人類の長い歴史の中で、頼もしいパートナーとなった犬。
現代では私たちの生活に信頼や安らぎを与えてくれる犬は、ペットとして人気があります。
おうち時間が増えたことによって、これから飼いたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、犬は元々人間とは違う生き物。
家族として一緒に暮らすには、彼らの本能や習性を把握し、配慮することが大切です。
今回は、犬を飼う前に知っておきたい習性や行動と対策、住まいづくりのポイントについて、
「All About犬ガイド」の大塚良重さんにお伺いしました。
犬の本能や習性について知ろう
犬の先祖はオオカミだといわれ、犬の行動は、その頃の本能や習性に大きく影響を受けています。なので、犬と人が共に幸せに暮らすために、そういった犬本来の本能や習性を知ることはとても大切です。
犬を家族として迎え入れた以上、飼い主としての義務は当然発生します。できれば、犬の欲求には可能な範囲で応えて、満たしてあげたいものですが、それは甘やかすという意味ではなく、やはりお互いが困らない程度の、またお互いの危険を回避するためのルールづくりが求められます。
そこでしつけ=トレーニングが必要になるのですが、強制的に抑えつける、体罰を加える、怒鳴るなどはNG。現在では褒めて伸ばすしつけ法が主流です。トレーニングを始めたばかりの時は、簡単なことから始め、失敗しないように先回りしてサポートしてあげるのがトレーニングのコツです。
できたら褒めて、次のステップへと進みましょう。どうしても飼い主だけの力では難しいこともあるので、プロによるトレーニングを受けるというのも有効な選択肢です。
群れで暮らす
犬は群れで暮らす動物なので、人と暮らす場合も家族を群れとみなして行動するといわれています。飼い主の大人が犬にとっての良き導き手です。お子さまがいる場合は、お子さま、犬共に、お互いの接し方を教えるようにしましょう。
現在は、飼い主が「ボス」にならなければいけない、犬は家族内の「順位」に従う、といった考え方は否定されつつあります。簡単に言えば、群れには父親や母親のようなスタンスの個体がおり、「家族」のような関係性をもって構成されていると考えられるようになってきているのです。
仮に犬が家族内の誰かの言うことを聞かないことがあるとしたなら、それはその人の「順位」が低いのではなく、犬との関係性が薄いためと考えられています。
したがって、犬と暮らすには、犬という動物を理解しようと努め、ルールを教え、自身が犬にとっての信頼できる保護者であり、良き導き手であることが大切となります。
テリトリー意識が強い
犬も人間同様に自分のテリトリーを守ろうとする意識があり、そのためにマーキングをしたり、吠えたりすることがあります。
マーキングにはテリトリーの主張のほか、犬同士の情報交換(匂いで相手の犬の性別や発情しているのかなどを読み取っている)、自分の匂いがすることで安心する、ストレスや不安を感じた時の転位行動(マーキングをすることでストレスや不安を少し解消する)などの意味があると考えられています。
例えば、家に迎え入れたばかりの頃や、引っ越しをした時、新しい家具を買ってきた時などはマーキングをしやすいシチュエーションなので、犬の様子に注意を払ってあげましょう。
家の中でマーキングした時は、匂いが残っていると同じ場所でマーキングしやすくなるので、消臭剤を使うなどして匂いを消し、しっかり掃除をすること。そして、マーキングをしそうな時は、「あっ!」「ノー」と声をかけたり、パン!と手を鳴らしたりして犬の気を引き、マーキングをしなかったら十分に褒めてトレーニングしましょう。どうしてもマーキングが止まらない場合は、マナーベルトを付ける、マーキング防止剤を使う(ただし犬にとって安全なもの)、マーキングしそうな場所にトイレシートや防水シートを張るなどの対策を。
声や表情、動作でコミュニケーションを図り、いろいろなことを伝える
犬は声や表情、動作、行動などを用いて仲間とコミュニケーションをとっていますが、その時々の気持ちや感情も声や表情、動作、行動に現れます。
気をつけたいのは、犬がストレスを感じた時に出すストレスサインです。それには鼻の頭をなめる、体をかく、動作がゆっくりになる、あくびをする、体が震える、体をぶるぶると振る、息が荒くなる、落ち着かない、逃げようとする、耳を伏せて困ったような顔をする、などがありますが、これらが見られたからといって必ずしもストレスがあるとは限らず、その時の状況をよく見て判断する必要があります。
また、ストレスサインを出すことで、そのストレスを解消している場合もあるので、大騒ぎせず、まずは犬の様子を観察することも大切です。
ストレスの原因は音、環境、他者との関係、運動不足などのほか、場合によっては掃除機や電子レンジなどの生活音であることもあり、さまざまです。また、犬によってストレスの感じ方もさまざま。
強い負のストレスは心身の病気につながることがあるので、愛犬にストレスがあると思われる時には、その原因を探り、取り除けるものは取り除き、運動不足が原因であるなら散歩の回数を多くするなど対処してあげましょう。
犬との暮らしにまつわる豆知識をご紹介
犬に関してよく聞かれる話について、Q&A形式でお伝えします。
Q:天井が高く、広々とした空間は落ち着かないって本当?
A:犬の年齢や健康度、環境、状況、犬の性格、飼い主との関係性などによります。静かに過ごせる、出入り自由な犬専用の空間を用意できると理想的です。
犬は元々、寝る時やリラックスしたい時、不安・恐怖を感じる時など洞穴のような囲まれた場所を好む傾向にあります。きっと安心できるのでしょう。群れる動物ゆえに飼い主と一緒にいることを好み、広い空間でも平気で寝たりはしますが、それでも一人でゆったり過ごしたい、何かから逃げたいという時もあるので、犬が自分の意思で出入りできるような居場所があるとよいですね。出入り口以外を布で覆ったケージ、壁や天井で囲まれた小さなスペースなどを用意してあげるといいでしょう。
Q:犬にとって、食事やトイレをじっくり見られるのはストレスって本当ですか?
A:これは個体差があるので一概には言えません。ある程度は見られても大丈夫、という状態が理想です。
食事やトイレの時間は、生き物として無防備な状態ですから、周囲に危険がつきまとう野生動物であるならうなずけます。しかし、犬の場合、毎日一緒に過ごしている飼い主であっても見られるのを嫌がる犬もいれば、家族と一緒に食事をするのが好きで、あまり気にしない犬もおり、犬の性格や飼い主との関係性によると思います。
しかし、健康管理や不測の事態を考えると、食事中に近づけないのは好ましくありません。食事中、お皿に手をかけたり、体のどこを触ったりしても大丈夫なようにトレーニングをしておくことが理想的です。
Q:吠える声が近所迷惑にならないか心配です。防音設備が必要ですか?
A:必ずしもそうではありません。必要以上に吠えないようしつけることが肝要ですが、吠えにくい環境づくりも大切です。しかし、環境や状況によっては防音対策が必要になることもあるでしょう。
東京都環境局のHPによれば、犬が吠える声は意外に大きく90dBを超えることがあります。90dBだと人の怒鳴り声やカラオケくらいのレベルですので、ご近所への配慮が必要です。
犬が吠えるのは警戒や不安、恐怖、寂しさ、退屈、ストレスなど理由があるので、吠えても「ヤメ」の一言でやめるようしつけること、犬が吠えにくい環境をつくることが何より大事となります。
例えば、運動不足からくるストレスで吠えている場合は、散歩や運動を増やすことで吠えが軽減されることがありますし、外の人通りが気になって吠える犬の場合は、犬の居場所を通りが見えない部屋に変えることで吠える問題が改善されることもあります。
愛犬に吠えの問題がある場合は、その原因がどこにあるのかをまずは探りましょう。
一方で、物理的な防音対策が必要な場合は、防音カーテンや防音マットから防音機能をうたうドッグハウスまで販売されていますが、家自体が防音に優れていれば理想的ですね。
Q:一般的なフローリングの床は、足に良くないって本当ですか?
A:滑りやすい床は関節や背骨に影響します。ですから、若いうちから対策をしましょう。
一般的なフローリングは犬にとって滑りやすく、踏ん張りがききづらいため、腰や膝などの関節や背中に影響します。
股関節形成不全や膝蓋骨脱臼などへつながる可能性があり、すでにそうした病気にかかっているのであれば、症状を悪化させてしまいます。子犬や若い犬は平気そうに見えるかもしれませんが、徐々にダメージが積み重なり、のちの不調につながることもあるので対策は必須です。
対策方法としては、ペットを飼っている住宅向けのコーティング剤を利用する、ジョイント式の滑り止めマットを犬の行動範囲の場所に敷く、などが考えられます。
関節への負担を減らすためには、床材以外にも気をつけるべきポイントがあります。一つは、肥満にさせないこと。もうひとつは、特に関節に懸念のある犬や老犬では、ベッドやソファによく上る場合、ステップ台を置いて段差を少なくしてあげるとよいでしょう。また、ごはんを食べるお皿の位置が低すぎると首に負担がかかることがあるので、首の高さに合わせた台の上にお皿を置くようにひと工夫をすることをおすすめします。
犬も人も快適に、幸せに生きる住まいとは
犬と人が暮らしやすい住まいづくりを考える際には、次の4つのポイントが大切です。
1)事故を防ぎ、安全であること
- 脱走したり危険な場所に入ったりしないように、犬のジャンプ力に合わせた高さで作られた柵を、玄関や庭、ベランダ、キッチンに設置する
- 挟まってけがをしないように、勢いよく動かしても、ゆっくり開閉するドアにする
- 電気コードをかじられないように、コンセントを上のほうに設置、配線をカバーし一つにまとめる など
2)犬が健康であること
- 熱中症の予防のため、温度や湿度を常に快適に保てるようにする
- アレルギー予防に配慮した建材を使用する
- 運動不足解消のため、広いリビングで思い切り遊べるようにする、庭に遊び場を作る など
3)犬が快適であること
- 犬が出入りしたい時に自分で出入りできる、専用のドアを設置する
- くつろいでいる時に来客があっても鉢合わせしない動線にする
- 階段下などに、周囲の視線が気にならず、落ち着いて過ごせる広さの場所を用意する など
4)人が楽であること
- 汚れても掃除がしやすい壁材や床材、犬が破っても貼り替えしやすい壁紙にする
- 犬の散歩道具などをしまえる広さ、機能性がある玄関収納を設置する など
この4つのポイントを兼ね備えた設備を多数提案している住まいとしてご提案したいのが、ダイワハウスの「犬と暮らす家」です。
例えば、階段を緩勾配にすることで小さな犬でも上り下りしやすくし、表面をシリコンコートにすることで滑りや転倒を防止。また、犬が安全に、自分で動ける範囲を広くすることで、けがを防ぐだけでなく運動量も確保し、健康的に年を重ねられるのです。
家全体の空調をコントロールする「あんしん空気の家」も、犬に快適な暮らしをもたらすのでおすすめです。全館空調はすべての部屋の温度を一定にするというイメージがあるかもしれませんが、「あんしん空気の家」では部屋ごとの設定が可能。人より涼しい環境を好む犬も快適に過ごせます。
この全館空調を実現しているのが、高断熱で気密性に優れた構造の「xevoΣ」ですが、遮音機能も優れているので、吠え声の音漏れを減らすことが期待できそうです。
また、犬にもハウスダストなどのアレルギーがあるので、家じゅうを空気清浄、抗ウイルス化することでさらに安心。ウイルスなどの有害物質を吸着する吸着性光触媒コーティングは、消臭にも優れています。犬と人、どちらにもうれしい機能がそろった住まいを実現できるといえるでしょう。
まとめ
犬は大切な家族であり、パートナー。飼い主の役割は、犬と人が一緒に、快適に暮らせるようにしつけなどでサポートしつつ、環境を整えてあげることです。特に、犬は1日の大半の時間を自宅で過ごすことになるので、家は重要なポイント。犬と人が快適に過ごせる家づくりについて、考えてみてはいかがでしょうか。
Profile
All About犬ガイド
大塚 良重さん
犬と人との関係を探求し続ける 犬もの文筆家&ドッグライター
犬専門ライター歴25年以上。1頭の犬との出会いが人生を変える。愛犬への感謝を胸に、ライターへと転身した後、犬専門月刊誌や新聞での連載や、取材記事、書籍、一般雑誌、WEB等で執筆。特に犬の介護、シニア犬、ペットロスはライフワークテーマで、「犬と人との関係」に最もアンテナが動く。信条は、犬こそソウルメイト。