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コラム No.150

CREコラム トレンド

急増する不動産クラウドファンディングで実務マニュアル公表

公開日:2023/11/30

国土交通省はこのほど、適切な不動産クラウドファンディング業務を行うための実務手引書(マニュアル)を公表しました。これから業務を始める企業や業務経験が浅い事業者でも、事業のリスクを抑えて投資家保護を実践し業務管理体制が構築できるようにする狙いがあります。

クラウドファンディングによる出資募集額は5年前との比較で件数16倍、金額は48倍に

不動産クラウドファンディングは、「不動産特定共同事業法」の改正により2017年に解禁された不動産市場の活性化策です。不動産特定共同事業は複数の投資家が共同出資して不動産取引し運用収益を分配するもので、1995年に施行されました。当初、事業開始の許可を受けるには宅地建物取引業免許が必要でしたが、2013年に不動産証券化の担い手であるSPC(特別目的会社)も事業主体になれるよう改正しました。

しかし、この改正では銀行などの機関投資家が絡む取引に対して限定され、大手の不動産業者は参入できても中小事業者には参入しにくいものでした。そこで、2017年に小規模の不動産業者も事業できるようクラウドファンディングによる投資を認め、インターネット時代に即した資金調達手段の道を開いたのです。国土交通省は同年7月に「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」を作成して調査・啓発を進め、2023年7月に改訂版を公表しています。

図1:不動産特定共同事業に基づく不動産クラウドファンディングのイメージ図

国土交通省Webサイト「不動産クラウドファンディングに係る実務手引書を公表します」(2023年9月29日)より作成

そして今回、FTK法における不動産クラウドファンディングの適切な運営と制度の定着を目指して実務手引書(マニュアル)を作成しました。不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディングによる出資募集額は2022年度が419件、604.3億円で、5年前と比較して件数で約16倍、金額で約48倍と大幅に増えています(国土交通省ホームページによる)。

専門人材の登用

不動産クラウドファンディングは、システムの構築・管理や専門人材の雇用など多額のコストが発生するので、システム開発および人件費などの予算を事業計画に織り込んだうえで事業に取り組んでいくことが重要です。システムに関しては定期的な点検や監査、運用状況やリスクの評価・見直し・改善のための体制構築が求められます。またシステムの責任者はIT企業、研究開発機関、銀行などのシステムエンジニアとしての業務経験が複数年ある人が望ましいと、実務マニュアルでは指摘しています。

クラウドファンディングの事業者(委託元)は、システム管理部門やシステム構築の経験者が不在で新たに部門や人員を新設する場合、たとえ外部委託先が要件を満たす体制がある会社でも、自らが実務手引書や種々のガイドラインなど関連法令を十分に理解していることが重要です。

システム外部委託先の管理責任は委託元にある

不動産クラウドファンディングはインターネット上で展開される電子取引業務ですので、システム構築が必要不可欠。しかし不動産業務に精通している事業者でも、自らシステムの開発・管理に携わることは技術・専門性の点でハードルが高いので実質的に困難です。このため、システム会社への外部委託が現実な課題になります。国交省が今回作成した実務マニュアルは、この外部委託について多くの紙面を費やしています。

システムの外部委託で最も留意すべき点は、「外部委託先の管理責任は委託元にある」ということです。万が一システム障害が生じた場合、その責任は外注先ではなく、全て不動産クラウドファンディングの事業者である自ら(委託元)にある、という意識を持つことが重要です。管理責任の観点から、委託先(子会社を含む)を適切に管理・監督して対応状況を確認・把握する必要があります。

審査と営業の分離、投資家募集と情報公開

不動産クラウドファンディングでは、投資先であるファンドの事業計画を審査します。ファンドの財務状況や事業計画、資金使途など適切な審査を行うための体制を構築します。この場合の社内の審査体制は、営業部門と審査部門を分けるか、営業従事者と管理部門責任者を兼任させないで営業担当から独立した体制を整備することが求められます。

図2:不動産特定共同事業に基づく不動産クラウドファンディングの業務フロー

国土交通省「クラウドファンディングを活用した不動産特定共同事業に係る実務手引書」(2023年9月)より作成

投資予定であるファンドの審査が終了すれば、ファンドに対する投資を呼びかけるための商品設計や顧客獲得などの戦略を練ります。ここでは①事業スキームの策定②資金調達計画の策定③対象不動産の取得④運用計画の策定⑤配当方法・事業者報酬の検討⑥投資家の募集戦略を立案―などを行います。
Webサイトでファンドを紹介し、投資家に判断材料を提供するためにインターネット上でファンドの事業内容や配当などを公開し投資を呼びかけます。事業者はファンドとの間で交わした契約成立前書面への記載事項のうち、重要と判断した事項やファンドとの利害関係の状況などを公開します。また、実務マニュアルではファンドの財務状況や事業計画、資金使途に関するリスク評価や過去1年以内の不動産特定共同事業の状況、さらには過去の行政処分の有無とその内容、審査の結果明らかになった過去の投資家被害など、努力義務として公開すべき事項であると紹介しています。

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