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国際化する不動産市場
公開日:2016/11/30
海外の投資家による日本の不動産市場への投資は増加の一途をたどっていますが、不動産開発のデベロッパーと不動産仲介会社においても、外国人による不動産の取引が増加しているようです。
国土交通省は、平成28年3月に「不動産市場の国際化への対応調査業務 外国人対応に関するアンケート調査」を発表しました。
調査によると、全体では、売買、賃貸ともに「0~5%未満」が 80%以上を占めており、外国人客による取引はまだまだ一般的とは言えない状況にはあるものの、10年前と比較した外国人客との取引の増減をみると、「売買」では「増加している」が84.9%となっており、減少していると答えた人は、わずか1.1%となっています。「賃貸」でも同様の傾向が出ており、60.8%が「増加している」と答えています。
「売買」「賃貸」ともに(特に「売買」において)外国人客とのビジネスが増加しているのが見て取れます。
10年前と比較して、外国人客との取り引きの増減(売買 N=93 賃貸 N=74)
もともと、外国人客の日本国内の不動産に投資する目的はどういったことなのでしょうか。
同調査によれば、半数以上を「居住用(将来用、家族・親族用も含む)」が占めていますが、2位から4位は、いずれも投資、資産形成であり、これらを合わせると、「投資目的」での取引のほうが多いということができるでしょう。
外国人客が日本国内の不動産に投資する目的(N=119)
これだけ、外国人客による取引、しかも投資目的での取引は増える背景としては、どのような認識があるのでしょうか。
まずは、昨今、若干の円高傾向はあるものの、リーマンショック後の全体的な傾向を見れば円安が進み、日本の不動産が割安傾向になってきていること、また、同様に不動産価格の低下傾向も進み、もともと日本の不動産は「安い」と認識する海外投資家は多かったことに加えて、日本の不動産市場が持つ安定感、信頼性の高さが、外国人客による不動産の売買を促進しているようです。
外国人客が日本国内の不動産に投資する目的(N=119)
加えて、2020年の東京五輪の開催を控え、日本の知名度や評価も上がり、訪日外国人のさらなる増加が予測されていることも大きな要因でしょう。実際、2015年の訪日外国人、在留外国人は過去最高となっています。
訪日外国人旅行者数・出国日本人の推移
出典:日本政府観光局(JNTO) ※2015年は推計値
在留外国人数の推移
注)平成23年末までは、外国人登録者数のうち中長滞在者に該当し得る在留資格をもって在留する者及び特別永住者の数である。
出典:法務省「平成27年6月末現在における在留外国人数について(確定値)」
国の施策やビジネスのグローバル化、金融面の変化も外国人客の不動産取引を促進しています。
国は「観光立国政策」を推し進めるために、ビザ発行の規制緩和など、様々な施策を打ち出していますし、ビジネスのグローバル化は拡大の一途で、外国人労働者や留学生が増加し、日本企業もどんどん海外進出を果たしています。日本の金融機関においても、こうした背景のなか、外国人への融資も増加させています。