厚生労働省は、『社会福祉法人制度の見直しについて』の報告書案を大筋でまとめた。これによると、社会福祉法人の課題として「地域ニーズへの不十分な対応」「財務状況の不透明さ」「ガバナンスの欠如」「いわゆる内部留保:制度や補助金、税制優遇に守られて高い利益率を有しているにもかかわらず、社会福祉事業などへの積極投資や地域還元することなく、内部留保として積み上げている、との批判」「他の経営主体との公平性(イコールフィッティング)」を指摘。さらに、社会福祉法人制度見直しにおける論点として、(1)地域における公益的な活動の推進 (2)法人組織の体制強化 (3)法人の規模拡大・協働化 (4)法人運営の透明性の確保 (5)法人の監督の見直し など5項目を提示。運営の透明性の確保、並びに低所得高齢者の居住確保に関する支援、生活困窮者に対する生活支援など、採算が取れないとされる公益的活動への義務化も明記し、実施しない社会福祉法人は行政指導の対象となるとした。
今後、厚労省は社会福祉法人制度全般の見直しや具体的ルールづくりの議論に着手する。
社会福祉法人は、現在全国に約2万法人が存在。公的性格の強い法人であることから、法人税の原則非課税、公的助成などの優遇措置を受けている。一方、「内部留保の積み上げ」の問題や、創業者などの理事長があたかも企業オーナーであるかのような経営を行ったり、公的性格を持つ法人制度であるにもかかわらず、私物化ととられかねない運営が行われているなどの批判が挙がっていた。厚労省は昨年9月に同検討会を設置。制度の見直しについて議論を重ねてきた。
検討会では、「報告書に『法人課税』について一切議題に挙がっていないことで『今までと同じじゃないか』と安心している法人もあるようだ。当検討会では『非営利法人の役割を義務化する』といった、かなり踏み込んだ内容まで議論しており、報告書にも明記している」といった意見や「それぞれの社会福祉法人に公共性があるのかないのかを判断するのは地域。その重要性を各社会福祉法人にしっかりと伝えていかなければならない」指摘が挙がった。
また、「社会福祉法人の本業は公益的活動であり、地域に貢献することは義務であるという認識を持ってもらう必要がある」との指摘もあり、本業が疎かであれば行政指導が入って然るべきとの認識も示された。