平成27年から改正される相続税。
増税、増税と騒がれていますが、あわてることなかれ。
じつは、相続税の仕組みを少しだけ勉強すると、
準備次第で、将来の相続税負担を少なくできるかも。
今回はその基本の“き”のおはなしを二つほどしましょう。
相続が発生すると、その財産を相続人みんなで相談して分ける遺産分けをすることになります。相続税も、財産を引き継いだ相続人で分担します。当然、たくさん財産を貰った相続人は、その分負担も多く、少なければ負担も小さくなります。
こんなふうに、相続税は、相続人ごとにその負担が決まるのですが、その相続人が、配偶者、つまり夫の相続では妻、妻の相続では夫であれば、配偶者控除という特例を活用できることをおぼえておきましょう。
この配偶者控除を活用すれば、法定相続分(民法という法律で定められた一人当たりの相続分のこと)までの財産を引き継いでも相続税の負担はゼロ。それを超えても課税価格1億6,000万円までなら相続税負担はゼロになります。
今後の生活だってあるのですから、ありがたい制度です。
相続税をおさめたご家庭の、相続した財産の内訳をみると、なんと半分近くが土地(45.9%・相続財産の種類別内訳(平成23年))。
だから、相続税を払うために、土地を手放すなんてこともないわけではないのです。でも、納税のために“住まい”まで手放すことになったら、心穏やかではいられません。だから、生活の拠点になる“住まいの土地”には、相続税をおさえる特例があるのです(正式名称、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」。覚えきれず、噛んでしまうので、専門家の間では“小規模特例”などと略称します)。
さて、この舌を噛むような特例、じつはとてもすぐれものなので、上手に活用したいところ。
たとえば、相続人3人(配偶者と子ども2人)が、7,000万円の財産(内訳は、“住まいの土地”3,000万円(面積200㎡)、その他4,000万円としましょう。)を相続したとして、相続税は225万円です(その2 『表2:改正後のケース別相続税負担額』参照)。
ところが、この特例が活用できれば、“住まいの土地”3,000万円を600万円と80%も減額して計算できるのです。
ということは、他の4,000万円の財産とあわせて4,600万円。相続税がかかるライン(基礎控除額)は4,800万円(その2 『表1:基礎控除額について』参照)ですから、相続税がかからない、ということになるわけです(相続税の申告は必要です。)。
しかも、この特例を適用できる面積の上限が、敷地面積の240㎡(約72.6坪)なのですが、平成27年以後は、330㎡(約99.82坪)に広がるので、敷地が広いお宅にも朗報です。ただ、この面積を超える部分には、この特例は使えないし、また、この特例を適用するには、だれが敷地を相続するかがポイントとなります。配偶者が相続するなら、基本的には適用できますが、子どもなどの他の親族が相続するなら、少し要件が厳しくなったり、適用できないこともあります。
「うちはどうなのかしら?」と心配なら、いちど税理士さんに相談してみましょう。
筆者プロフィール
- 海野裕貴税理士事務所
海野 裕貴(うみの ひろたか) - 税理士・CFP(r)・1級FP技能士・中小企業診断士・行政書士
- 証券会社、保険会社、FP会社等を経て、2007年5月に独立、税理士事務所を開業。相続、個人のタックスプランニングを中心にサービス展開中。
- ラジオFM横浜「教えて税理士さん」出演をはじめ、ハウスメーカー、証券会社、生命保険会社、損害保険会社他、講演多数。
- 主な著書 「事業承継成功のポイント50」「経営者のための勇退アドバイス」「大家さん・地主さん必見!不動産相続 成功の扉」「成功したい人が読む はじめての相続・贈与の生前対策」その他、「けんた君教えて!くらしのなかの税金知識シリーズ(全国法人会総連合)」、毎日新聞・浜銀総研・納税通信連載執筆等多数。現在「バンクビジネス(近代セールス社)」にて連載中。
- 海野裕貴 税理士事務所 HP : http://www.greatdivide.jp/
※当該ページは、平成26年4月15日現在の法律等に基づいて執筆しています。今後、税制改正により内容の変更が生じる可能性がありますので、ご了承ください。また、出来るだけわかりやすくご理解いただくために専門用語や制度を簡略化して表現していることもご了承くださいますよう重ねてよろしくお願い申し上げます。具体的な相談は税理士等の専門家へお尋ねください。