトは途中参加ですが、上司や同僚、協力会社など全員が「槇先生や事務所の名前を背負った建物をつくらなければならない」という認識で結束し、一体感をもって進めることができました。さまざまな方のご協力を得て、最終的には「良いものができた」とお褒めの言葉をかけていただき、本当にうれしく思っています。
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広尾東公園トイレ
広尾4-2-27
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写真:株式会社エスエス
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大和ハウス工業株式会社
東京本店 建築系工事部 第二部 建築第二課
野田 宜充
YOSHIMITSU NODA
マンションが群立する丘の公園に現れたモニュメントのようなトイレです。公園横は、街路樹のある狭い歩道で通勤通学の人が行き交い、工事担当者としては厳しい環境でした。厚み16㎜の鉄板を5分割した屋根材は、1枚が1トン近く。搬入も大変でしたが、そのまま仕上げ材になるため平滑にする必要もありました。建物裏の強化合わせガラスも3分割。クレーン車が入れず、職人さん約10人がかりで据え付けました。シンプルな建物ほど施工精度を問われますが、きれいに納まり、完成度の高いものになったと自負しています。
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写真:株式会社エスエス
工期中はクリエイター自ら何度も足を運ばれ、現地での確認を徹底されていました。特に照明ディスプレイの光壁は、関係者全員で確認し、検討事項を即断即決されていた様子が印象的でした。工期は、既存の建物解体から竣工まで約5カ月。関係者の皆様や当社の購買部・設備部なども含めた全員が連携し、短工期を実現できました。完成後、当社のスピード感を高く評価していただいたこともうれしい思い出です。
プロジェクトを振り返って
クリエイター事務所をはじめ、照明デザイナーや植栽デザイナーの方々との協働を通じ、私たちとの視点の違いや新たな試みを知ることができました。普段使わない植栽の品種を多く教えていただいたのも面白い経験でした。このプロジェクトは、私がこれまで携わってきた案件の中でも非常に思い入れの深い現場です。これからも積極的に新しい知識を取り入れ、お客様や設計者へ提案できるようにしたいと大いに刺激をいただきました。
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「THE TOKYO TOILET」紹介映像
映像提供:TOTO株式会社
笹塚緑道公衆トイレ
幡ヶ谷公衆トイレ
七号通り公園トイレ
西原一丁目公園トイレ
西参道公衆トイレ
代々木八幡公衆トイレ
はるのおがわコミュニティパークトイレ
代々木深町小公園トイレ
裏参道公衆トイレ
神宮前公衆トイレ
神宮通公園トイレ
鍋島松濤公園トイレ
東三丁目公衆トイレ
恵比寿公園トイレ
恵比寿駅西口公衆トイレ
恵比寿東公園トイレ
広尾東公園トイレ
※掲載の情報は2021年2月時点のものです。