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コラム vol.476
  • 土地活用税務コラム

分譲マンションを含む不動産の評価方法が改正タワーマンションを活用した税務対策に対応

公開日:2024/01/31

2023年7月21日、国税庁より「居住用の区分所有財産の評価について(案)」という法令解釈通達案が公表されました。相続税評価額と市場価格の乖離が問題となっていた居住用の区分所有財産(分譲マンション)について評価方法を補正するというものです。

従来からタワーマンションの相続税評価額は市場価格と大きく乖離していると言われ、国税庁の資料によれば、2018年には、一般の分譲マンションも含めて、相続税評価額と市場価格に平均2.34倍の乖離があるとされています。1億円の市場価格のマンションが、全国平均値で約4273万円の評価額になっていることになります。

図1:相続税評価額と市場価格の乖離の実態

出典:国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について

こうした乖離を利用して税負担の減額や租税回避のための取引が行われているケースがあり、公平な税収の確保という点で問題が生まれていました。
本来、相続税というものは「富の再分配」を目的としています。貧富の格差をできる限り少なくしていくための課税です。今回の新しい評価方法は、相続税評価額と市場価格との乖離を是正することで、適正な再配分に近づけるための施策と言えるでしょう。

最高裁判決が注目を集める

2022年、現行の路線価等に基づく評価によって相続税を申告した相続人が最高裁判決で敗訴したことは大きな注目を集めました。被相続人が生前約13億8,700万円で購入し、相続した2棟のマンションを、相続税申告で従来の評価方法によって約3億3000万円と相続税評価額を算出し、購入時の借り入れと相殺して相続税は0円と申告。ところが、これに対して国税側は不動産鑑定に基づくべきだと裁判となり、最高裁までもつれ、国税側の勝訴となりました。
結果的に該当マンションは約12億7000万円と再評価され、相続人には約3億円の追徴課税が課せられました。相続税が0円から3億円となったことも衝撃的でしたが、従来の路線価評価ではなく、不動産鑑定に基づいた評価が採用されたことも大きな関心事となりました。

そして国税庁は2023年10月6日に、「居住用の区分所有財産の評価について」という法令解釈通達(2024年1月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得する財産の評価に適用)を公表しました。
これにより、特にタワーマンションと呼ばれる高層マンションの相続税評価額が上昇することが予想されます。
マンションにおける乖離は2.34倍と前述しましたが、タワーマンションの場合はさらに大きく、現実に1億円で購入した場合、評価額は2500万から3000万ぐらいでした。それが、2024年1月1日以後に相続、遺贈または贈与した場合、6割、つまり約6000万に評価が上がる(条件によって異なります)ということになります。そういう意味では、対策の効果は半減します。ただし、半減ですから、効果がまったくなくなるわけではないということになります。

対象不動産

新たな評価方法となる対象は、タワーマンションだけではなく、区分所有不動産(いわゆる分譲マンション)で居住用の専有部分があるものです。ただし以下の不動産は除かれます。

  • 「区分所有補正率」の適用対象外の物件
  • ・課税時期において区分建物の登記がされていないもの
  • ・事業用のテナント
  • ・一棟所有の賃貸マンション
  • ・低層の集合住宅(地階を除く階数が2以下)
  • ・二世帯住宅(居住用の専有部分一室の数が3以下で全て当該区分所有者又はその親族が居住)

つまり、今後も1棟売りの賃貸建物、収益物件、これの評価方法は変わりません。今回の対象は、区分所有登記をした物件に限定されているため、1棟売りの賃貸マンションや賃貸住宅は区分所有登記されていませんので、その評価方法の対象にはなっていません。
しかし、その場合は、総則6項という、国税庁長官が許可を出して、財産評価通達ではなく鑑定評価などで計算した時価で評価を行うという制度は変わりませんので、極端な税務対策は行わないほうが良いと言えます。

改正案による評価方法の変更点

一般的に、市場価値はタワーマンションの方が低階層のマンションに比べて高いと言われていますが、今回の改正案では、この傾向を評価額で正すために、新たに「乖離率」や「評価水準」という指標が計算式に盛り込まれました。新しい評価額の計算式(基本形)は、以下の通りです。

現行評価額×評価乖離率×評価水準(最低評価水準0.6)

乖離率とは、前述したように市場価格と相続税評価額との乖離を表すものです(「乖離率=市場価格÷相続税評価額」)が、具体的には、国税庁の資料で次のように示されています。(図1のグラフ参照)

  • ・平成28年:2.30
  • ・平成29年:2.40
  • ・平成30年:2.34

この数値は、数値が高いほどその差が大きいことを意味しており、タワーマンションなどの高額不動産では、この乖離が大きくなる傾向にあります。

評価方法の見直しのイメージ

国税庁の資料によれば、評価方法の見直し前と見直し後のイメージは次の図のようになります。一戸建ての場合、相続税評価額は市場価格の約60%となっているため、60%に満たない分譲マンションは、60%になるまで相続税評価額を引き上げられます。これによって一戸建てと分譲マンションの評価額が公平になるように図られています。

図2:評価方法の見直しのイメージ

出典:国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について

今後のタワマン相続対策は新基準に対応を

この新たな評価は、新たに購入されたマンションだけではなく、現在既に所有しているマンションについても、令和6年1月1日以降の相続等により取得した場合には適用されます。ですから、相続財産に区分所有マンションが含まれている場合には、改めて相続対策を再検討する必要があるかもしれません。
また、将来の相続対策としてマンションの取得を検討していた人も、計画を見直す必要があるかもしれません。
前例のない対応になる可能性もあり、専門家に相談しながら、対策を検討することをおすすめします。

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