ここ数年、大きな自然災害が相次いだという印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。地震や台風といった生活を脅かす災害の発生頻度が高い日本。住宅の購入を考えるなら、災害に備えて建物や家財に掛ける保険について前もって知っておきたいものですね。
今回取り上げるのは水災補償。補償内容から具体的な事例まで、専門家にお伺いしました。
アドバイスいただいた方
上野 洋さん
大和ハウスインシュアランス株式会社
営業統括部 営業推進・企画グループ
①水災補償が重視される背景
近年、日本国内において台風や豪雨の被害が目立っています。大きな原因として指摘されているのは気候の変動です。日本では気候変動の影響が、気温上昇や大雨の頻度の増加といった点で表れています。将来は、さらに気温の上昇や大雨の頻度、降水量が増加し、強い台風の襲来回数が増えると予想されています。
まだ記憶に新しい「平成30年7月豪雨」では、西日本を中心に多大な水災がもたらされました。治水対策の想定を上回る雨量により、予想を超える災害が起こったのです。また、集中豪雨による水量増加で下水などが溢れる都市型洪水も増えています。ところが、第1回でも触れたように水災補償の加入件数は十分ではなく、今後の大規模水災発生時の対応が懸念されています。
自分は大丈夫と思っていても、自然が相手なら何が起こるか予想できません。水災に遭う可能性が高まっている今、保険によってリスクに備えることは決して無駄ではないと言えるでしょう。
水害(水災)による損害を補償する火災保険や共済への加入状況
平成28年1月「水害に対する備えに関する世論調査」(内閣府)
調査対象:全国20歳以上の日本国籍を有する者 3,000人 有効回収数 1,801人(回収率 60.0%)
②水災を補償する保険は?
豪雨による河川の氾濫や土砂崩れなどを指す「水災」。その被害を補償する個別の保険はありません。火災保険に含まれる補償内容の一項目が「水災補償」として対応しています。(第1回「火災保険の補償内容」参照)
水災補償が補償する内容は、基本的には、名前の通り水に関する被害です。台風などにおける集中豪雨から引き起こされた洪水、高潮、土砂崩れ、落石、浸水、あるいは融雪による洪水などが補償されます。 同じ台風でも、窓のガラスが割れるといった被害は火災保険の「風災」にあたります。注意が必要なのは津波。こちらは水災補償には該当しません。地震保険の補償内容になります。
一般的な火災保険の水災補償でカバーされる災害
洪水
台風、暴風雨などにより河川の水量増加で発生した洪水、融雪などによる洪水被害、ゲリラ豪雨などで起きた床上浸水
高潮
台風などで海水面が著しく上昇し、防波堤などを超えて海水が流れ込んだ浸水被害
土砂崩れ
大雨や集中豪雨で山の斜面や崖などの土砂が崩れ落ちる被害。川底の土砂や泥が一気に流される土石流
第1回でも紹介しましたが、火災保険の対象には「建物」と「家財」があり、それぞれに補償の内容が定められています。
建物が保険の対象のとき
- 台風や豪雨に起因する洪水により家屋が流失した場合
- 建物の評価額の30%以上の損害が生じた場合
- 居住部分が床上浸水したことにより、建物が損害を受けた場合
など
家財が保険対象のとき
- 台風や豪雨に起因する洪水により家財が流失した場合
- 家財の再調達価額(新価)※に対して30%以上の損害が生じた場合
- 保険の対象である家財を収容する建物の居住部分が床上浸水したことにより、家財が損害を受けた場合
など
※再調達価額(新価)とは失った建物や家財を新規に調達する際にかかるコストのこと。
③事例からわかる保険の力
どんな被害に遭うと、どれほどの保険金が支払われるのでしょうか。「平成30年7月豪雨」の事例を見ていきましょう。(2018年:大和ハウスインシュアランスの事例より)
中国地方(広島県三原市)に住むAさんの場合
【お住まいの概要】
平成23年建築(築7年)の軽量鉄骨造2階建て
延床面積:約135m2
【被害状況】
床上浸水
中国地方(広島県三原市)に住むBさんの場合
【お住まいの概要】
平成18年建築(築12年)の軽量鉄骨造2階建て
延床面積:約156m2
【被害状況】
床上浸水
保険金支払額は建物の修繕を行う会社の見積金額を元に決まります。いずれの事例も家を建て直したわけではないので、支払額は保険金額の上限まで達していませんが、浸水被害からの復旧にかかる費用がしっかりと支払われました。
④水災補償についての注意ポイント
水災補償の必要性を検討する
火災保険に加入する際に、海や河川から離れた土地だから、あるいはマンションの高層階だから不必要だと考えて水災補償を外す方も多くいます。水災補償を外せば保険料を下げることができるからです。条件によっては一考の価値がありますが、例えば河川から離れた高台の土地であっても、土砂崩れや崖上、崖下の擁壁損壊などのリスクが無いとは言い切れません。冒頭でも紹介したように、最近は安全だと思われていた土地でも災害が起こるケースが増えているからです。
ハザードマップを過信しないこと
自分の住む地域が水災に遭うかどうかの判断は、自治体のハザードマップを用いると有効です。ただ、近年はハザードマップで危険性が低いとされていた土地でも災害が起こるケースが散見されます。
国土交通省ハザードマップ ポータルサイト
https://disaportal.gsi.go.jp/
「重ねるハザードマップ」:洪水・土砂災害・津波のリスク情報、道路防災情報に加え、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に重ねて表示可能。
「わがまちハザードマップ」:地域ごとの様々な種類のハザードマップを閲覧可能。
保険会社により補償内容は異なります。実際にご加入の際には、改めて各社の商品パンフレット、重要事項説明書等にてご確認をお願いします。
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 (2018年12月承認) B18-103708
東京海上日動火災保険株式会社 (2018年12月承認) 18-T06924
災害に備える!住まいの保険〈火災〉〈水災〉〈地震〉
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