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2024年3月にリニューアルしました。
連載:みんなの未来マップ
2024.11.29
私たちは日々、多くの時間を「働く」ことに費やしています。充実した毎日を過ごすためには、納得できる働き方を選択することが必要だといえるでしょう。
昨今、働き方が多様化するにつれ、キャリアパスも多様化しています。それに伴って「幸福」のあり方も変化しています。労働経済学や家族・幸福の経済学を専門とする拓殖大学政経学部教授の佐藤一磨さんは「幸福学」の専門家として、長きにわたって労働と幸福の関係に着目してきました。
これからの社会における幸せとは? 日本人の幸福度はどうなるのか? 率直な質問をぶつけながら、佐藤さんが描く未来を聞きました。
女性の社会進出が進んでいますが、それが幸福度合いに影響することはあるのでしょうか?
男女雇用機会均等法制定(1985年)以降の女性の働き方と、それに伴う意識の変化に着目して、幸福学の研究を始めました。最近の研究では、男女格差が大きい国ほど幸福度が低くなりやすいという結果が出ているんです。
つまり、この結果に基づくと、性別役割分担の意識が強い社会では男女ともに幸福度が低いと考えられます。ただ、そういった状況から格差を是正する方向に進んでいく際、さらに一時的に幸福度が下がる場合があります。例えば、男性がこれまで得てきた社会的地位を女性が得るようになることで、男性のポストが減る。すると、男性の幸福度は下がる可能性が高いわけです。
なるほど、では"一時的な"幸福度の低下ということでしょうか?
はい。変化が進んでいく中で、男女ともに幸福度は上がっていくと考えています。
男女がもっと平等に働ける社会になり、意識の変化も伴えば、男性の働き方も柔軟になります。過渡期を過ぎれば、男女ともに幸福度が向上することでしょう。変化の過程でコンフリクトは生じるかもしれませんが、男女ともに働きやすい制度設計を進めることで、よい未来が待っていると思います。
人々の属性も働き方も多様です。既婚・未婚、共働き・専業主婦/主夫、子どもの有無、正社員/契約社員/パート・アルバイトなど、さまざまな状況と幸福度を照らし合わせて考える必要があるでしょう。
「働きやすさ」に向けたハード面の制度設計は進んでいますが、ソフト面の「幸福度」指標は今後ますます注目を浴びていくと思います。
今後、日本は中長期的に労働力人口が減っていく状況にあります。すると企業は人手不足になり、よりよい条件を提示して、労働者を集める必要がある。すでにウェルビーイングの考え方は注目を浴びていますが、企業としてウェルビーイングに考慮しているということはプラスに働いていくでしょう。労働者側もさまざまな選択肢を考えるうえで、これまで以上にウェルビーイングを重視する人が増えると思います。
2010年代から日本の企業経営においても、社員の健康やウェルビーイングが意識されるように変わってきましたが、まだ日本社会の中では、幸福やウェルビーイングといった指標は脇に置かれがちだと思います。アメリカの研究では、幸福度が高い社員のほうが生産性も高いというデータもあります。
また、職場だけではなく家庭内においても、家族の幸福を考えることがもちろん大切です。例えば家事分担を決める場合でも、どうすればお互いに幸福度が高いのか考えれば、納得のいく分担ができるでしょう。
幸福度がより浸透し、活用されるようになっていくと、社会のあり方や人々の考え方が変化していくと思います。
拓殖大学政経学部教授。1982年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、同大学院商学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(商学部)。外資系経営コンサルティング会社、明海大学を経て、2016年から拓殖大学政経学部准教授に就任し、2023年から教授。専門は労働経済学、家族の経済学、幸福の経済学。著書に『残酷すぎる幸せとお金の経済学』がある。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。
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