共働き世帯の増加、高齢化社会など、時代の変化の中で、今「二世帯住宅」が注目されています。
世帯間で家事・育児・介護などを助け合うことができ、住宅資金においてもメリットがあるからです。
また、「賃貸〈店舗〉併用住宅」も、家賃収入を住宅ローンの返済に充てることで住宅資金計画が楽になりますし、将来二世帯住宅として利用することもできます。
2015年に相続税の基礎控除が4割の削減となったことで、「二世帯住宅」と「賃貸〈店舗〉併用住宅」が相続税対策として、大きくクローズアップされることになりました。なぜ、相続税対策になるのか?
ここでは、現在の税制面のポイントと注意点を整理してみます。
相続税の基礎控除額は2015年から次のようになっています。
基礎控除額の計算式
全体的に4割の削減となっています。
これにより、今まで相続税の課税対象とならなかった家庭も、2015年以降は課税対象になる可能性が出てきたのです。
例えば、非相続人の相続財産額が5,000万円で相続人が3人である場合
今まで8,000万円までは課税対象にならなかった家庭も、2015年以降は4,800万円を超えれば課税対象になるのです。
また、相続税の計算上適用される税率についても、税率構造の見直しが行われ、税率の刻みが6段階から8段階に、最高税率は50%から55%に引き上げられています。
なぜ、「二世帯住宅」や「賃貸〈店舗〉併用住宅」が相続税対策になるのでしょうか?
親からの相続が発生した時、一定の条件を満たすと被相続人の自宅敷地の相続税評価額を抑えて相続税を軽減できる「小規模宅地等の特例」が適用されます。亡くなった親と相続する子どもが別々の家に住んでいる場合は、親の敷地だけが対象となり、相続税の評価額が最大80%減額されますが、二世帯住宅の場合は敷地全体に適用されるのでとても有利になります(面積330m2まで)。
賃貸〈店舗〉併用住宅においても、賃貸部分に「小規模宅地等の特例」が適用されます。被相続人が宅地等を賃貸し、相続人が引き続き賃貸事業を行う場合、評価額の50%を減額することができます(面積200m2まで)。
それに、相続する土地のうち、賃貸として利用している部分に関しては「貸家建付地」として、評価額が20%ほど減額されます。これらを併用することで70%減額できる場合もあります。
また、建物についても、賃貸住宅の場合は借家の評価額となり、自宅家屋より30%減額された評価になります。これも賃貸として利用している部分に関して適用されます。
このように、小規模宅地の特例などによって相続税評価額を大きく減らすことができるため、「二世帯住宅」や「賃貸〈店舗〉併用住宅」が相続税対策になると言われているのです。
小規模宅地等の減額の特例(2015年1月1日~)
小規模宅地等の特例とは、被相続人等の居住の用または事業の用に供されていた宅地等がある場合には、一定の要件のもとに、遺産である宅地等のうち限度面積までの部分について、相続税の課税評価額を、一定の割合で減額する制度です。
二世帯住宅は一般的に、(1)玄関やキッチン、浴室、トイレなど自室以外の全てを共用する「共用(同居)」タイプ、(2)一部を共用する「部分共用」タイプ、(3)全てを別々に設ける「完全分離」タイプの3つに分かれます。
これまでは(1)と(2)のタイプでなければ小規模宅地等の特例が適用されませんでしたが、2014年1月より(3)の完全独立タイプでも適用されるようになりました。これにより2世帯住宅のバリエーションが増えました。
将来親が亡くなった時に親世帯のスペースだけを賃貸に出して家賃収入を得るような資産活用も可能になっているのです。
二世帯住宅の間取りタイプ
「親子リレーローン」と「親子ペアローン」は世代をまたいでローンを組むことで借入金を増やせるメリットがあります。しかしながら、親世代の退職による収入減や親子間のトラブル、相続時の兄弟間のトラブルなど、予想もしていない事態が起こることもあります。
返済計画については、いろんな可能性を事前に想定して、慎重に考える必要があります。
(1)親子リレーローン
親が単独でローンを組んで、将来子どもが引き継いでいく住宅ローン。
親の年齢に限らず、子どもの年齢条件で借入期間が設定できるので、返済期間を長くすることができます。また、親子の収入合算ができますので、借入可能金額を増やすこともできます。連帯債務の場合、それぞれ住宅ローン控除が受けられます。
ただし、親が定年退職した後の住宅ローン返済や生活費の負担等については、事前に話し合いをしておくことが大事です。
(2)親子ペアローン
親子それぞれの名義でローンを組んで返済していく住宅ローン。
親子それぞれでローンを組むことで借入可能金額を増やすことができます。お互いの借入金や借入期間が明確になり、それぞれ住宅ローン控除が受けられます。ただしフラット35など、区分登記が条件となる場合もあるので、完全分離タイプにするなど間取りに制約が出る場合もあります。また、住宅ローン契約が2つになりますので、手間と費用が2倍かかることになります。
※掲載の情報は2016年3月現在のものです。内容は制度運用中でも変わる場合がありますのでご了承ください。