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コラム vol.418
  • 不動産市況を読み解く

賃貸住宅におけるZEH化の取り組み

公開日:2022/08/31

「カーボンニュートラル」という言葉が浸透してきました。
カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」(つまり差し引きして±ゼロ)を意味します。我が国は、世界的に脱炭素社会を目指す動きの中で、2050年にカーボンニュートラル、2030年度には温室効果ガス46%(2013年度比)削減、を目標に掲げ、その実現に向けて様々な取り組みが進んでいます(当時の菅総理が2020年10月の臨時国会で「2050年カーボンニュートラル宣言」を行ったことで一気に広まりました)。
こうした動きに呼応する形で、エネルギー消費の約3割を占める建築分野での省エネ対策を加速させる取り組みが、国土交通省が旗振り役となり進められています。
建築物における推進の中で、「ZEH」、「ZEB」という言葉が徐々に浸透してきました。とくに、住宅についてのZEHについては、かなり浸透してきたようです。(注:ZEH=ネットゼロエネルギーハウスZEB=ネットゼロエネルギービル)
本コラムでは、特にZEH賃貸住宅について、その概要とメリットについて解説したいと思います。

ZEROエネルギーの背景

地球規模での課題である「気候変動問題」の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択されました。この中で、

  • 「世界共通の長期目標として、世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて、2℃より低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)」
  • 「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」

が合意されました。

この実現に向けて、世界各国が取り組みを進めており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げて推進しています。
そのためには、「省エネ」つまり「使うエネルギーを減らす」に加えて、「創エネ」つまり「エネルギーを生み出す活動を促進する」の2つのアプローチが必要とされています。

カーボンニュートラルに向けた取り組み

カーボンニュートラルに向けた建築分野での取り組みは、国土交通省の資料によれば、次のようなステップとなります。(以下、エネルギー基本計画:2021年10月22日閣議決定。国土交通省資料より)

  • 1)2030年度までのステップとして 建築物省エネ法を改正し、省エネルギー基準適合義務の対象外である住宅及び小規模建築物の省エネルギー基準への適合を2025年度までに義務化する。
    2030年度以降新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、整合的な誘導基準・住宅トップランナー基準の引上げ、省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する。
  • 2)2050年度中までに2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す。

ZEH―Mとは

ZEHとは、「ネットゼロエネルギーハウス」のことですが、集合住宅では「ZEH-M」と言われます(Mはマンションのこと)。戸建住宅におけるZEHは少しずつ広まりつつありますが、賃貸住宅においてはまだこれからという段階です。しかし、ここまでに述べたような背景から、これからはZEH賃貸住宅が当たり前の時代になってくるものと思われます。
ZEH住宅の集合住宅版であるZEH-Mでは、室内環境の快適性はもちろんのこと、加えて省エネ性能の向上を実現させ、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目標としています。
そのZEH-Mでは3つの基準が定義され、そのすべてをクリアする必要があります。

  • 1)冷暖房エネルギーを極力抑える「高断熱外皮仕様」 天井・外壁・窓・床など、建物の外側を形成する断熱性能の基準値(強化外皮基準)を、平成28年省エネ基準値を上回る性能にする。
  • 2)エネルギーを上手に使う「省エネ設備の導入」 冷暖房機器、給湯器、換気設備、照明などの設備品において、平成28年省エネ基準に対して、住戸および共用部での一次エネルギー消費量を20%以上削減する。
  • 3)クリーンなエネルギーを創る「太陽光発電の導入」 創エネルギーのために、太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入が必要。発電した電力は、自家消費および余剰売電ができる。

賃貸住宅オーナーのメリット

ZEH―M仕様の賃貸住宅にすることで、ご入居者に選ばれる賃貸住宅になることが期待できます。
上記1)~3)の仕様により、快適性や省エネ性といった付加価値をつけることで、他の賃貸住宅との差異化を図れます。よって賃料下落リスクが減り、また長期間の後広く⼀般化し入居が期待できます。
また、仕様や申請期間の縛りがありますが、補助金を活用することができ、建築費用の一部を軽減することができます。これは、国がZEH-Mの普及・推進しているための補助金です。

賃貸住宅ご入居者のメリット

一方、ご入居者のメリットとしては、ZEH仕様の賃貸住宅では、高い断熱性能と高性能省エネ設備、そして太陽光発電を利用することで毎月の光熱費の低減が期待できます。
また、建物の断熱性が高くなりますので、夏は涼しく冬はあたたかく、一年を通して快適に過ごす事ができるでしょう。

戸建住宅で広まりつつあるZEH仕様住宅ですが、今後賃貸住宅においても、広く一般化していくでしょう。これから土地活用として賃貸住宅経営をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

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