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コラム No.154

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2024年問題で不動産関連の物流革新が始動

公開日:2024/05/30

時間外労働の上限規制適用に伴うトラックドライバーの働き方改革、いわゆる「物流2024年問題」への取り組みが始まりました。国土交通省は2024年2月、2023年6月に政府が策定した「物流革新政策パッケージ」の取り組み状況(「物流革新に向けた政策パッケージ」の取り組み状況について)を公表。同報告書では、物流・自動車局の流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の改正、また、法改正以外の関連措置として「トラックGメン」による悪質な荷主・元請事業者への監視・指導の強化。さらに、トラックの「標準的運賃」についても2023年12月に見直し方針を発表し、モーダルシフトや省人化・省力化などの物流効率化の取り組み支援等の施策を打ち出していますが、これらに加えて、自治体による産業立地の規制緩和や物流施設などの土地利用転換、再配達率半減に向けたマンションの宅配ボックス設置にもスポットが当たっています。ここでは、不動産関連の政策について見ていきます。

物流施設整備と土地利用転換迅速化

わが国の産業用地の確保と物流施設の整備は、円安の影響による生産拠点の国内回帰化と2024年問題により、効果的・効率的なサプライチェーン対策として喫緊の課題となっています。こうした状況を踏まえ、国は付加価値の高い製造業、物流業が地方で産業立地を行う際、緑地や調整池、道路などを含んだ物流拠点の整備を推進することで、地域雇用の創出や地域経済力の底上げを図っています。
例えば、自治体が産業団地などを造成する場合、団地内にある緑地や調整池、道路などの関連都市インフラの整備に対して都市再生整備計画事業における「社会資本整備総合交付金」を活用して財政支援を行います。また物流施設を整備する場合は、民間都市開発推進機構の金融支援が受けられるようにします。
半導体などの重要物資の国内生産拠点や物流施設の整備に要する期間を短縮するため、土地利用転換の迅速化を図ります。産業立地の際に土地利用転換に関連する規制や手続きを見直すほか、宅地の造成工事においては建物の建築工事を同時並行して進めることが可能であることを明確化します。
具体的には、市街化調整区域における開発許可を緩和し、半導体工場、物流施設などを建設できるようにします。また、地域の特性を生かして地域経済の発展を促す「地域未来投資促進法」に基づいた地域経済牽引事業」については、市街化調整区域での開発許可を得るための要件を緩和します。これにより、事業者のニーズに応じた産業立地が可能になります。
土地利用転換の迅速化は、手続きに要する期間を現状1年程度から4か月程度に見直して短縮。あわせて農地転用、開発許可に関わる手続きを進め期間を短縮します。また、宅地の造成工事とあわせて建物の建築工事を進めることで、竣工までの期間現状3年程度を見直し後には2年3~6か月程度を短縮させます。
こうした政策の事例でいま注目されている自治体が、台湾の半導体大手TSMCの工場の建設が進む熊本県でしょう。国は半導体や蓄電池などの工場の立地を後押しするため、農地など土地利用に関する規制を緩和する方針で、農地転用する際に通常1年ほどかかる手続きを4か月程度に短縮するほか、開発が規制されている市街化調整区域でも、自治体が建設を許可できるようにすることなどを検討しているとの報道が出ています。なお、2024年2月にTSMC第1工場が完成、今後建設が始まる第2工場も国が最大1.2兆円を補助することが決まっています。

マンション管理規約見直して宅配ボックス、置き配促進

物流2024年問題では、宅配便の再配達率改善が大きな課題の一つとして取り上げられています。これは政策パッケージの「荷主・消費者の行動変容」の中で明記されており、再配達率「半減」を含む再配達削減策として、マンションにおける宅配ボックスの設置、置き配を推進していくよう求めています。マンションの宅配ボックスは、もともと国交省の「子育て支援型共同住宅推進事業」として補助金支給の対象となっているものです。最大50万円を賃貸オーナーやマンション管理組合に補助します。
国土交通省は2023年10月に「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ」を設置し、標準管理規約の見直しに関わる議論を行ってきました。宅配ボックス設置の円滑化に関しては、設置工事の決議要件について、普通決議で実施できるようマンション標準管理規約コメントで明確にします。
置き配の円滑化に対しても、トラブルなく置き配を実施しているマンションの使用細則を分析して、置き配に関する使用細則を定める際に参考となるポイントをとりまとめます。例えば、「消防法に基づき、廊下、階段、避難口などに避難上の支障となるような状態での宅配物の放置を禁止していること」「宅配物を置くことが可能な場所などについて具体的に定められていること」など、置き配に関する使用細則を定める際のポイントを明文化しておく案が出ています。マンション管理規約の改正・見直しは、迅速に宅配ボックス、置き配の設置を進める狙いがあると思われます。

このように、物流における2024年問題の解決には、物流事業者だけの変革ではなく、国を含めたさまざまな業種における事業者が連携し、社会・経済のインフラの再開発の観点を持ったうえで取り組むことが必要とされています。

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