国を超えて手と手を取り合うことで統合的に問題解決をすることができる
谷本 : そうした途上国に対して何ができるんでしょう?
根本 : サステナブルな視点で、開発も考えることですね。例えばアフリカの農業開発を困難にしているのは、地球温暖化による気候変動です。かつて世界6位の湖面面積を誇ったチャド湖(チャド、ニジェール、ナイジェリア、カメルーンの4カ国にまたがる)は、約50年前と比べて、その95%が枯渇し消失しかけている。
あるいは、世界で4番目に大きかったアラル海(カザフスタン、ウズベキスタンの2カ国にまたがる)は、大量の水を必要とする綿花栽培のために行われた大規模灌漑が原因で、枯渇しようとしている。これらの現実は皆、未来を考えない開発が原因でしょう。
谷本 : いま出てきた話題だけでも、貧困、経済格差、気候変動など、さまざまな問題を感じました。これらに対して国連はどうアプローチしているのでしょう。
根本 : ことは単純ではありません。国連としては、貧困、気候変動などのあらゆる問題を統合的な視点でつなげて考えていくアプローチをとる必要がありますね。国や地域によって深刻な問題は異なります。
しかし、統合的に考えれば、様々なものが見えてきます。A国の技術がB国の課題を解決するなど、できることがある。目先の課題だけを見てるとわからないことでも、大きな視点で見ることによって解決することがあるんです。
国連は、諸問題を解決するために、国をまたいでのつながりを提供できる組織。例えば、水が枯渇して困っているアフリカの農業地帯に、ネットワークや現地の知見を持つ国連機関も協力する形で、日本企業の少ない水で農業を可能にするシステムを提供する。また、国連海洋会議では、世界の水産加工業全体で持続可能な漁業に取り組んでいくことを目指す共同議長国・スウェーデンと、漁業大国である日本の水産会社とのパイプ役となりました。
アフリカでは農業開発が、スウェーデンでは海洋資源が、自国の経済に直結する深刻な問題です。それだけに、「つくる責任・使う責任」に真剣に向き合っています。各々が特に注力して取り組んでいることを共有し、目先の事象だけではなく地球全体の将来を見据えて行動することが重要なのです。
谷本 : 「三方善し」の精神で、同じゴールを目指す。近年では現地の雇用創出だけでなく、技術の応用、さらには事業としてその地域で成立するまでをアテンドする包括的な社会貢献が進んだりしているケースが増えていますが、日本企業に期待される役割は、ますます大きくなっていきますね。
根本 : はい。大いに活躍する場があるはずです。ぜひ積極的にそうした役割を担ってほしいですね。加えて、発信力のあるB to C(対消費者)の会社には、SDGs経営宣言をしてもらえれば。消費者に伝える立場の企業が宣言することは非常に大きなインパクトを社会に与えるはずです。
成功例でいうと、吉本興業・大﨑社長に私が直訴して、個人に対してのSDGsの認知度を高めるために協力していただきました。「平和かつ持続可能な社会があって初めて、お笑いやエンターテイメント産業というものは成り立つんだから、ぜひ、協力させてください」という言葉もいただいて。3月8日の「国際女性デー」には椿鬼奴さん、ゆりやんレトリィバァさん、宮川花子さんなどの女性芸人の方々に女性に対するメッセージをいただいて、SNSで拡散してもらうという試みも実現しました。
企業はもちろん、各個人、教育機関、あらゆる立場から発信し、協働していくことが大切なのです。もちろん国連でもあらゆるステークホルダーから話を聞き、連携する場づくりを行っています。
「島ぜんぶでおーきな祭・第9回沖縄国際映画祭」で西川きよし師匠ら吉本芸人と一緒にSDGsをアピール。
世界的写真家・レスリー・キーさんもSDGsのコンセプトに共感。ミュージック・ビデオ「恋のブギウギトレイン」を制作し、音楽と映像を通じたSDGs啓発活動に協力してくれました。