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物流生産性向上を果たす、物流総合効率化法への取り組みが増加
公開日:2018/03/31
現在、物流領域では、生産性向上に向けての取り組みが多数行われていますが、中心となるのは、トラック積載率、荷待ち時間、再配達など、物流生産性を妨げる問題を解決するために、国土交通省が実施している、「物流総合効率化法」の取り組みです。
この通称「物効法」によって、「我が国産業の国際競争力の強化」「消費者の需要の高度化・多様化に伴う貨物の小口化・多頻度化等への対応」「環境負荷の低減」「流通業務に必要な労働力の確保」を達成するために、税制などの支援措置を実施しています。
具体的には、「二以上の者が連携して、流通業務の総合化(輸送、保管、荷さばき及び流通加工を一体的に行うこと。)及び効率化(輸送の合理化)を図る事業であって、環境負荷の低減及び省力化に資するもの(流通業務総合効率化事業)を認定し、認定された事業に対して支援を行う」(国交省資料より)というもので、平成28年10月~平成29年9月の1年間で、「51件」の総合効率化計画を認定し、物流生産性向上への取り組みが着々と進んでいます。
大和ハウスグループの大和物流株式会社においても、「(仮称)海老名物流センター」(神奈川県海老名市)を着工しました。2カ所に点在する物流拠点を集約することで、従来よりも7割以上の総作業時間及びトラック待機時間の削減を見込んでいます。その結果、「物流総合効率化法」の認定を受けることができました。
小口化・多頻度化等への対応
物流における小口化・多頻度化が起きている背景には、Eコマースの増加という、流通における大きな変化があります。Eコマースの市場が大きく伸び、2016年度のEC市場は、15兆円を超え、スーパーの売上を超える市場となっています。
小売り全体の中では、まだ5.43%ですが、着実にEC率は高まっています。EC市場が増加すると、個人への配達が増加するため、物流の総重量は減少しても荷物の個数は増えます。荷物は小口化、小ロット化し、再配達問題も含め、ドライバーや物流センターの労働者に大きな負担となります。
こうした生産性を低下させるような課題を乗り越えるだけでなく、生産性を高めるためには、抜本的な改革が求められています。
■BtoC-ECと他の流通チャネルの市場規模比較
BtoC-EC市場規模:経済産業省「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
他の流通チャネル市場規模:経済産業省「商業動態統計」より
平成28年(暦年)の商品販売額(※コンビニ円巣ストアのみ、商品販売額とサービス売上高を合計した販売額)
可能性が広がる圏央道
物流生産性向上のためには、道路のインフラも重要です。特に2017年に全線が開通した圏央道は、物流生産性の向上に大きなインパクトを与えています。
インフラが整備されることによって継続的にもたらされる効果をストック効果と呼びますが、圏央道の沿線に、物流施設や工場が立地するケースが増加しています。また、物流においても、圏央道によって結ばれた東名高速から関越道、東北道、常磐道などからのアクセスがしやすくなることで、広域交通ネットワークが形成され、交通混雑緩和や輸送時間短縮、定時性の向上等の物流の効率化及び冗長性・多重化の確保が期待されています。
前述した増加するEコマースも、需要の中心は関東の1都3県であり、1都3県を直接つなぐ圏央道は、Eコマース対策にもつながるでしょう。
中継物流にも期待
大和ハウス工業は、圏央道阿見、幸手、青梅、あきる野、相模原などに、物流センターの建設を進めていますが、圏央道はその立地から、中継物流の期待も高まっています。
中継物流とは、文字通りドライバーと荷物を中間拠点で中継することですが、中継地点でトラックを乗り換える「ドライバー乗り換え方式」、トレーラを差し替える「差替え方式」、貨物を積み替える「貨物交換方式」、拠点間をつなぐ「リレー方式」などの方式があります。
たとえば、ドライバーが中間地点で乗り換えて出荷地点へ戻ることができれば、ドライバーが行って戻るのに2日かけていたところを、1日で戻ることができることになります。トラックドライバーの長時間労働の改善、日帰りの実現など、ドライバーの労働環境改善の対処法として注目されています。