阿蘇一の宮リゾート“ASONOHARA”(熊本県阿蘇市)千年の歴史を持つ阿蘇の草原再生に挑む住宅地
当社グループでは「みどりをつなごう!」を共通コンセプトに掲げながら、ネイチャーポジティブの実現に向けたさまざまな生物多様性保全の取り組みを推進しています。ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾート「ASONOHARA」では、阿蘇くじゅう国立公園内にある住宅地として、地域資源を活かした街づくりを通じて自然環境価値の再構築に取り組んでいます。
概要
ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾートについて
阿蘇山やくじゅう連山などの火山群、また、その周辺に広がる雄大でなだらかな草原で構成される阿蘇くじゅう国立公園。阿蘇五岳の最高峰である高岳のふもとに位置する分譲地「ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾート」では、1999年の販売開始以来、森を間借りする暮らし“暮らす森”として、200世帯を超えるお客さまの暮らしに寄り添いながら、コミュニティ作りやインフラの整備、環境保全に長年取り組んできました。
阿蘇くじゅう国立公園の雄大な自然
「ASONOHARA」について
2019年からは「ASONOHARA」と名付けた街区の開発に着手。千年以上にわたり、人の手を加えながら守られ続けてきた阿蘇地域の代名詞とも呼べる草原を、未来へとつないでいくため、オーナーさまや地域の皆さまとともに、草原の保全・再生、生態系の保護を目指す取り組みをスタートさせました。
■森林住宅「ASONOHARA」概要
- 所在地
- 熊本県阿蘇市一の宮町宮地
- 宅地面積
- 約36,000m2(29区画)
- 開発期間
- 2019年~2020年
隣接地も含めた生態系調査の結果、過去、このエリアは畑として使用されたのち、人工的にスギ・ヒノキ等の針葉樹の植林が進められていたことが判明しました。この結果および、既存街区のオーナーさまとの意見交換の内容も踏まえ、荒廃が進んでいる針葉樹林を大きく草原エリアと樹林エリアに分けて、元来阿蘇が有する生態系の再生に向け、間伐や植栽を進めました。
草原の再生に向けて
ASONOHARA(住宅地)
自然地形を活かした住宅地。まちづくり憲章(環境保全規定)を制定し、住民の方々と共に草原を育成するエリア。各住宅の庭は、管理樹木を選定し、あらかじめ植樹しているほか、沿道においては、阿蘇の草原の優占種であるススキなどの高茎草をはじめ、野芝、チガヤなどの中・低茎草を育成しています。沿道の維持・管理については、専門家のアドバイスをもとに、それぞれの草木が育ちやすい草刈り頻度を設定し、草原育成に限定した管理費をいただきながら、当社で定期的な管理を実施しています。
街づくりにおける
生物多様性への配慮
造成によって動植物の生息環境を分断しないように、側溝には万が一の落下時における退避を可能にする坂道を設けるといった動物の住処を分断しない配慮や、地域資源を活かしたデザインを随所に施すことで、住まう生物の多様性に満ち、住民の方々が地域に愛着を持っていただける街づくりに取り組んでいます。
動物の住処を分断しない配慮
動物や夜間の星空に配慮した
照明設計
阿蘇の石を使った石のベンチ
草原再生地
従来の阿蘇の草原を模して、近隣から調達したススキ、チガヤを一部に植え、文化的景観にも配慮した緑地を整備しました。現在は、地域の草原再生協議会や、地域住民と連携を図りながら、年2~3回のオーナー様モニタリングならびに有識者ヒアリングを実施しています。モニタリング調査の結果、草地では、環境省や熊本県が準絶滅危惧種に指定しているナガミノツルキケマンやカヤネズミ、また、草原構成種であるクサフジ、キジムシロ、ツクシアザミなどを確認できました。
専門家によるモニタリング
オーナーさまによるモニタリング
モニタリングで確認できた草原性植物
カヤネズミの住処(球巣)
クサフジ
キジムシロ
地域・オーナーさまとの共創活動
次世代にみどりをつないでいくためには、地域コミュニティとの連携が必要不可欠です。オーナーさまとともに自然を守り、育んでいく仕組みを作っていくために、さまざまなコミュニケーション活動を定期的に開催しています。阿蘇特有の自然に関する植物特性説明会や、蜂の送粉活動を促進する巣箱「BEE HOTEL」の作成、野草堆肥づくりなど、草原再生の取り組みと連動しながら、豊かな自然と触れ合うことのできる機会を提供しています。
BEE HOTEL
野草堆肥づくりワークショップ
森林の再生に向けて
森林整備地
木が痩せて薄暗く、地面にはシダ類がまばらに生えているなど、荒廃して薄暗くなっていたスギ・ヒノキ等の針葉樹林の約50%を間伐し、地表まで日光が届くようにしました。その後のモニタリング調査の結果、シオンやナガミノツルキケマン等、地中に眠っていた草原性の植物が多数出現。今後は、雑木林の萌芽を促すことで、数十年かけて徐々に人工林から針広混交林に転換していく計画です。
間伐前、荒廃した針葉樹林
間伐後、地表まで日光が届くように
地中に眠っていた草原性の植物
シオン
ナガミノツルキケマン
自然環境価値の再構築へとつなげる第三者認証
JHEP認証最高ランク、ABINC特別賞を受賞
ASONOHARAでは、生物多様性保全にとってより価値の高い活動を継続するために、各取り組みの方針や成果を客観的に評価できる2つの環境認証の取得・更新にも取り組んでいます。
2020年2月に取得した「いきもの共生事業所®認証(ABINC認証)」は、生物多様性保全に配慮した土地利用の考え方や、ステークホルダーとの共創活動など幅広い視点で評価を行う仕組みです。2023年4月には、特に阿蘇特有の草原環境を活かした再生計画や、ステークホルダーとのコミュニケーション活動が高い評価を受け、認証施設のうち、特に優れた取り組みに贈られる「ABINC賞『特別賞』」を受賞しました。
また、2020年6月に初回認証を取得した「JHEP認証」は、生物多様性保全・回復に資する取り組みを定量的に評価し、認証する仕組みです。阿蘇地域にとっての草原の重要性、草原を再生するという住宅地開発では例を見ない計画として希少価値の高い活動と評価され、当社では初めて、最高ランクのAAAを獲得しました。
- ※JHEP 生物多様性の保全や回復に資する取り組みを定量的に評価、認証するもの。AAA~Dの11段階で評価され、B+以上がJHEP認証を取得することができる。
- ※ABINC 生物多様性保全に配慮した土地利用の考え方や処方箋を示し、取り組みの成果を可視化するもの。
ABINC賞 特別賞における評価コメント
事前のモニタリング調査結果や地形などを踏まえ、阿蘇特有の草原環境を活かした計画になっている。地域の生態系に精通している専門家や地域の有識者などと連携を保ちながら、計画・管理・運営を継続的に行う予定になっている。
JHEP認証における評価コメント
生物の多様性の再生と気候変動への対策が最大の課題となっている現在、本事業は当該地域の生態系ネットワークの拠点として、さらに重要性が増し、自然と共存する美しいまちづくりの先進事例となっています。国際的に ESG 経営やネイチャーポジティブ、30by30への取組みが求められる時代をむかえ、持続可能な経済・社会の実現に向け、企業の果たすべき役割が、今ほど注目されている時代はありません。今後も取組みが持続、拡大され、地域の遺伝資源を保全する取組みが継続、発展されていくことが期待されます。
※ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾート ~ASONOHARA草原育成プロジェクト~に対するJHEP認証 第1回更新 審査レポート(2024年6月) 総評より引用