私たち広島県薬剤師会は、県内15支部・約3,000名の薬剤師の団体です。会員の多くは、薬局の経営者や薬局に勤務する薬剤師で構成されており、私自身も薬局を経営しています。薬剤師の仕事をさまざまな角度からサポートしたり、役立つ情報を提供することで、個々が目指す職能向上に貢献できればと考えています。また公益社団法人として、県民の皆様が安心安全に医薬品を使用していただけるよう、あらゆる活動に取り組んでいます。
今回、無事に薬剤師会館を新築移転することができましたが、振り返ってみて印象的だったのが、広島工業大学の名誉教授のアドバイスで「ECI方式」を採用し、計画を進めたこと。私たちは、まず法人内で9名による建設特別委員会を設置。公平性を期すため、役職を持たない会員から委員長を選出し、私や事務局長はアドバイザーに徹しました。設計会社と施工会社である大和ハウス工業さんと委員が一堂に会し、協議・調整を進めたおかげで、スピーディに計画を進めることができたと思っています。
旧施設は4階建てで、3階に検査センターがあったのですが、新会館ではこれを廃止し、代わりに研修機能付きの薬局を併設しました。この会営「二葉の里薬局」には附属設備として、安全キャビネット等の設備を備えた無菌調剤室を設置しているのですが、その大きな目的は、“薬剤師の研究環境の整備”にあります。「薬剤師会が運営する薬局ならば、すべてのことができないといけない。環境を整え、知識・技術の習得につなげよう」という思いから生まれたものです。この薬局自体、営利事業としては成り立つものではないでしょう。あくまで、会員である薬剤師の職能向上の場として活用していければと考えています。
2階のホールについても、さまざまな意見を反映しました。音を聞き取りやすくするため音響設備の充実や、子ども連れの会員も気軽に聴講できるような工夫、車椅子の講演者にも対応できるよう、舞台袖にはリフトも設置しました。これらすべては、「もっと多くの会員に会館を活用して欲しい」という思いから。また、移転によって三師会の会館が隣接することとなりました。今後は、それぞれの使用状況によってホールの貸し借りも可能ですし、全部を使って一つの学会を行うなど、構想はふくらんでいます。
いま、私たち薬剤師にも在宅医療への対応が求められています。地域包括ケアにおいて重要な役割を担う「かかりつけ薬剤師・薬局」ですが、いま患者さんのお宅を訪問して在宅医療に取り組んでいる薬局は全体の3分の1程度です。しかも、1薬局が担当する在宅の患者は数名程度という状況です。
そこで私たちは、併設の「二葉の里薬局」を若手の薬剤師を対象とした、“在宅訪問の実務研修の場”としても活用したいと考えています。訪問診療などの後に、処方箋に基づく薬を在宅訪問して届け、その際に服用したかどうかの確認や管理、指導とかといったノウハウを身に付け、在宅医療に経験ある薬剤師を増やしていく拠点です。
また、患者様から「どこの薬局に行けばいいのか分からない」などの相談を持ち込んでもらえれば、当薬局で研修中の薬剤師を派遣したり、在宅訪問できる薬剤師を直接紹介することも計画しています。
ホール等で行う研修や講演は、いわゆる座学。これと並行して、実践の場である会営薬局をうまく機能させていきたい。新しい薬剤師会館の果たす役割は、これからもどんどん大きくなっていくことでしょう。
- 本会館と同規模の事業用施設や、検査機能を持つ施設の建設において豊富な実績を持ち、そのノウハウを存分に発揮してくれた。
- 細かな要望一つひとつにていねいな対応をしてくれ、可能な限り実現してくれた。
- 計画変更においても、スピーディかつ柔軟に対応してくれた。
CASE4
広島県薬剤師会館
- 県民の健康維持増進のため、“薬剤師の視点”を活かし、情報提供と研究・研修機能を強化。
- 多くの「かかりつけ薬剤師」が活躍する社会へ、新たな機能を備えた新施設を活用していきたい。
- 法人の新たな顔として、充実の機能を備えた施設。