もし両親などから相続によって引き継いだ不動産に自宅を建築したり、売却して新しい分譲地に住替えをと考えている方がおられましたら、とりあえず、その不動産を自分の目で確認してみましょう。相続した土地が遠方だと、今まで自分の不動産をじっくりと見る機会はあまりなかったかもしれません。百聞は一見に如かずということわざがあるように、あれこれと考えているよりも現地を確認すれば、自分の不動産の問題点等が明確になるものです。現地を一度見てみることは、とても大切です。
不動産の「現地確認と管理」とは、土地や建物の所有者が、自分の不動産の位置や形状、隣接する土地や道路との境界を正確に把握し、トラブルや紛争を防ぐために行う必要な作業です。
現地確認は、不動産の実際の状況や周辺環境を把握するために必要なもので、概ねの面積、形状、接道状況、外構、植栽など、また建物の状態(目視程度)や設備を確認します。現在の価値や利用可能性を判断するための重要な情報源となります。
次に管理は、不動産の境界線を明確にするために必要なもので、不動産の登記簿謄本や図面、現地の標識や目印などを参考にして、境界線等を確認します。(参考:境界の基本のキ)建築計画のために土地の正確な面積や形状を把握するための条件となります。また建築を依頼する担当者との打合せ等にも目安となり、自宅の建築において欠かせない大切なものになります。
不動産の「現地確認と管理」を事前に適切に行うことで、建築の設計や利用計画を最大限に引き出すことができます。自分の目で自分の不動産をじっくりと確認することは、とても大切なことです。
現地調査の重要性
ある日、花子さんは、彼女が所有する田舎の実家を売却することにしました。彼女は、その家を高く売り、便利な分譲地で新しい生活を始めることを夢見ていました。しかし、彼女は不動産業者に全てを任せ、事前に自分で現地調査をせず、登記簿や地図だけを頼りに物件を売却しました。その後、花子さんは売却代金を受け取りましたが、次々と問題が発生しました。まず、土地の境界が曖昧であることが判明し、買主から訴訟を起こされました。さらに、隣地建物の構造物が越境していることが判明し、買主から損害賠償請求を受けました。
花子さんは、不動産現地調査を怠ったことを後悔しました。彼女は、もし現地調査を行っていれば、これらの問題を事前に把握し、適切な対応ができたはずだと思いました。この例から分かるように、不動産現地調査は非常に重要です。実際の状況を確認することで、取引後に発生する可能性のあるトラブルを未然に防ぐことができます。
- (1)トラブルを未然に防ぐことができます。現地調査により、土地の境界や建物の構造など、専門的な知識が必要な問題を事前に把握することができます。これにより、取引後に発生する可能性のあるトラブルを未然に防ぐことができます。
- (2)正確な評価ができます。現地調査により、土地の正確な面積や建物の構造など、不動産の価値を決定づける要素が正確に把握することができます。これにより、不動産の価値を正確に評価することができます。
現地調査に必要なもの
相続した不動産で見慣れていない場合は、どんな状況かわかりません。 把握をするために現地調査に持っていくものは、実際の状況を確認するために必要なものです。以下が、それぞれの持ち物が必要な理由です。
1. 地図
不動産の位置を確認するために地図が必要です。市区町村が発行する地図やGoogleマップなどが利用できます。周辺の環境や交通アクセスなどを把握することができます。
2. 登記簿謄本
不動産の所有者や土地の面積、建物の構造など、物件に関する重要な情報が記載されています。評価や取引がより正確かつスムーズに行われます。
3. カメラ
物件や周辺環境の写真を撮影するためにカメラが必要です。スマートフォンのカメラでも十分です。物件の評価や取引時に参考となる写真を残すことができます。
4.ノートとペン
現地で得た情報を記録するためにノートとペンが必要です。これにより、後から情報を整理しやすくなります。
また現地調査を行う際には、以下の注意事項があります。
1. 安全に注意する
現地調査中は、安全に注意してください。特に、古い建物や傾斜地などでは、転倒や落下などの危険があります。
2. 正確な記録を残す
現地調査中に得た情報は、できる限り正確に記録しておくようにしましょう。後から情報を整理する際に役立ちます。
何を調べればよい?順番は?
現地調査では、実際の状況を確認するために様々な内容が調べられます。具体的には、以下のような確認作業が含まれます。
1. 土地・建物の状況
土地の形状や外構や隣地との越境、建物の状態や設備、などを確認します。評価や取引がより正確かつスムーズに行われます。
2. 周辺環境
物件周辺の生活環境や交通アクセス、近隣の施設などを確認します。不動産の利用計画を立てる際に重要な参考情報となります。また土曜日日曜日のお昼間だけではなく、平日の夜にも出かけてみると新たな環境が見えてくることがあります。
3. 境界標識
地図や図面上で確認した情報を元に、現地で境界標識を探します。境界標識は通常、土地の角や境界線が曲がっているところの根元に設置されています。境界標識が見つからない場合は、周囲の状況を確認します。例えば、フェンスや壁、道路などが境界線を示している可能性があります。
(参考)境界標の「役割と重要性」
4. 地勢の確認
平坦地か傾斜地か? あるいは段差のある土地や道路からの高低差があるなど、測量機器の使用は必要ありませんが目視による確認をおこないます。
5. 前面道路の確認
前面道路の幅員が狭いとセットバック(※建物を建てる際に敷地の一部を道路の一部として後退させることを指します。具体的には、幅4m未満の狭い道路に接する敷地では、道路の中心線から水平距離2mの範囲(片側が川や崖、線路などの場合は、反対側の道路境界線から4mの範囲)に建物を建てることはできません。)が必要であったり、自宅建築の工事を小運搬等でしないといけないことがあります。また敷地と道路に接する幅が2m以上あることや旗竿地であるかどうかも確認しておくことは大切です。さらに道路の舗装・未舗装および側溝の有無も確認します。
6. 門塀・庭石・庭木の確認
不動産の利用計画に影響を与えることが多いので、簡単な場所の位置を図示しておくと役立ちます。
7. 電柱・止水栓・ガス栓の確認
電柱の位置や水道・ガスの引込位置も確認し、メモに記入しておくと便利です。敷地上空や周辺にある高圧線や電柱等にも注意が必要です。
8. 隣地所有者
自宅建築工事のご挨拶や様々な設計要件によって、隣地の所有者を確認することが必要な場合があります。不動産登記簿謄本は、法務局や登記所で入手することができます。また、インターネットを利用して、オンラインで不動産登記簿謄本を取得することも可能です。ただし、不動産登記簿謄本に記載されている情報は、あくまでも登記上の情報であり、実際の所有者と異なる場合があります。また空き家であったり所有者不明の物件であったりして行方が分からない場合があります。そのため、隣地所有者の確認にあたっては、現地で表札などを確認しておくことが有効です。
まとめ
両親から相続した土地や購入した不動産に関する資料や図面をお持ちでしょうか。その資料等は,本当に正確なものでしょうか?塀や垣根の位置設置が長年の間に移動していたり、隣地の建物が建て替わったりして過去の状況と現在が一致しない場合も多くあります。親子で二世帯住宅に建替えしたり、売却して新しい分譲地で新しい住居を購入しようとしたときに、適正な管理や計画ができていない場合が多くあり,すぐに対応ができないようなことがあります。自分が思い描く新しい生活や安心して暮らせる環境が手に入らない状況が起こりえます。そのためにも現状把握をする必要性があり、現地にて確認を行うことが早期に必要なことだと思います。
また不動産を購入する場合でも「現地」を意識してみると、適正な管理、計画がなされていることが重要であることがわかります。ダイワハウスの分譲住宅は、「現地確認と管理」をしっかりしておりますので、安心・安全な不動産となります。「現地確認と管理」のことで、ご心配の方はダイワハウスの営業担当に一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
(参考文献)西本孔昭.住宅新報出版『マンガ不動産境界入門 6訂版』
執筆者
山田 一博
~測量・登記~ 京都やまだ事務所 代表・土地家屋調査士
20年土地家屋調査士業界で役員を続けおり「相続・空き家等の不動産に関する問題を【境界を解決】する手法でお客様に提案したい」という思いから土地家屋調査士による士業連携サービスを行う事務所を開設。現在は学会等にて研究をする傍ら、執筆、セミナーを行う。特に相続不動産のコンサルティング、売却、生前贈与に関する相談を得意とする。