東京の住宅賃料が上がると福岡も上がる?最新賃料データを読み解く
公開日:2019/03/29
POINT!
・首都圏では住宅賃料の上昇傾向が続く
・東京23区と大阪市・名古屋市・福岡市は、賃料の強い相関関係を示している
土地活用のために賃貸住宅を建てたオーナーの方にとって、賃料の動きはとても気になることです。賃料を想定した収益シミュレーションに基づいて建設を決断するわけですから、想定賃料よりも高く推移すれば問題ありませんが、もしその想定よりも低くなると、大きな問題になります。
賃料は、経済状況などの相場観と、需給バランスの主に2つの要因で決まります。近年のように、好景気が長く続き、また大都市部への人口流入が続いている状況であれば、大都市部での賃料上昇が続きます。
しかし、ここにきて、賃料は高止まりをしており、一服感も出てきました。 今回は、住宅賃料データの中でも、傾向がはっきり出やすい、分譲マンション賃料のデータを見ながら、賃料の動向を検証してみたいと思います。
上昇基調の首都圏の住宅賃料
図1は、2012年から2019年年初までの首都圏における分譲マンションの賃料の推移を示したものです。
図1:首都圏賃料推移
(株)東京カンテイ「分譲マンション賃料」より作成
これを見ると、2012年の終わり頃から賃料の 上昇が始まり、多少のばらつきはあるものの、おおむね上昇傾向が続いていることがわかります。 2017年に賃料上昇がいったん落ち着きを見せましたが、2018年に入ると、過去7年間で最も高い上昇幅になりました。年が明けて2019年に入り、少し落ち着きを見せたような状況ですが、これは一時的なもので、再び上昇基調になると予測しています。
上昇が緩やかな近畿圏・中部圏
他のエリアに目を向けてみると、近畿圏・中部圏は首都圏と同じく2012年の後半から賃料は上昇傾向でした。しかしその傾向は、2017年後半から2018年年初にかけてピークで、その後は横ばいからやや下落という状況になっています。
図2:圏域別賃料推移
(株)東京カンテイ「分譲マンション賃料」より作成
図2は、2011年から2018年末までの首都圏・近畿圏・中部圏、それぞれの賃料推移を示したものです。
賃貸住宅賃料は、マンション価格ほどの上昇を見せていませんが、価格と同じく2012年の終わり頃から上昇基調にあることが分かります。
賃貸住宅斡旋業者の方に聞くと、利便性のよいエリアの賃貸住宅物件は、賃料上昇もさることながら、空き物件が少なく、また物件が出ても、すぐに申込み済みとなり、取り合いの様相となっているようです。この傾向は、これからもまだまだ当分続きそうです。
東京23区の賃料が上がると、福岡の賃料も上がる?
大都市間で賃料の相関はどれくらいあるのかを検討してみました。
図3:各都市の相関係数
※2011年1月~2019年1月までの賃料推移における相関係数
(株)東京カンテイ「分譲マンション賃料」より作成
図3は、8つの都市(東京23区、横浜市、さいたま市、千葉市、大阪市、神戸市、名古屋市、福岡市)の住宅賃料相場の相関を示したものです。(2011年1月~ 2019年1月までの賃料推移の相関を示しています)
相関係数はそれぞれの影響度合いを示したもので、+1 ~-1で表します。1に近いほど強い相関、0に近いほど相関は弱くなります。また、-1だと、その2つは全く逆の動きをする逆相関で、-が少なくなるほど逆相関度合いが小さくなります。
図3を見ると、最も強い相関関係を示したのは、東京23区と大阪市・名古屋市・福岡市で、0.9とほとんど同じ動きをしています。離れたエリアでも似たような動きをしていることがわかります。
逆に、首都圏の中では同じような動きをしているのかと思いきや、そうではないようです。東京23区と横浜市は0.4、東京23区とさいたま市は0.3と緩やかな相関という状況です。また東京23区と千葉市は±0となっており、相関なしとなりました。
冒頭に述べたように、賃料の動きは、賃貸住宅経営において最も重要なポイントの一つです。しっかりと注視しておきましょう。