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歴史が育む豊かな文化

北浦和は、江戸五街道のうちのひとつ「中山道(なかせんどう)」の宿場町「浦和宿」の上町として栄えた歴史があります。
北は日光街道、南は府中通りや大山道と結び、交通・物流の要所としても賑わいを見せました。そのため、宿場もさることながら、「慈恵稲荷神社(じけいいなりじんじゃ)」の鳥居を中心として市場が栄え、現在も「浦和区民まつり」として『中山道浦和宿二七の市』が開催されます。
きっと、当時も日本全国の人や物が行き交い、さぞ活況だったことでしょう。
いつも多くの人で賑わう「仲町平和通り商店街」から脇道へそれると、ひっそりとした佇まいの「仲町公園」があります。
実はこの公園、大名行列も一休みしたと言われる浦和宿の「本陣跡」なのです。公園内には大きな岩の石碑があり、そこには「明治天皇行在所阯(めいじてんのうあんざいしょあと)」の文字があります。これは明治元年と明治3年に明治天皇が大宮氷川神社へ行幸した際に、仲町公園が行在所となったことに由来します。

  1. 街の至る所に「中山道」や「浦和宿」の文字があり、宿場町の面影を残す。
  2. 今はひっそりとした佇まいの鳥居だが、浦和祭りの際は当時の活気を取り戻す。
  3. 常盤公園そば、「二七市」が開かれていた「市場通り」にある「農婦の像」
  4. メインストリートにも「中山道浦和宿」の石碑が鎮座する。
  5. 仲町公園内の石碑は高さ4mほどの立派なもので、本陣跡の貫禄を感じさせる。

そもそも、浦和宿は幕府の直轄領(通称:天領)だったため、先に触れた常盤公園の位置に浦和御殿が設けられ、徳川家康が鷹狩りに来た際の休憩所となりました。常盤町(旧・浦和宿上町、現・浦和区常盤1丁目)は当時の浦和宿の中心地であったため、今なお閑静な住宅街として当時の名残を残しています。
また、参勤交代の際には「浦和が鰻の食い納め」とも言われ、江戸から外へ、外から江戸へ向かう際に鰻を食したことから、この地には30軒以上もの鰻屋が軒を連ねています。なかには100年以上の歴史を持つ店も多く、お馴染みの「蒲焼き」は浦和が発祥との説も。実際、それぞれのお店独自の味付けや調理法があり、固定のファンが付いてるお店がほとんどだとか。
実際にうな重を頬張れば、滋養に溢れる貴重なたんぱく源としてだけでなく、ほっこりと甘じょっぱい蒲焼きが全国を旅する人の間で広まったのも納得ですね。

  1. 最近では見かけなくなった井戸も、住宅街に大切に残されている。
  2. 立派な門構えの浦和北公園。園内にある「楷(かい)」の木は、日本に5本しかない木の1本。
  3. 明治初期に建てられたままの風情を残す「青山茶舗」。散歩の合間に一休み。
  4. 明治元年創業の「酒井甚四郎商店」。ここの奈良漬はお土産にも喜ばれる。
  5. 江戸時代から続く旧中山道沿いの“蒲焼商”である「山崎屋」。昭和天皇も食したとか。

北浦和を歩いていると、江戸時代から脈々と続く歴史をあちこちで感じることができます。
一方、グラウンドで元気に走り回る子どもたちや、勉学に励む若者を見かけると、未来への 明るい希望を見せてくれる気がします。それはまるで、歴史を未来へ繋ぐバトンのように、 この地に続く風土そのものなのかもしれません。
豊かな緑と歴史に育まれ、この地で暮らす楽しみはきっと尽きることがないのでしょう。

浦和の蒲焼き
古くから浦和では、鰻や鯉(こい)、どじょうや鮒(ふな)などの川魚が多く穫れました。栄養価が高いうなぎはとても貴重で、浦和宿に本陣を構えた各地の殿様が参勤交代の都度に食し、全国に評判が広がったと伝えられています。江戸から明治に創業した店が多くそこで修行した職人が近所に店を出したため、専門店が集まりました。もちろん、都心や地方でお店を出している人も多く、浦和仕込みの鰻屋は全国に何軒あるか分からないほどだそうです。こうした歴史も踏まえて、肉厚の鰻を召し上がってはいかがでしょうか?
取材メモ
友人が都内から県立の浦和高校へ進学したこともあり、何度か訪れたことのある街でした。しかし、改めて街を歩いてみたのは初めてで、なんとも風情のある佇まいに生活の豊かさを感じ、「こういう街で暮らすのも、きっと幸せなんだろうな」と、しみじみ考えてしまいました。まるで歴史と未来の交差点のような北浦和エリア。街を歩くとそんな言葉が浮かびます。浦和レッズの活躍に一喜一憂するサポーター。未来の自分を思い描き、勉強にスポーツにと勤しむ若者たち。そして、お店や土地の歴史を大切に守る地元の人々。活気に満ちながらも、どこかほっとさせる温もりを感じる街でした。ぜひ、皆さんにも散歩がてらこの街を歩いて欲しいと思います。きっと、少し元気をもらえるような気分になりますから。
(掲載の情報は2015年9月時点のものです。)
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