最新国勢調査で見る住居の形態の変化
公開日:2022/01/21
最新の国勢調査(2020年10月調査)の集計結果が2021年11月末に公表されました。国勢調査の調査項目の多くは、人口・世帯・年齢・配偶関係といった人や家族に関するものですが、大きな項目の1つに「住居の状況」というものがあります。主に「どのような住居に住んでいるか」の調査となっています。
今回は、国勢調査の中のこの項目の集計結果に着目して、今後の賃貸住宅需要について考えてみます。
住宅の建て方
「住居の状況」の項目は「住宅の建て方」と「住宅の所有の関係」の2つに分かれていますので、順にお伝えします。
まず「住宅の建て方」の調査結果によると、住宅に住む一般世帯数は約5495万4千世帯で、そのうち「一戸建て住宅」に住むのは2956万1千世帯(53.8%)で最も多くなっています。また、「共同住宅」(1つの建物に2つ以上の住戸があるもの、主に一般的にはマンション・アパートと呼ばれているもの)は約2449万3千世帯(44.6%)でした。
世帯に占める割合の推移をみると、共同住宅に住む世帯は、2000年調査では37.4%で、以降一貫して増え続けています。前回調査(2015年)では42.7%でしたので、1.9ポイント上昇しています。逆に一戸建て住宅に住む割合は2000年調査では58.6%で、こちらは以降一貫して減少しています。前回調査では55.2%でしたので、3.4ポイント低下しています。これは、共同住宅の多い都市部への人口流入が続いていることが背景にあります。
また、共同住宅に住む世帯数(実数)を比べると、2020年は2000年の1.43倍となっています。この間の世帯数(実数)は1.20倍でしたので、共同住宅に住む世帯が増えたことが分かります。
都道府県別にみると、一戸建て住宅に住む世帯が多いのは、秋田県(80.7%)、山形県(76.9%)、富山県(76.6%)となっており、過去の調査同様に日本海側に面する県が上位を占めました。逆に共同住宅に住む世帯が多いのは東京都(70.3%)が最も多く、沖縄県(58.3%)、大阪府(57.1%)と続きます。
ちなみに、建築基準法においては「集合住宅」という用語は使われず、意味的に近いのは、国勢調査の項目にある「共同住宅」と「長屋」になります。昔ながらの長屋は見かけなくなりましたが、最近では「テラスハウス」と呼ばれる建て方が「長屋」に該当します。かなりイメージが異なりますが、建て方の分類では同一となります。
住宅の所有の関係
次は賃貸住宅需要に関係の深い「住宅の所有の関係」についてです。
住宅に住む一般世帯のうち、持ち家に住む世帯は、2020年に61.4%で、割合としては前回調査から0.9ポイント低下しました。2000年調査では61.1%、2005年62.1%、2010年61.9%、2015年62.3%と割合では大きな変化はありません。しかし、実数では、2000年と2020年を比較すれば、1.21倍となっています。都道府県別にみると、持ち家比率が高いのは、秋田県(77.6%)、富山県(76.6%)、山形県(74.8%)が上位となっています。持ち家比率は多くの都道府県で低下しており上昇した3県、横ばいの2県を除く42都道府県で持ち家比率が低下しています。
「持ち家」と回答しなかった世帯の方々が何らかの借家に住んでいるというわけです。公的な借家、民営の借家、給与住宅(社宅)などです。このうち圧倒的に多いのは「民営の借家」です。土地活用などで賃貸住宅を建てた場合はこれに該当します。この民営の借家に住む世帯は2020年に29.7%と住宅に住む一般世帯の3割近くになります。
2000年調査時点では26.9%で、以降年を追うごとにその割合が増えています。この傾向が続くとすれば次回調査では30%を超える可能性は高いと思われます。また、民営の借家に住む世帯の実数は、2000と2020年を比較すると1.33倍となっています。持ち家に住む方の実数の伸びと比べて、高くなっていることが分かります。
このように、国勢調査データからも、賃貸住宅(特に民営の借家)に住む世帯は増加しており、この傾向は続くものと思われます。人口減少期に入ったわが国ですが、しばらく賃貸住宅需要は増えると推測されます。