賃貸住宅経営で固定資産税はどう変わる?
公開日:2024/09/30
更地にしておくと固定資産税が高く、住宅や賃貸住宅を建てると固定資産税が低くなるという話はよく耳にされると思いますが、これは、住宅(賃貸住宅)用地や建物に対して、さまざまな特例措置があるためです。更地の場合と住宅(賃貸住宅)を建てた場合の固定資産税の違いを見ていきましょう。
更地の場合の固定資産税
更地の固定資産税は、次の計算式で算出します。
固定資産税=固定資産税評価額×税率(1.4%)
(固定資産税評価額=地価公示価格×約70%)
このように、固定資産税評価額に税率1.4%をかけて算出できます。更地の固定資産税評価額は、原則的に地価公示価格の約70%を目安に決められています。
住宅用地にかかる固定資産税の軽減措置
固定資産税の評価をする際、土地は、住宅や賃貸住宅、マンションなどの敷地として利用されている土地「住宅用地」とそれ以外の工場やオフィスビル、店舗などの敷地として利用されている土地「非住宅用地」の2つに分類されます。そして、更地は非住宅用地に分類されます。
「住宅用地」は、固定資産税の税負担を軽減(住宅用地の軽減措置)するため、下記のような特例措置が適用されています。
土地区分 | 特例措置内容 |
---|---|
小規模住宅用地 (一戸あたりの面積が200m2以下の住宅用地) |
固定資産税=固定資産税評価額×1/6×税率(1.4%) 都市計画税=固定資産税評価額×1/3×税率(0.3%) |
一般住宅用地 (一戸あたりの面積が200m2を越える住宅用地) |
固定資産税=固定資産税評価額×1/3×税率(1.4%) 都市計画税=固定資産税評価額×2/3×税率(0.3%) |
小規模住宅用地とは、住宅1戸につき200m2以下の住宅用地のことで、その場合、課税標準額の1/6とする特例措置があります。小規模住宅用地の特例は住宅1戸につき200m2までの部分が対象となりますので、400m2の住宅用地に住宅が2戸ある場合は400m2に特例が適用されます。
一般住宅用地とは、1戸あたり200m2を越える住宅用地のことで、350m2の住宅用地に住宅が1戸ある場合、200m2分が小規模住宅用地で、残りの150m2が一般住宅用地となります。その150m2分の住宅用地の課税標準額は1/3となります。
都市計画税についても、同じく200m2以下の小規模住宅用地について税が1/3になる軽減措置があり、「固定資産税評価額×1/3×0.3%」となります。都市計画税は、小規模住宅用地と一般住宅用地では軽減される割合が変わり、200m2を超えた部分については、「固定資産税評価額×2/3×0.3%」となります。
この特例措置は賃貸住宅を建てた場合も適用され、賃貸住宅の場合は「200m2×住戸数」の面積が小規模住宅用地として認められます。200m2を超えた部分については、住宅の場合と同様、一般住宅用地としての扱いとなり、固定資産税は「固定資産税評価額×1/3×1.4%」で計算され、税額は1/3となります。
このように、住宅用地は特例措置が適用されるため、適用のない更地と比較して、固定資産税が低くなるわけです。
新築住宅にかかる固定資産税の軽減措置
建物においても新築の場合は特例措置があります。
一般住宅分 | |||
---|---|---|---|
住宅の種別 | 期間 | 減額割合 | 対象床面積 |
一般の住宅 | 3年度分 | 1/2 | 居住部分に係る床面積で、120m2が限度(120m2を超えるものは120m2相当分まで) |
3階建以上で耐火構造の住宅 | 5年度分 |
長期優良住宅分 | |||
---|---|---|---|
住宅の種別 | 期間 | 減額割合 | 対象床面積 |
一般の長期優良住宅 | 5年度分 | 1/2 | 居住部分に係る床面積で、120m2が限度(120m2を超えるものは120m2相当分まで) |
3階建以上で耐火構造の長期優良住宅 | 7年度分 |
総務省「固定資産税」Webサイトより
特例内容は一般住宅と長期優良住宅で異なります。一般住宅の場合、適用期間は3年間。3階建て以上のマンションや、耐火・準耐火構造住宅の場合は適用期間が5年間です。長期優良住宅とは、長期に使用するための構造や設備を備えている住宅(※)のことで、特例の期間がそれぞれ2年ずつ長くなります。
(居住用部分の床面積が50m2以上280m2以下)
※長期にわたり良好な状態で使用するために、大きく分けて以下のような措置が講じられている住宅を指す。
- 1.長期に使用するための構造及び設備を有していること
- 2.居住環境等への配慮を行っていること
- 3.一定面積以上の住戸面積を有していること
- 4.維持保全の期間、方法を定めていること
- 5.自然災害への配慮を行っていること
- 「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」より
これは、賃貸住宅の場合も同様で、賃貸住宅を新築で建てた場合(床面積が40m2以上280m2以下)、床面積120m2までの部分の税額が1/2になります。
この特例措置は、2024年度の税制改正によって適用期限が2年間延長され、2026(令和8)年3月31日まで適用されます。
固定資産税の軽減措置の注意点
固定資産税の軽減措置を受けるためには、不動産取得の翌年1月31日までに、所有者が市区町村の窓口に申告書を提出する必要があります。申告しなければ適用されません。不動産を取得した翌年の1月31日を過ぎると軽減措置を受けることができなくなります。
提出場所 | 提出物 | |
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市町村役場 固定資産税住宅用地申告書 |
市町村役場 | 固定資産税住宅用地申告書 |
新築住宅特例を受ける場合 | 市町村役場 | 固定資産税減額申告書(新築住宅) |
国からの軽減措置を含め、周辺状況の変化や取引相場の変動で固定資産税の税額は変化していきます。固定資産税に関係する情報は賃貸住宅経営の収支にとって重要です。普段からの情報収集を欠かさないようにしておきましょう。