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コラム vol.513
  • 不動産市況を読み解く

最新の空き家の現状と今後の見通し~空き家問題の現状を読み解く~

公開日:2024/07/31

国の基幹統計のひとつである「住宅・土地統計」は1948年から始まり5年に1度調査・公表されています。最新の調査(第16回調査)は2023年に行われ、2024年4月30日に集計結果(速報)が総務省より公表されました。調査内容は、住居形態、土地利用容共、所有関係など多岐にわたりますが、速報ではこのうち全国と都道府県の総住宅数と空き家数などが先行して公表されました。今回のレポートでは、最新の住宅総数と空き家の状況を解説します。

世帯数増加とともに増え続ける総住宅数

2023年10月1日(調査時点)における我が国の総住宅数は6502万戸、前回調査(2018年)と比べて261万戸増加(プラス4.2%)しました。調査開始以来、住宅総数は一貫して増加しており過去最多となっています。

図1:総住宅数 増加率の推移(2003年~2023年)

総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」より

図1は、過去5回分(2003年~23年)の増加率の推移を示したものです。前回調査では増加率が大きく下がり2.9%でした。今回は増加率が増えていることが分かります。背景には世帯数の増加(主に単身世帯数の増加)があると思われます。
さらに、平成に入って初めての調査年だった1993年は4588万戸でしたので、今回調査と比較すればこの30年間で1914万戸増加、総数は約1.4倍となったことになります。
都道府県別にみれば、住宅総数は概ね世帯数に連動しますので、東京都が最も多く、820万戸で前回調査から6.9%増えています。次いで大阪府493万戸、神奈川県477万戸となっています。前回からの増加率でみれば、沖縄県がトップで7.2%となっています。我が国ではすでに人口減少が進んでいますが、この5年間で住宅数が減少した県は、青森県・秋田県・高知県・長崎県の4県だけとなっています。

住宅総戸数の今後の見通し

人口減少が続く中で、今後の住宅総数は増えるのでしょうか。
近年の新設住宅着工戸数の動向では、2023年の年間総数や2024年の月々の総数は減少しています(ただし、貸家の着工戸数は、概ね横ばい基調)。しかし、国立社会保障・人口問題研究所の将来予測では、単身世帯の増加などの理由により世帯数は2030年頃まで増加する見通しです。住宅の需要は世帯動向の影響を強く受けますので、しばらく住宅需要は大きな変化なく続くものと思われます。そのため、総住宅数は今後、増加のペースは落ちる可能性はあるものの、増え続けるものと思われます。

空き家総数は増加、空き家率はこの10年横ばい

注目の空き家数ですが、最新の調査では、空き家総数は約900万戸(899.5万戸)、空き家率は13.8%となりました。空き家数・空き家率とも過去最高となっていますが、空き家率をみれば、2013年調査13.5%、2018年調査13.6%、2023年調査13.8%と、ほぼ横ばいが続いています。ただし、一貫して空き家数は増えており、1993年からの30年で見れば約2倍となっています。
ちなみに、都道府県別にみれば、空き家率はほぼ横ばいか僅かずつ上昇している県が多くなっています。空き家率が高いのは和歌山県と徳島県が21.2%、次いで山梨県が20.5%となっています。
一方で全国11の府県では空き家率が減少していることは、もう少し注目を集めてもいいのではないでしょうか。

空き家率は見通しを大きく下回っている状況

図2:総住宅数と空き家数及び空き家率の推移・予測

実績値は総務省「住宅・土地統計」、予測値は野村総合研究所資料より作成

図2は、1978年からの総住宅数と空き家数、および空き家率の実績値と将来予測を示したグラフです。実績値は総務省(本調査結果)で、将来予測は野村総合研究所の資料(2024年6月13日公表)を基にグラフを作成しています。
前回調査(2018年調査)に基づく、野村総合研究所の2023年の空き家率の見通しは、16.9%でしたが、結果は13.8%と予想を大きく下回りました。また、同予測では2033年の空き家率の見通しは30.2%でしたが、今回調査に基づく予測(2024年6月13日公表分)では、18.3%と大幅に低い予測に変更されています。理由としては、世帯数の予想以上の増加に伴い、「居住世帯ありの住宅」(=本調査における、空き家ではない住宅のこと)が増加しているためと考えられます。
1990年代から2008年調査までは、数・率ともに急に空き家が増え、さらに「これから20年くらいで空き家が一気に増える」とのシンクタンクの予測が出たこともあって、メディアでも大きく報道されました。このころ言われ始めた「空き家問題」ですが、ここ10年の調査(2013年・2018年・2023年調査)では、確かに実数は増えています。「徐々にペースは落ち着き、改善されつつある」というのが正しい表現だと思います。

「空き家」とはどのような住宅なのか?

そもそも、「空き家」とはどのような住宅でしょうか?一般的には、「誰も住んでおらず、使われず、放置されている住宅」のイメージでしょう。しかし、「住宅・土地統計調査」における空き家は、もう少し広い意味を持ちます。
居住世帯のない住宅のうち、「一時現在者のみの住宅」(例えば、昼間だけ使用、交代での寝泊まり用)と「建築中の住宅」を除いた、「居住世帯のない住宅」が空き家とされます。
具体的には、空き家にカウントされる住宅は、4つのカテゴリーに分かれ、この4つの合計が「空き家数900万戸、空き家率13.8%」などと発表されている値です。

  • ①賃貸住宅の空き家(=空室)
  • ②売却用住宅の空き家(=未売却物件)
  • ③2次的住宅(=別荘や仮眠所など)
  • ④「賃貸・売却及び2次的住宅を除く空き家」(=長期不在の住宅)です。
  • ※最後の④は、前回調査までは「その他の住宅」という分類でしたが、今回調査結果からは、「賃貸・売却及び2次的住宅を除く空き家」という呼び方に変更されました。

先に述べた、一般的な空き家のイメージ、「誰も住んでおらず、使われておらず、放置されている」は、④に該当するもので、以下では、「狭義の空き家」と呼ぶことにします。

都道府県別では4つの府県で狭義の空き家率が改善

空き家のイメージである、「狭義の空き家」は最新の調査では385万戸、狭義の空き家率は5.9%、2018年調査では349万戸で5.6%、2013年調査では5.3%となっています。

図3:狭義の空き家数の5年ごとの増加数(2003年~2023年)

総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」より

狭義の空き家増加数は2003年~2013年の間は50万戸を超える増加数でしたが、今回の増加数は、前回調査比で36万6千戸増となっています。2013年と2018年の増加数は30万4千戸でしたので、この5年間では少し増えましたが、2003年~2013年に比べて増加数は少なくなっています。
狭義の空き家率が最も少ないのは東京都で2.6%(前回調査では2.3%)、続いて神奈川県で3.2%(前回調査では3.3%)、続いて沖縄県4.0%(前回調査では4.1%)、福岡県4.6%(前回調査では4.9%)となっています。
人口が増えている地域や大都市部では狭義の空き家の割合はかなり少なく、前回調査より割合が減少している県は4県あります。その一方で人口減少が顕著な地域では狭義の空き家率は上昇しています。
このように、経済活動が活発な都市部などでは、狭義の空き家増加には歯止めがかかってきています。その背景として、多くの地域で、新しい開発工事、あるいは再開発工事が進み、空き家を含めた一体開発が進んでいること等が要因と考えられます。加えて、空き家対策特措法の施行も効果が出てきているものと思われます。

賃貸住宅の空室も「空き家」にカウントされますが、最新の調査では「賃貸用の空き家」は443万戸、前回調査では433万戸でしたので10万戸の増加、増加率は2.3%となっています。賃貸用の空き家だけでは、空き家率は6.8%で前回調査では6.9%でしたので、こちらは多少改善されています。

空き家問題は解消に向かうか。法律の制定が進む

「空き家率」の上昇ペースが徐々に緩やかになっている要因の1つに、空き家に関する法律の整備が進んでいることがあげられます。平成26年(2014年)公布された「空き家対策特別措置法」は、翌2015年2月26日から施行され、その後に改正もされ、特定空き家(放置すれば倒壊などの危険が考えられる空き家)に対する対応が強化されています。
この法律の中で、空き家のなかでも放置すれば倒壊するなど著しく保安上おそれのある、「特定空き家」が定義され、特定空き家においては、「立ち入り調査をしたり、場合によっては除却などの措置を勧告したりできる規定」(14条)が定められました。
また、2024年4月1日からは、「相続登記の義務化」がスタートしました。この法律は、所有者不明土地が増える最大の要因であり、放置された空き家が増える要因とされていた「相続時未登記」に対して、「登記を義務」にすることで、これを防ごうという狙いです。

相続等で使わなくなった住宅(=空き家)を抱えている方々にとっては、今後その物件をどうするかは大きな課題です。空き家の対処について悩んでいる方々は、まずは大和ハウス工業のような住まい・土地活用の専門家に相談するとよいでしょう。

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