トレンド
投資主価値の最大化を実現させる 「不動産市場に関する国内投資家調査」に見る、投資家ニーズの変化(2)
公開日:2018/08/30
今年も平成30年6月に、国土交通省より、「不動産市場に関する国内投資家調査結果」が公表されました。前回に引き続き、この調査の結果を見ながら、今後の投資家のニーズの変化を検証します。
(図はすべて同資料からの抜粋)
調査の対象となっている機関・企業等
・企業年金:企業年金基金、厚生年金基金
・Jリート、私募リート、私募ファンド:Jリート、私募リート又は私募ファンドの運用機関
・金融機関:都市銀行、信託銀行・信託会社、地方銀行、外国銀行、リース会社、生命保険会社、損害保険会社等
・事業会社:不動産会社、建設会社等
(1)投資対象不動産の立地地域
投資不動産の立地地域を見てみると、3年前との比較において、「東京都心5 区」「東京都その他18 区」ほか、いずれの地域においても増加しています。特に、大阪圏のその他主要都市、札幌市、福岡市においては、高い伸びを示しており、大都市圏から、地方都市へと投資の範囲が広まっていることを示しています。
海外においては、北米、欧州、東南アジアともに増加の傾向を示しており、海外への投資意欲も年々高くなっているようです。
属性別では、「金融機関」と「事業会社」が地域をあまり変えていませんが、「J リート、私募リート、私募ファンド」は、国内の各地域に投資対象を増やしています。
図1 投資対象不動産の立地地域(全体 複数回答)
(2)各地域への今後の不動産投資姿勢
今後の対象地域の投資姿勢については、やはり多くの企業・機関が投資の拡大意欲を示しています。特に国内の三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)においては、「拡大」が48%を示し、「縮小」の1.3%を大きく引き離しています。地方においてもこの傾向は変わらず、旺盛な不動産投資意欲が見えます。
ただし三大都市圏と地方では、意欲にかなりの差も生まれており、これからも三大都市圏に集中する傾向にあると言えます。
三大都市圏においては、特に「オフィスビル」への投資意向が高く、地方圏の主要都市やその他の地域においては、「賃貸住宅」、「商業施設」、「ホテル・旅館」と同じような数値となっています。
図2 各地域への今後の不動産投資姿勢(全体 単回答)
(3)地方圏の主要都市(札幌市、仙台市、福岡市)における、「拡大、維持・継続」する判断理由について
投資意欲旺盛な札幌市、仙台市、福岡市への「投資拡大・維持・継続」の判断理由においては、「ポートフォリオの地域分散のため」が多く、「キャピタルゲイン」よりは、「インカムゲインが良いと判断」されている回答が多くなっています。
ただし、「地域経済の回復・市場の拡大の見通しが良いと判断」する投資家が存在する一方で、「地域経済の回復・市場の拡大の見通しが悪いと判断」する投資家も存在し、判断が分かれる部分となっています。
図3 地方圏の主要都市における今後の不動産投資拡大、維持・継続理由(全体 複数回答)
(注)地方圏の主要都市への今後の投資姿勢について、「拡大」、「維持・継続」と回答した企業等を対象に集計。
(4)公的不動産(PRE)への投資意向
現在、多くの地方自治体にとって、遊休不動産をいかに活用するか、また、より効果的な活用方法によって街を活性化するかは、喫緊の課題となっています。
投資家へのアプローチも、様々な方法で行っているようですが、現在の投資家のPREへの投資意向は、全体としては高いといえない状況のようです。
ただし、「J リート、私募リート、私募ファンド」に関しては、「今後投資を考えている」割合が34.5%と高く、物件次第では、今後の投資に期待できそうです。事業会社に関しては、実際にPREへの投資を行っている企業が11.3%存在しています。
投資判断時に重視する要素については、「キャッシュフローの見通し(インカムゲイン)」、「借地期間が建物の耐用年数に見合っているか」が高くなっています。
(注)「公的不動産(PRE ; Public Real Estate)」とは、ここでは底地を公共が、建物を民間が所有しているものを指す。
図4 公的不動産(PRE)への投資意向(単回答)
図5 公的不動産(PRE)への投資判断時における諸要素の重視度(単回答)