車に気をつけてね!と子どもを送り出すお父さん、お母さん。近ごろ横断歩道を渡るのがひと苦労、と思っているおじいちゃん、おばあちゃん。ご存知でしたか?実は交通事故より、家庭での思わぬ事故で亡くなる人のほうが多いということを…。平成23年のデータによると、交通事故の死亡者数が約6,700人なのに対し、家庭内の不慮の事故での死亡者数は約16,700人と約2.5倍に上ります。そのうち65歳以上の高齢者が約13,300人とおよそ8割を占めています。
家庭内の死亡事故のうち、建物に関わるものでは、浴槽内での溺死・溺水、廊下や階段、バルコニーなどでの転倒・転落が多く見られます。原因の一つとしては足腰の衰えが考えられます。実際、目をつぶって片足立ちテストをすると、60代の身体機能は20代の約20%しかないといわれます。一方、身体が未発達の子どもたちもヒヤリとしたり、ハッとすることがよくありますよね。ここで、いわゆるヒヤリハット※や事故について、お子さまや高齢者の方、妊婦さんの事例を見てみましょう。
※ヒヤリハット:事故には至らなかったが、ヒヤリとしたりハッとした出来事のこと。
子どものヒヤリハットランキング
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
0~4歳 | 椅子 8.3% |
階段 7.8% |
ベッド 6.6% |
テーブル・机 5.4% |
自転車 5.2% |
5~9歳 | 自転車 14.4% |
遊具 11.6% |
階段 6.1% |
ドア 5.5% |
自動車 4.1% |
10~14歳 | 自転車 15.6% |
ボール 13.9% |
自動車 7.3% |
遊具 7.1% |
階段 2.7% |
15歳以上 | 自転車 12.5% |
ボール※1 8.3% |
自動車※1 8.3% |
ドア※2 4.2% |
運動用具※2 4.2% |
データ:8,334件(2006年11月~2009年10月までに取得したもの)のうち製品情報が記入されていた5,712件のデータを使用。※は同順位を示す。
出典:経済産業省 デザイン・人間生活システム政策室「子どもの事故予防に向けて ~情報収集から製品開発へ~」
- 主な事例
- 階段からおもちゃ箱に乗ったまま滑り落ち、ひじを強打した。(4歳)
- 子ども部屋で父と弟と遊んでいた。部屋のドアを父が閉めようとした時に、その隙間をわざと通ろうして、滑ってドアの角に前額部をぶつけた。(8歳)
出典:独立行政法人国民生活センター「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故 -子ども編-」
高齢者の事故発生場所(屋内)
- 主な事例
- 自宅の階段から落ち、階段下にあったプラスチック製の靴箱の角で頭を打った。明らかな骨折はなかったが、太ももや肩を打撲し、頚椎を捻挫した。(71歳)
- 自宅玄関の小さな段差につまずき、お尻から転んで足を強く打撲し、骨折した。(83歳)
出典:独立行政法人国民生活センター「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故 -高齢者編-」
妊婦のヒヤリハット
- 階段を降りるとき、突き出たお腹で足元が見えず、足を踏み外して捻挫した。
- 入浴中に貧血になり、外へ出ようとしたが、ふらついて足を滑らせ、腰を強打した。
いかがですか?家の中での事故を防ぐために、足元に物を置かないように整理整頓したり、手すりや滑り止めを設置するなど、できることから始めましょう。
また、家庭内事故の多くを占めるのが高齢者です。「まだ若いから大丈夫」と思っている方も油断は大敵。もしかしたら「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」になっているかもしれませんよ。「ロコモ」とは骨や関節、筋肉などの衰えや障がいで移動能力が低下し、要介護になる可能性の高い状態のことをいいます。つまり、足腰が弱って歩行や生活に支障が出るかもしれない、ということです。メタボの次は、ロコモにもご注意!日頃からカラダを動かして、家の中でのヒヤリハットを予防しましょう!
ヒヤリハットを防ぐひとつの解決策となるのが「ユニバーサルデザイン」です。これは、高齢者や障がい者から、子どもや妊婦、背の高い人や低い人にいたるまで、すべての人が使いやすいモノづくりをしよう、というデザインの考え方です。たとえば家電や車のシンプルでわかりやすい表示画面や、通路幅が広くて通りやすい駅の自動改札機も一例です。それでは、住まいづくりの現場でユニバーサルデザインがどう活かされているのか、研究員に話を聞いてみましょう。
菅野: 住宅のユニバーサルデザインとしては、たとえば階段や水まわりなど、小さなお子さまがいらっしゃるご家族が将来、歳を重ねた時も安心して使えるようにすることが求められます。私たちは、そこへさらにプラスαして、より良い住まいをご提案したいと考えました。
高田: まずは使いやすくて安全で、わかりやすいデザインであること。ここまではユニバーサルデザインの基本ですが、それだけではなく、いかに住まいの中に溶け込ませるか、調和させるかというところも含めて考えていかなくてはなりません。そのプラスαを、私たちは「美しさ」というキーワードで表現しています。
菅野: 昔は、まるで鉄パイプを曲げただけのような手すりなど、機能優先で意匠が欠落しているものがありました。そのようなデザイン的な配慮を後回しにするモノづくりは少し違うのでは?と思ったことが、「美しさ」に着眼したポイントです。私たちは「使いやすさ・わかりやすさ・安全性」に「美しさ」をプラスしたものを「フレンドリーデザイン」と名付けて、さまざまなオリジナルアイテムを開発しています。
高田: 住まいと調和する「美しさ」を具現化したものが、「スライドベンチ付きシューズボックス」です。引き出すタイプなので必要な時に出して使えて、普段はスッキリ収まります。狭くなりがちな玄関に無駄なスペースを作らないのも大きな特長のひとつです。人間工学的な視点から多くの人にさまざまな種類の靴を脱ぎ履きしてもらい、使いやすいベンチの高さを検証しました。
菅野: 今の形を少し変えるだけで多くの人が使いやすくなるという点で理想的なフレンドリーデザインといえば、「ファミリースイッチ」が挙げられます。これは、床から110cmの高さに取り付けたスイッチで、3歳の身長の低いお子さまでも手が届く高さにしています。日本の平均的な住宅では120~125cmくらいの高さにスイッチがありますが、これでは小さなお子さまは手が届きません。逆に低すぎると、背の高い大人が使いにくくなります。
ファミリースイッチは、私の体験がヒントになりました。私の子どもが3歳の頃、夜、「トイレに付いてきて」と言うので、「一人でトイレはできるはずなのに、どうして?」とたずねると、「電気のスイッチに手が届かない」と答えました。手が届けば、親に頼らず一人で行くことができます。つまり、ファミリースイッチはお子さまの自立を促す役目も担っているのです。
先日、オープンハウス「まちなかジーヴォ」に3歳のお子さまを連れたご家族が来られたとき、そのお子さまが軽く背伸びすると、ちょうどスイッチに手が届いて、ご家族に共感していただいたこともありました。特別な設計ではなく、より多くの人が使いやすい環境にした点で、このスイッチこそがフレンドリーデザインの象徴なのではないでしょうか。フレンドリーデザインとは、気づかれなかったり、さりげないことが良いのです。
高田: 住まいに溶け込んで目立たない。けれども、住んでみると、その良さに気付く。それがフレンドリーデザインのあるべき姿なのです。
フレンドリーデザイン
ユニバーサルデザインの考え方を核として、「住まいと家族みんなが、いつまでも仲良くあるための空間づくり」を目指したダイワハウス独自のコンセプトです。
ユニバーサルデザインに美しさをプラスしたダイワハウスの「フレンドリーデザイン」が今、どこまで進化しているのか。実際に体験できる徳島のオープンハウス「まちなかジーヴォ山城西」(成約済物件)と「まちなかジーヴォ佐古六番町」を研究員と訪ねました。
足の指があぶない!
フィンガーセーフドア
高田: お子さまに多いのがドアの事故ですが、ご存知でしたか?ちょうつがいのある隙間に手の指をはさむ事故はご想像いただけると思いますが、実は換気のために設けたドア下の隙間に足の指をはさむ事故も多いのです。背の低いお子さまがドアの取手を持つと、ドアと自分の距離が近くなり、開けた途端に自分の足の指をはさんでしまいます。そのような事故を抑えるために、ちょうつがい側の隙間を極力なくしただけではなく、ドア下に樹脂製カバーをつけています。
動作は半分、戸は全開!
シンクロ引分け戸
高田: お子さまを抱いていたり、荷物を抱えて手がふさがっていると、ドアの開閉ひとつでも大変です。この「シンクロ引分け戸」は、真ん中から左右に開くようになっていて、片手で一方の引戸を開けると、反対の引戸が連動して同時に開きます。引戸を開閉するための手の動作が通常の引戸のおよそ半分で済むため、荷物を抱えていても楽に開け閉めできるのです。
もう一つの特長は引手です。実験によると、ドアを開ける時と後ろ手で閉める時では、手の高さが20cmくらい違うので、引手の位置が高いと後ろ手では閉めにくく、わざわざ振り返って閉めなくてはなりません。「フレンドリーデザイン引手」なら、引手がドアの上から下まで通っているので、どこでも手を掛けられます。つまり、人が建物に合わせるのではなく、建物が人に合わせるデザインなのです。
ユニバーサルデザイン(フレンドリーデザイン)仕様のご案内
まちなかジーヴォ山城西にて撮影
まちなかジーヴォ佐古六番町にて撮影
「ユニバーサルデザイン」は、派手な主張をするものではありませんが、住宅性能としてはとても大切な要素です。「困りはしないけれど、なんとなく使いにくい、気になっている」。そんなご自分でも気付きにくい不満や不安をさりげなく解消するユニバーサルデザインが、住まいのどこに隠れているか、機会があればぜひ確かめてみてください。
徳島支店住宅営業所
まちなかジーヴォ店長 藤原
- ここは、フレンドリーデザインの提案を全国でも特に充実させたオープンハウスです。フレンドリーデザインは当社独自の提案ですからよく知っているのですが、オープン前の研修では改めて良さを実感しました。その感動は、来場された子育て世代やご年配のお客さまにも同じように体感していただけたようで、「他社では、ここまでやっていなかったよ」「時代は進んでいるのですね」との声をいただきました。のびのびと子育てができて、ご自身が年齢を重ねられても、お孫さまが遊びに来られても、快適で安心の住まいになりました。
※まちなかジーヴォ山城西は成約済物件となります。
※撮影年月 平成25年7月