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コラム vol.046

持ち家志向80%切りの衝撃!
若年層の持ち家志向が減っているのはなぜか?

公開日:2015/07/31

持ち家率が低下

空き家が大きな社会問題となり、「家が余っている」との声もよく聞きます。確かに空き家数は増えていますが、その事実は、賃貸住宅需要の先細りという事ではないようです。ここでは、「持ち家比率」という視点から賃貸住宅需要について考えてみたいと思います。

持ち家比率がどの年代でも低下しています。特に、住宅の一次取得のメイン層である30代・40代の持ち家比率はここ25年で大きく低下しています。

図1を見ると、30代の持ち家比率は、1988年には約50%だったのが、2013年(最新データ)には、35%強になっています。また、40代においては、1988年には約70%だったのが、2013年には60%を割り込んでいます。一方、50代以上になると80%近くの人が、自身が所有する住宅(持ち家)に住んでいます。
これまでの傾向では、若い頃は収入も少なく貯金も少ないので賃貸住宅に住み、高齢になり年金が主な収入となり支払いが苦しくなる前には購入したいという意向が働いていました。しかし、その傾向が徐々に崩れています

図1:年代別 持ち家世帯率の推移

総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成

県別に見る持ち家率

1960年代から急速に経済成長した日本においては、都市部における住宅不足が大きな社会問題となっていました。それを解消するために、政府や行政機関は低所得者層に対して、公営の賃貸住宅を収入に応じた安価な賃料で提供することで、サポートしてきました。
一方、一定以上の収入がある層に対しては、賃貸住宅に関するサポートではなく、住宅ローン減税などといった税の減免を主軸に、住宅購入(持ち家)促進を促してきました。

持ち家比率を、高いほど赤く、オレンジ、黄色、白の順に、都道府県別に色分けをしてみます。
持ち家比率の高い都道府県は、富山・秋田・山形・福井・新潟と日本海側の都市がずらりと並んでいます。富山の持ち家比率の高さは有名で、長年首位の座を明け渡していません。ちなみに持ち家比率が高い故でしょうか、温水洗浄便座の設置率も長年日本一です。

逆に持ち家比率が低いのは、東京・大阪・福岡といった人口流入が多い大都市、そして札幌市を抱える北海道。札幌には北海道各地からの人口流入が起こり、北海道の中で「東京」という状況になりつつあります。
そして、同じように那覇周辺に県内からの人口流入が続いている、沖縄県が上位に入っています。
こうしたエリアの賃貸住宅は、安定的に高い賃料が見込めるでしょう。

図2:都道府県別 持ち家比率

※平成25年データより 総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成

所有に関する意識はどのように変わったか

図3は、「住宅の所有に関する意識の変化」の直近約20年間の推移を示したグラフです。 長い間80%超の人が「土地・建物の両方を所有したい」と答えていましたが、近年は減りつつあり、80%を切るようになってきました。一方で、近年増えているのは、「賃貸住宅で構わない」という人です。
最新データ(平成25年分)の数字を世代別でみると、図4のようになっています。これを見ると、20代・30代・40代の「賃貸住宅で構わない」の多さが目立っています。持ち家ではなく、賃貸住宅にずっと住むという選択肢を考えている人が増えていることがうかがえます。

図3:住宅の所有に関する意識の変化

国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査

図4:世代別 住宅の所有に関する意識(平成25年)

国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査

この理由を考察してみましょう。第一に、「景気が安定せず、給与の増額が見込めず、非正規雇用が増えている」という状況がバブル崩壊以降、長く続きました。その頃に社会に出た、30代・40代の人は、近年景気回復傾向にあるとはいえ、大きな住宅ローンを抱えることに、不安を持ったことが持ち家志向の減少に影響したと推察されます。

次に考えられるのは、コミュニティ形成の難しさではないでしょうか。
ライフスタイルや考え方など、多様化が進む日本社会では、近隣世帯との結びつきが希薄になっています。さらに、近くに住む人との関係が上手くいかなければ、つらい思いで毎日を送らなければならなくなります。出ていこうにも、多額の住宅ローンをかかえていれば、簡単にはいかないでしょう。そんな煩わしさがあるならば、気軽に引っ越しができる「賃貸住宅がいい」と考える人も多くいることでしょう。

このような背景が、持ち家志向が低く、「賃貸派」と呼ばれる、ずっと賃貸住宅に住もうと考えている人を増やす要因となっています。賃貸需要の拡大は、こうした20代~40代に目立つ、「持ち家志向の低下」も影響していると言えます。

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