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匠の技が光る伝統的工芸品『薩摩錫器』の魅力

  • 更新日:2011年07月04日
  • カテゴリ:歴史
 匠の技が光る伝統的工芸品『薩摩錫器』の魅力
 
 
 薩摩島津藩ゆかりの錫細工には300有余年の歴史があります。薩摩で錫器製造が行われるようになったのは1655年に錫鉱山が発見されたことに始まりました。当初はお殿様の趣向品だった錫器は明治のころより日用品として世に出回るようになりそして、時代は変わり、大東亜戦争の終戦と共にその需要は進駐軍のコップやカクテルシェイカーなどの洋食器として受注があったそうです。
 その錫器づくりの流れを現代に引継ぐ匠が国分の街にもいらっしゃいます。鹿児島県の伝統的工芸品に指定されている薩摩錫器を製造する岩切美巧堂 岩切忍氏その人です。昭和8年鹿児島市に生まれ御歳78歳この道、55年の錫器職人。


 
 
 東京の美術系専門学校を経て、23歳の時、父を師と仰ぎ弟子入りしました。32歳の時には、氏の師匠であり父であつた先代がお亡くなりになったそうです。「茶壷を作れるようになったら一人前」と言われるこの世界、父の遺作の3個の茶壷を手本として「錫に命を吹き込めば出来ないことはない」と先代の言葉を励みに、一人前の証である茶壷を完成させ東京の百貨店へ
納めることが出来ました。
 
 
 生涯の中で嬉しかったことは、昭和37年当時の皇太子(現天皇陛下)がご来鹿された折、先代が作った錫の花器を献上したことと、昭和59年、氏が制作した茶壷を天皇陛下に献上したことだそうです。



 
 ずっしりとした重量感のある茶壷を手に取りながら、氏は伝統工芸品としての技を説明して下さりました。壷のふたを茶壷にかぶせると、その重さだけでゆっくりと静かにそしてなめらかに下りてくる様に息を呑みました。蓋の動きを見せていただいただけで多くを聞く必要はないと感じました。まさに匠の技そのものです。
 しかし、氏は「未だに先代に追いつかない。錫器づくりは終着駅のない旅」と口にします。ロクロに向かうその姿は、雑念をとり払い修行する禅僧のようです。伝統工芸の技は7名のお弟子さんへ遺言として受け継がれているのでしょう。





 
 岩切 忍 氏
 昭和8年9月10日 鹿児島市生まれ
 ㈲岩切美巧堂 代表取締役 錫器職人
 霧島市国分中央四丁目18-2
 TEL0995-45-0177



上記の写真はすべて平成23年6月撮影。

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