猫と暮らす家 犬と暮らす家
習性や行動をきちんと理解した上で、動線や空間づくりを工夫すると猫や犬との暮らしは大きく変わります。猫も犬も、そして人も心地良い家づくりを考えていきましょう。
猫や犬は、大切な家族であり、人生を共に歩むパートナー。
人と同じように、快適な環境を用意してあげたいものです。
健康や安全に配慮することはもちろん、室内でも伸び伸びと暮らせるように。
習性や行動をきちんと理解した上で、動線や空間づくりを工夫すると猫や犬との暮らしは大きく変わります。
猫も犬も、そして人も心地良い家づくりを考えていきましょう。
猫や犬を飼うということは、毎日を、一生を共に生きていくということ。
散歩や掃除などの毎日の世話に加えて、仕事に出ている時、旅行に行く時、急な外出の時など、不在時のこともきちんと配慮する必要があります。
さらに、引っ越しや家族構成の変化があっても、ずっと一緒にいられるか。
猫や犬が歳をとったら、そばで介護ができるかも考えなければなりません。
毎日一緒にいること、ずっと一緒にいること。
それが、猫や犬たちとの約束です。その思いがあれば、猫や犬との暮らしは、きっと人生を豊かにしてくれるでしょう。
猫や犬との暮らしは、時代とともに少しずつ変化しています。
共に幸せに過ごす家づくりのヒントをつかむために、今どきの猫・犬との暮らし事情を見ていきましょう。
出典: 『アニコムどうぶつ白書 2019』より
※ねこのきもちWEB・アプリ調査調べ
出典: ねこのきもちWEB MAGAZINE(ベネッセコーポレーション)より
出典
かまくら犬と猫の病院 院長
塩谷 香織 先生(右)
生まれ育った鎌倉で2011年に開業。
診療の傍ら、飼い主向けの介護教室なども開催。
大和ハウス工業 住宅事業本部
目賀田 史夫(左)
一級建築士。自身も大の犬好き。
猫や犬と暮らす家の提案実績も多数。
猫や犬が健康に、そして快適に暮らすためには、どんな環境やサポートが必要なのでしょうか。獣医師と設計士、それぞれの専門家の視点で語ってもらいました。
近年は猫も犬も室内飼いが増えていますが、家の中にも多くの危険が潜んでいます。例えば若い大型犬に多いのが、おもちゃなどを飲み込んでしまう誤食。小型犬の場合は、些細なことでも骨折につながるケースが多く見られます。他にも配線をかじって感電する事故や、猫だとコンロに飛び乗り火傷をすることもありますね。
設計士としてもキッチンには特に気を使うため、ペットゲートで囲うなど立ち入りを制限するようにしています。誤食防止に関しては、小物を片付けられる収納をつくることも一つの方法かもしれません。飼い主の知らないところで誤食してしまう場合もありますよね。
食欲がない、吐くなど胃腸の症状が出てから気づく方が多いようです。ちなみに、毒性のある花や観葉植物を食べてしまうケースも少なくありません。どの植物が安全か明確でないため、猫や犬の行動範囲には極力置かない方がいいと思います。
何が危険かを把握した上で、その要因をあらかじめ取り除くことが大切ですね。また、猫や犬は快適性も大事なポイントになるため、なるべく静かな環境にケージを置けるよう配慮しています。部屋の隅など落ち着いた空間で、かつ家族の気配を感じられる場所が安心できるようですね。
ずっと同じ場所にいると疲れてしまう場合もあるため、2カ所以上居場所を設けると効果的だと思います。
あまり人が来ないエリアにもう一つの居場所をつくり、気分に応じて行き来できるようにするのがお勧めです。
お留守番をさせる時は、周囲の危険要因を取り除いてから外出してほしいと思います。あとは水があるか、室温が大丈夫か。特に夏場は熱中症の危険があります。
今は法令で24時間換気設備の設置が義務化されていますが、それでも心配ですね。以前手掛けた事例で、猫用スペースを陽当たりの良い場所につくったケースがありました。冬は暖かいですが夏は不安なので、隣接する居室と可動ルーバー付き建具でつなぎ、エアコンを共有できるようにしました。心配な日はエアコンをかけて出かけるなど、気温に応じて調整していただいています。
人間が大丈夫でも猫や犬は大丈夫とは限らないため、注意するに越したことはないですね。猫も犬も寒さには比較的強いため、冬は屋根付きのハウスや、もぐれる場所を用意しておけば問題ないと思います。
近年は猫も犬も長生きになっていますが、老化はいつ頃から始まるのでしょうか。
一般的に7歳を過ぎるとシニアと言われ、あれっと思うことが増えてきます。体つきが変わったり、素早い動作ができなくなったり。最近は長寿命化に伴い、以前は見られなかった口腔の病気やがんなども増えています。
家づくりの面でも、猫や犬がシニアになった時のことを考えて、段差を緩やかにするなど配慮しています。目が悪くなってくるため、若い時に覚えた家具の配置を変えないのも一つのポイントかもしれません。
確かにシニアになると環境の変化が負担になります。長距離移動もストレスになるため、外出や旅行は基本的に控えた方がいいですね。
歳をとると、猫も犬も認知症に似た症状が出てきます。日中寝ていて夜になると活発になったり、部屋の隅に頭を押し付けたり(Uターンできない)、トイレの失敗が増えたり。こうしたサインを早めに見つけて、もう一度トイレトレーニングをするなどサポートしてあげなければなりません。子猫・子犬の時のように、名前を呼んで、触って、褒めてあげるといったスキンシップを増やすことも大切です。
人と一緒ですね。家族が認知症になるのと同じで、できていたことができなくなるとイライラも増えるでしょう。
でも「今までありがとう」という気持ちを込めて、また赤ちゃんに戻ったという気持ちで接するわけですね。
人間の側が高齢だと、大型犬の介護は難しいかもしれません。これから飼う方は、猫や犬の最期のお世話ができるかまで考えて、本当に飼うか、猫種・犬種はどうするのかを選んでほしいと思います。
住まいにできる工夫ももちろんありますが、一番大切なのはやはり人間側の気持ちだと改めて感じます。猫や犬と毎日を、一生を過ごすイメージを家族で共有した上で、家づくりを考えていく。私たちは住宅のプロとして、そのお手伝いができればと思います。
ダイワハウスの猫と暮らす家、犬と暮らす家を拝見して、ここまで考えられているのかと驚きました。猫も犬も、そして人も心地良い暮らしのために、ぜひ住宅の側からもサポートしていただきたいと思います。
(敬称略)
一緒に暮らす愛猫・愛犬がずっと健康に過ごせるよう、知っておくと役立つ豆知識をご紹介します。
A. 肥満予防や、高齢期に多い諸症状を防ぐため。
肥満になると心臓の負担が大きくなり、寿命を縮めてしまう可能性も。また、運動不足になると筋肉が衰え、関節疾患や骨折のリスクが高まります。
A. 「同じ場所を行ったり来たり」には要注意。
部屋やケージの中を行ったり来たりする、グルグル回るなどの行動は、エネルギーを発散できない場合に起こるストレスサインの一つ。まずは日々の散歩をしっかり行いましょう。
A. 犬種や体の大きさなどによってさまざま。
体の大きさや犬種、関節疾患の有無などによって適正な散歩時間は異なります。目安としては、15~60分の散歩を1日2回。後はその日の状態に応じて調整しましょう。
A. 楽しく遊ぶことも運動につながります。
散歩以外にも、日々の遊びの中で運動量を補うことができます。ボール投げやタオルなどの引っ張りっこは、楽しみながら体を動かせるためお勧めです。ケガにつながらないよう、必ず滑りにくい場所で行いましょう。おやつを探す知育玩具で頭を使うことも、ストレス発散になります。また、プロのもとで教わる必要がありますが、体幹と筋力を鍛えるバランスボールも効果的です。
A. 無理のない範囲でいつもの散歩にプラスα。
体力の低下が心配なシニア期でも、気晴らしも含めて散歩には出かけましょう。公園などの芝生や土の上で早歩きやジョギングをしたり、傾斜の緩やかな坂道を歩いたりするだけでも良い運動になります。公園のルールによりますが、ロングリードがあればボール遊びなども良いでしょう。また、シニアになると関節が硬くなり筋肉も衰えます。筋力トレーニングとして、段差の低い階段をおやつを使って上り下りさせる運動などもお勧めです。
地震の場合は、落下物に注意。驚いて隠れてしまい、出てこなくなることがあるため、すぐにケージやキャリーバッグに避難させましょう。
CHECK
環境の変化によるストレス行動や、共同生活を想定した準備が必要です。
CHECK
1週間~1カ月分程度。無添加フードは体にやさしいですが、日持ちしないので注意。
避難時や、放し飼いにできない避難所生活などに備えて準備しましょう。
持病がある場合は必須。普段使用している塗り薬などもあれば安心です。
迷子に備え、写真を手元に用意。名前・連絡先を書いた迷子札も活用しましょう。
→すぐに避難できるよう、まとめて取り出せるところに用意を。
基本的には爪とぎができていればOK。爪とぎが不十分で床に爪が当たる場合は、専用の爪切りで切ってあげましょう。動物病院などで切ってもらうこともできます。
室内で歩く時にカチャカチャ音がしたら、爪が伸びている合図です。慣れている方は自分で切るか、もしくはトリマーや動物病院などに依頼しましょう。
市販フード
手作りフード
1.できれば事前に相性をチェック!
保護団体などから猫や犬を引き取る場合、お試し期間が設けられています。飼う前に、先住ペットとの相性を確認できれば安心です。
2.食事の管理に注意!
同時に食事を与えると、食べるのが早い子が遅い子の分まで食べてしまうことも。食べ終わるまで見守るか、別々の部屋で与えましょう。