a slowly dish
秋田県を代表する魚・ハタハタ。
これを米や麹などとともに漬けた「ハタハタずし」は先人の知恵の賜であり
今も昔も変わらぬおふくろの味です。
本格的な冬の寒さが訪れる12月、日本海に面した秋田県沿岸には、荒々しい大波とともに大量のハタハタが岸に打ち上げられます。秋田県のハタハタ漁は江戸時代以前から行われていたといわれ、漁期が短いにもかかわらず、最盛期には年間漁獲量の半分を占めていたことも。それほど大量に獲れるハタハタを、おいしく無駄なくできるだけ長期間食べようと考え出されたのが、「ハタハタずし」です。
これは米と麹と塩で漬けた、いわゆる「なれずし(飯ずし)」のこと。材料の米には困らないうえ、漬け込むことで数ヶ月間保存することが可能、さらに冬の貴重なタンパク源になるという、まさに雪国・秋田の先人の知恵の賜です。
秋田の家庭では昔も今も、12月中旬頃にこれを作り、正月に食べるのが定番。一般的な漬物同様、細かい作り方や薬味の種類などは家庭によって異なる、いわば「おふくろの味」なのです。
秋田市の郷土料理店「味処 しの八」の「ハタハタずし」(1人前800円)も、ご主人の高堰喜代忠さん曰く、「高堰家流」。塩漬けしたあと酢に絡めて2日間置き、人参、フノリ、生姜、南蛮などを加えて1週間漬け込んで作ります。高堰さんは内陸の阿仁町の出身ですが、子供の頃から母親が作る飯ずしや味噌漬け、しょっつる鍋などのハタハタ料理を食べていたのだとか。店で提供しているハタハタずしもそんな母親譲りの味で、発酵食特有の旨みと酸味、米の甘みなどが複雑に絡み合っています。また、店ではブリコと呼ばれる卵を腹にいっぱい抱えたメスだけを使っており、そのプリプリした食感もお楽しみの一つといえるでしょう。
さらに同店では、ハタハタずしを焼いたもの(1人前900円)も提供。こちらは酸味が柔らかくなって甘みが際立つため、飯ずしが苦手な人にも「食べやすい」と好評です。
文/赤坂環
撮影/奥山淳志
rakra2008年3月号掲載
2008年2月頃撮影
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味処 しの八
秋田県秋田市山王4-2-3 秋田県市町村会館B1F
TEL 018-864-5530
営業時間 11:30~14:00、17:00~23:00
日曜・祝日休
ロイヤルシティ八幡平リゾートより145.2km
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ハタハタは秋田県を代表する魚。冬の雷が鳴る頃、産卵のため沿岸に集まることから「カミナリウオ」という別名もあります。
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「しの八」では、頭も付けたまま漬け込みます。メスだけを使うので、腹にはブリコと呼ばれる卵がたくさん。
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市内中心部のビルの地下にある店内。奥に広い座敷席もあるので、落ち着いて食事が楽しめます。
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海釣りが趣味の高堰喜代忠さん。休日に釣り上げた魚を店で提供することも少なくありません。