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2025年の税制改正と住宅価格に与える影響
公開日:2025/01/31
令和7年度分(2025年)の税制改正大綱が12月27日に公表されました。今年の税制改正では、給与所得者に対して、所得税が課税されない給与収入額(課税最低額)が、103万円から123万円へ引き上げられる「103万円の壁」の引き上げが大きく取り上げられました。ここでは、毎年各省庁から要望が出され政府税調が審議した上で決まる税制大綱の中から、住宅・不動産・建築分野で注目の項目を解説し、それが不動産市況に与える影響について考えます。
増える老朽化した分譲マンションをどうするか
高度経済成長期(1955年ごろから1975年ごろまでの20年間の年10%を超える経済成長期)には多くの建築物が建てられました。これらは順次建て替えが行われていますが、その後の1970年代以降にはマンションの建築が増え、今後は築40年を超える分譲マンションが急増します。国土交通省の資料によれば、2030年を超えると全国で築40年を超える分譲マンションは300万戸近くなり、これらをどうするかは、これから多くの分譲マンションで議論となってくるでしょう。具体的には、リノベーション等によって活かして使う、建て替える、など選択肢はありますが、いずれにしても集合住宅は所有権者(区分所有権者)が多く、これらの意思統一は難しくなるものと思われます。
老朽化した分譲マンションをどうするか(建て替えを行う、リノベーション工事を繰り返して、本来のRC(鉄筋コンクリート造)、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)の耐久年数である100年以上使うなど)について、所有者の合意形成、そしてそのアクションがスムーズに進むことは、不動産市況に大きな影響を与えることになります。仮に、あちこちで「なかなか進まない」という状況になれば、マンションを「終の棲家」と考えて保有することがリスクと認識されることになり、マンション価格に大きな影響を与えそうです。そのため、こうしたことが円滑に進む為の法制度の整備、税の軽減措置などが始まっています。
老朽化マンションの再生等の円滑化の為の組合による事業施行に係る特例措置の創設
分譲マンションにおいて、大規模修繕工事を行い、寿命を延ばすことを促進させるための税制として、「管理計画認定マンション等において、長寿命化に資する大規模修繕工事が実施された場合に、当該マンションに係る固定資産税額を減額する特例措置」があります。これは、「工事翌年度の建物部分の固定資産税額が減額(1/6~1/2の範囲内において市町村の条例で定める割合で、参酌基準は1/3)」という税優遇制度です。これが令和7年の税制大綱に盛り込まれ、2年延長されることになりました。
そして、今回の税制大綱では、「老朽化マンション等における区分所有関係の解消・再生のための仕組みに係る税制上の特例措置」が創設・拡充されることが盛り込まれました。
「分譲マンションの所有者が有する区分所有法において、区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み(建物取壊し敷地売却、建物更新(一棟リノベーション)等に適用)が創設されること」を前提に、マンション建替円滑化法において、これら新たな仕組みに対応した事業手続(組合設立等)の創設が検討されています。老朽化マンションの再生、あるいは一棟リノベーション工事(建物更新工事)においては、費用負担の問題が区分所有者間の合意形成の最大の阻害要因となっています。このため、新たな事業手続を活用した再生等を円滑に進めるためには、事業実施のために設立される組合について費用負担軽減が必要ということで、減税処置が行われます。
具体的には、マンション建替円滑化法において新設される、「マンション取壊し敷地売却事業」(仮称)、「マンション更新(一棟リノベーション)事業」(仮称)等の円滑化のため、事業の施行者(組合)に関係する特例を創設し、そこで、「法人税・法人住民税・事業税・事業所税」に対して、収益事業以外の所得の非課税措置が行われます。また、消費税・地方消費税においては、資産譲渡等の時期、仕入税額控除及び申告期限の特例が創設されます。
このような老朽化マンションの再生のための、新たな制度、新たな事業組合の新設、新たな税の特例措置、などが上手く機能して、建て替えや1棟リノベーション工事が促進され、円滑に進むことを望みたいものです。その結果として、マンションの資産価値維持につながり、マンション市況にも良い影響があると思われます。
住宅ローン減税の延長と不動産市況
住宅ローン減税が引き続き延長されます。住宅購入促進のための減税制度は、1972年からの「住宅取得控除制度」以降現在まで、名称や、条件、減税や控除の最大金額などは変わりますが、「住宅の自己保有を促進するための、住宅ローンに関連した減税制度」は、何らかの形で行われてきました。ただ、基本的には「国民が優良な住宅を所有し、そこに住むため」の支援ですが、時には「景気刺激策」の側面もありました。
近年は、住宅価格も上昇していることから、「住宅ローン減税は高所得世帯優遇ではないか」との声もあります。住宅ローン減税の年収要件は2000万円以下となっていますが、これは世帯ではなく個人であり、夫婦共有名義の場合それぞれの収入から減税があります。また、この「住宅ローン減税」は「減税」であり「控除」ではありませんので、かなりの減税インパクトがあり、その影響もあって住宅、とくに都市部のマンション価格は上昇しています。
この「住宅ローン減税」は、令和7年(2025年)も、前年とほぼ同内容で継続されます。
国土交通省の資料によれば、「子育て世帯等の住宅取得環境が厳しさを増していること等を踏まえ」という理由により、住宅ローン減税は、「子育て世帯等の借入限度額の上乗せ及び床面積要件の緩和措置を令和7年も引き続き実施する」とあります。
住宅ローン減税は、住宅ローン残高の0.7%分(上限あり)所得税・個人住民税が減額されます。長期優良住宅では、2023年までは借入限度額(住宅ローン減税対象額)は5000万円でしたが、2024年からは4500万円になりました。しかし、今回の改正でも、「19歳未満の子を有する世帯」又は「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」については、5000万円分が適用されます。また、ZEH住宅は4500万円から3500万円となりますが、「子育て世帯・40歳未満世帯」はそのままとなります。
また、昨今住宅価格の高騰により1戸あたりの床面積は減少傾向にあります。そのため、住宅ローン減税の床面積要件は原則として50m2以上ですが、新築の場合は40m2以上となります(昨年は、2024年中に建築確認を取得した新築に関してのみでした)。この40m2事案の所得制限は1000万円で、変更はありません。
今回住宅ローン減税が延長されたことは、住宅価格上昇傾向に影響を与える可能性がありそうです。