霧島国分夏まつりには乙女山車(おとめやま)と呼ばれる少女たちの山車が出て、市中を練り歩きそして、施設慰問をします。その練習場を訪れてみました。山車に乗る少女たちは中学1年生。今年も地元中学校3ヶ所からそれぞれ6名ずつの少女たちが選ばれてやってきました。正面に座った先生達の三味線に合わせて、「ハーオ!」「エンヤ!」と掛け声をあげて練習が始まります。
指導してくださるのは藤本秀旗社中の皆様。藤本秀旗先生は優しいが凛とした口調で、挨拶や座り方などお行儀まで教えていました。慣れない正座に苦労している彼女たちがそれでも懸命に「ハーイ」と元気に返す声が聞こえてくる。何もかもが初めての彼女たちが一週間の特訓を経て、乙女山車慰問団の主役に育ってゆきます。
もともと国分夏まつりの発祥は八坂神社の『おぎおんさあ』だったそうです。京都が始まりの『祇園祭』を鹿児島弁では『おぎおんさあ』との呼び方で親しまれています。
いよいよ慰問行事本番。1日に4ヶ所の老人福祉施設の慰問を2日間行います。最初の慰問先である施設の庭で待っていると、遠くの方から祭囃子が聞こえてきます。施設の玄関先には、入所者のお年寄りたちが、職員の手を借りて集まり始めます。日頃、刺激が少ないお年寄りたちにとって、何よりの楽しみになるらしいです。お囃子を演奏しながらトラックの荷台を綺麗に飾りつけられた山車が次々に到着しはじめると、鮮やかな色彩と音色でパッと華やかに明るくなりました。
待ち受ける40数名のお年寄りたちの前に勢ぞろいした一行。「みなさんおはようございます!」「今年もお祭を運んできました!」威勢の良い司会のあいさつに乗って、太鼓山車、三味線山車、そして3台の乙女山車の演奏が始まります。おはら節やハンヤ節で乙女山の少女たちも踊ります。
待ち焦がれていたお年寄りたちの中には、耳や目の不自由な方もいらっしゃいます。でも目の前で繰り広げられる小さなお祭は、その響きを身体で感じて身を震わせるはず。最初は表情の乏しかったおじいちゃんがその目に輝きが灯ります。一生懸命うなづいたり、最初から最後まで手拍子をしてくれたおばあちゃん…。施設を去るときには見えなくなるまで乙女山車に手を振っていらっしゃいました。
「おばあちゃん達が、こんなに喜んでくれると嬉しい。」と乙女山車の少女たちは暑さを忘れるくらいの清々しい笑顔で答えてくれました。
これからもずっと続けて欲しい、もうひとつの国分夏まつり。
来年も「お祭を運んでまいりました!」と
元気に祭囃子を届けてあげてください。
霧島国分夏まつり
鹿児島県霧島市国分中心市街地界隈
毎年7月中旬頃開催
■交通アクセス
ロイヤルシティ霧島妙見台より、
約11㎞(車で約17分)
■上記の写真はすべて平成24年7月に撮影されたものです。