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コラム vol.527
  • 日本社会のこれから

社会貢献としての省エネルギー賃貸住宅、ZEH-M(ゼッチマンション)

公開日:2024/10/31

賃貸住宅経営の目的のひとつに、社会環境の改善や地域問題の解決という社会貢献の側面があります。エネルギーを創り、省エネルギーにつながる設備を導入することで、使用電気量を削減し、その結果脱炭素につながるZEH-M(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス マンション)仕様の賃貸住宅を提供することも社会貢献のひとつと言えます。

ZEHの実施状況

一般住宅の場合は、ZEH(ゼッチ)と呼び、国は2025年4月に新築住宅の省エネ基準適合の義務化を目指していますが、経済産業省 資源エネルギー庁「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会 2023」によれば、「2022年の注文戸建住宅のZEH普及率は33.5%と一定程度普及が進むも、建売戸建住宅は4.6%と依然として低い水準」としています。

一方、賃貸住宅においては、「ZEH-M(ゼッチマンション)」と呼ばれ、少しずつ浸透しているようですが、実態はどうでしょうか。
ZEH-Mとは、環境に関する一定の基準をクリアした集合住宅を指し、戸建住宅のZEHと同様に省エネと創エネの両立による、エネルギーの自給自足を目指した賃貸住宅のことです。ZEH-Mでは削減量の基準値によって、「ZEH-M」「Nearly ZEH-M」「ZEH-M Ready」「ZEH-M Oriented」と、4つの区分が規定されています。
経済産業省 資源エネルギー庁の上記資料によれば、2022年度の集合住宅供給戸数におけるZEH-M実施率は、ZEHデベロッパー実績報告によると約39.3%(112,956戸/287,134戸)であり、2030年目標の達成に向けて更なる普及促進が必要としています。

賃貸住宅経営で、ZEH対応とするメリット

賃貸住宅経営を行うにあたってZEH仕様とすることで、次のようなメリットがあると考えられます。

①オーナー、ご入居者双方にとってメリット

2021年に一般社団法人 環境共創イニシアチブが行った『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会 2021』で公表した、マンションオーナーを対象としたアンケート結果によれば、「夏・冬の期間においてZEHマンションを建設したメリットはありましたか」という問いに対して、「空室が少なかった(早期に入居者が決まった、退去者が少なかった、の合計)」との答えが、夏季では全体で88.9%、冬季では93.3%でした(複数回答)。ZEH対応の賃貸住宅は、稼働率が向上することで、オーナーにとって収益面でも効果があるようです。

  • Q:夏・冬の期間においてZEHマンションを建設したメリットはありましたか?

  • 一般社団法人 環境共創イニシアチブ『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会 2021』より作成

また、同資料にあるように、ご入居者の満足度が高かったという意見も多く、ご入居者にとってもメリットがありそうです。
ZEH仕様の賃貸住宅では、高い断熱性能と高性能省エネ設備、そして太陽光発電を利用することで毎月の光熱費の低減が期待できます。建物の断熱性が高くなることで、寒暖の差が少なくなり、快適性が増すことにもつながります。

②補助金の活用

低層(3階以下)ZEH-M促進事業概要

事業予算 18億円(予定)
申請者の要件
  • 次のいずれかに該当
  • ・ZEHデベロッパーに登録されている建築主
  • ・ZEHデベロッパーに補助対象建築物の建築を発注する計画を有する建築主
  • ・不動産業を業とする法人で、本事業への累積申請住戸数が25戸以下
対象要件
  • ・住宅用途部分が1層以上3層以下の新築低層集合住宅
  • ・ZEH-Mの定義においてNearly ZEH-M以上を満たしている
  • ・住宅の敷地が、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」第9条第1項の規定に基づく「土砂災害特別警戒区域」に掛かっていないこと
補助金額 40万円/戸(ZEH-Mの種別によらず一律同額)
追加補助
  • 蓄電システムの導入費用のうち、次のいずれかの低い金額
  • ・初期実効容量1kWhあたり2万円
  • ・蓄電システムの補助対象経費の3分の1
  • ・補助金額の上限20万円/戸
  • ※蓄電システムのほか、EV充電設備など環境に配慮した設備も追加の補助対象

参考:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業 令和6年度 低層ZEH-M促進事業

③省エネルギーという社会貢献

冒頭に述べたように、ZEH対応の賃貸住宅は、オーナー、ご入居者双方にメリットがあるだけではなく、再生エネルギーの活用による省エネルギーの実現という地球環境にもやさしい賃貸住宅であると言えます。ZEH対応の賃貸住宅を建てることは、社会貢献のひとつになります。

ZEH普及に向けた今後の取り組み

国はZEH普及に向けて、さまざまな取り組みを表明しています。環境省地球環境局の「2050年カーボンニュートラルに向けた住宅の省エネ化推進について」によれば、「住宅・建築物の抜本的な省エネ(2030年新築住宅・建築物でZEH・ZEB水準の省エネ性能確保など)を実現するため、今後10年で建築物省エネ法等による規制の対象範囲拡大・強化を実施していく」とし、経済産業省資源エネルギー庁においては、「関係省庁と連携しながら、ZEHのさらなる普及を図るための方策を議論するとともに、各種取り組みみのフォローアップや情報の発信についても取り組んでいく」としています。

ZEHマンションを建築できる事業者は、ZEHデベロッパーだけです。地域や仕様によって、適した事業者は異なりますので、収益性、省エネ性能、建築コスト、継続性、アフターフォローなど十分に検討し、パートナーを選ぶことが大切です。その上で、経営する賃貸住宅に合ったZEH仕様の計画を策定するようにしましょう。

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