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香味園 上領茶舗

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SLOWNER WEB MAGAZINE

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食・趣味・娯楽

津和野とフランス、お茶文化のハイブリッド

ロイヤルシティ芸北聖湖畔リゾート/2024.07.30

香味園 上領茶舗

城下町の佇まいを今に残す、島根県津和野町。歴代の人々の努力により、新しい時代の風潮に流されることなく伝統文化が受け継がれてきたと同時に、町の伝統や慣わしをむやみに広めることもしなかったようで、津和野だけで長く愛用されている飲み物があります。「ざら茶」と呼ばれるその飲み物は、江戸時代からこの地域の人々に飲み継がれている日常茶。地元スーパーのお茶売り場では、緑茶よりも広く取り扱われ、人々の暮らしに溶け込んでいます。

店舗デザインは、同店代表、瑠美さんの同級生で「現代建築を変革する50人」にも選ばれた建築家、小室舞さん。カウンターは長さ約18m。カウンター越しのお客さんと1対1の対話が楽しめ、均等な距離感が保てるように一部がR型になっている

観光客も地元の人も集う、新しい津和野のサロン

津和野のメインストリート本町通りで、和洋折衷の雰囲気がひと際目を引く「香味園 上領茶舗(こうみえん かみりょうちゃほ)」では、シンプルなざら茶のほか、新しい飲み方を提案しています。この場所は、代表のリコッタ瑠美さんの曽祖父が創業した緑茶と抹茶の専門店だった場所。別の通りに移転し、祖父母が継いでいた店舗が廃業危機にあったところ、瑠美さんと夫のアドリエンさんはIターンを決意。2023年(令和5年)、お茶の時間を楽しめるカフェとしてよみがえらせました。横長の大きなカウンターから、通りを歩く人に笑顔で挨拶を交わす、そんな日常が溶け込んでいます。

「大阪生まれですが、小さな頃からざら茶を飲んでいました。津和野に来て、お茶屋さんを継ぐこととなり、初めてざら茶が特別なものなんだと意識しました」と語る、代表のリコッタ瑠美さん(写真左)と、夫のアドリエンさん(写真右)

ざら茶の原料はカワラケツメイという、日本だけで生育するノンカフェインのマメ科の一年草です。これを乾燥させた後に焙じると、ほうじ茶や黒豆茶を思わせる香ばしい香りとまろやかな甘みが広がります。冷たくても温かくても飲みやすく、津和野以外に広がらなかったのが不思議なほどです。
ここで提案する新しい飲み方は、Tisane(ティザンヌ)といわれる、アドリエンさんの故郷・フランスの伝承文化との融合。気分や体調に合わせたハーブを選び、心と体を整える植物療法で、これをヒントに和洋のハーブや漢方とざら茶のブレンドを楽しめる場をつくりました。

超軟水の青野山系伏流水で淹れた冷たいざら茶と(写真左上)、ざら茶 りんご&シナモンはホットで(写真右上)
(写真左下)カワラケツメイは5月の連休ごろに種を蒔き、8月ごろ収穫する
(写真右下)贈答用茶舗時代を思わせる店頭のディスプレイ

日常に溶け込む豊かな文化を、次の世代へ

上領茶舗では、契約農家に農薬を使わず栽培してもらったカワラケツメイを、都度焙煎して使用。ハーブはアドリエンさんの地元、南仏から取り寄せたものもあります。ほんのりスパイシーな『ざら茶 りんご&シナモン』や、華やかな香りと甘みが広がる『ざら茶ローズブレンド』など、ざら茶ブレンドは常時10種類以上。ハーブティーとはまた違う清涼感があり、いろいろなブレンドを楽しみたくなります。近所の人にも気軽に立ち寄ってもらえるようにコーヒーやスイーツなどもスタンバイ。地元のクラフトビール会社が、青野山を水源とする超軟水の湧水でつくった「ざら茶ビール」も気になります。

「フランスの人々が、自分の体調に合わせてハーブを取り入れるように、日本でも、お茶を水分としてというより、体調を整える暮らしのツールにしていた時代もありました。夏には、体の熱をとる麦茶を飲んだり、刺身やお寿司を食べるときには抗菌作用のあるわさびや生姜を加えたり、緑茶を飲んだりしますよね。暮らしの中で大切にしていた日本とフランスの共通点を、次の世代に伝えていくのも素敵だね、ということで事業継承後にティザンヌをスタートしました」と語る瑠美さん。「江戸時代から続く日本の小さな町の風景、暮らし、町並み、伝統的な神事など、初めて来た時から惹かれました」と、アドリエンさんも一目惚れした津和野から、新しいお茶文化が発信されています。

取材撮影/2024年5月23日

香味園 上領茶舗[現地から約65.1km]

香味園 上領茶舗[現地から約65.1km]
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