テレワークが普及し、住まいの使い方や暮らし方について、
課題を感じる方も増えてきているようです。
昔ながらの日本の和の住まいは「限られたスペースを有効に使うことができる」
「季節の自然を感じながら過ごせる」など、お悩みの解決につながるとともに、
家時間や暮らしそのものをより楽しくするヒントが満載です。
和文化研究家の三浦康子さんに、和の住まいの魅力や活用方法、
現代の生活ならではの快適な住まいづくりについてお伺いしました。
和の住まいが人の心理や暮らしにもたらすメリット
Q:和室で過ごしていると、穏やかな気分になれるのはなぜでしょうか?
三浦さん:「畳にはさまざまな効果があり、人に与える影響が科学的に説明できます。昔の家に和室があったため懐かしさを感じる、という理由だけではないのです。
ひとつめは、香りと色のリラックス効果。例えば、い草※を使用した畳の場合、その香りには、心を鎮めて安らぎをもたらす効果があり、畳の色味には、筋肉を弛緩させる作用があります。普段住んでいる家に畳の部屋がない方も、旅館など和室で過ごすと体の力がふっと抜けて、リラックスできるといったことはありませんか?
※最近では、い草以外に和紙などを使用し、ダニやカビの発生を抑える機能を持った畳もあるため、素材や色味の選択肢が広がっている。
ふたつめは、空気を清浄に保つ効果。い草の断面を見てみると小さな空洞がたくさんあります。これがフィルターの働きをしてくれるため、すがすがしい空気を感じることができるのです。
また、日本の建築は畳以外にも、木や紙など自然由来の素材を多く使っていますよね。住まいの中で自然のぬくもりを感じることができるのも、心の安らぎにつながっています」
Q:畳は日本の住まいに合っているというのは、どういうことでしょうか?
三浦さん:「気温や湿度が季節によって大きく変化する日本の気候風土や、日本の住環境の課題を解決してくれます。
畳は断熱性に優れているため、夏は涼しく、冬は暖かく、室内の冷暖房効率を高めてくれるのです。また、畳は湿度調整もしてくれます。畳1枚分で500mlもの水分を吸収できるため、湿度が高い梅雨の時期には室内の湿度を下げ、カビなどの発生を防いでくれます。反対に乾燥が気になる冬には畳の中に含まれている水分を空気中に放出します。
また、畳は内部の層がクッションになっているので、衝撃や雑音を吸収してくれます。お子さまが元気に遊んでも音が響きにくく、ちょっと転んでしまったとしても比較的安心です。1戸あたりの面積が限られ、住宅が密集していて周囲への音に気を遣う日本の住宅を、静穏な環境に保ってくれるのです」
家族が集まる空間にも、ワークスペースにも。
和室が解決する住まいの課題
Q:古くからの和室での暮らし方は、
現代の生活にどのようなヒントを与えてくれるのでしょうか?
三浦さん:「日本では、限られた住空間を有効に活用する、という工夫をしてきており、これは現代の暮らしを考える上でも参考になります。和室は、TPOに合わせて空間の使い方を変えて使用されてきました。ちゃぶ台と座布団を置けば居間として家族団らんや食事の場、書き物などの作業スペースに。ちゃぶ台を片付けて布団を敷けば、同じ空間が寝室にもなるといった具合に、臨機応変に対応することができます。1部屋が多目的に使用できるので、昼や夜も、来客があった時や家族で暮らす時間も、同じ場所で快適に過ごすことができるのです。
日本の暮らしは『畳む』文化でもありました。西洋のように、家具を据え置きにするのではなく、使うときに家具や布団を出して置き、使わないときは畳んで片付ける。そうすることで、住まいにゆとりが生まれます」
Q:テレワークや子どものオンライン授業など、家族が家で過ごす時間が増えました。和室ならば、どのように快適な使い方ができるのでしょうか?
三浦さん:「和室は独立した個室にも、家族を緩やかにつなげることも、家族団らんの場としても使用できます。和室は直接床に座ることになりますので、目線が自然と低い位置に。このため、子どもと話すときに目線の高さを合わせることもスムーズです。
また、家族の中にお年寄りがいる場合は、療養の場としてもぴったり。リビングとつなげることで、自然なコミュニケーションをとることができ、家族の一員であるという意識が持てて、孤立することを防げます。 もちろん、障子や襖(ふすま)を閉めれば独立した個室にもなりますので、一人で過ごしたい時も快適です」
Q:和室ならではのおもてなしの仕方や、家時間の過ごし方はありますか?
三浦さん:「和室にはシンプルなスタイルが似合います。例えば、お友達や家族とお茶を楽しむ時も、テーブルではなくあえてお盆を畳に置き、お皿の代わりに懐紙(かいし)という和紙を使うと、簡単におもてなしのスタイルができます。懐紙とは、その名の通り懐に入れて持ち歩く紙のことで、昔から、ハンカチ、ちり紙、メモ用紙など様々な用途で使われてきました。
おしゃべりをしていてくつろいだ気分になったら、そのまま横になれてしまうのも和室の魅力。お子さまと過ごす時間も、読書をしたり遊んだり、疲れたら昼寝をしたりと、一緒に何かをするだけでなく、思い思いに好きなスタイルで過ごすことができます。最近は自宅で運動をしたいというニーズも高まっていますが、和室ならヨガやストレッチなども、思い立ったらすぐにできますね」
Q:和室をワークスペースとして使う場合、おすすめのアイテムはありますか?
三浦さん:「和室をワークスペースや勉強のスペースなどとしても活用する場合は、軽くて持ち運べる文机(ふづくえ)がおすすめです。文机というと和風やレトロ、といったイメージがあるかもしれませんが、モダンな印象のものや北欧テイストにも合う、シンプルなものも登場しています。
最大のメリットは持ち運びが楽なので位置変えもすぐできてしまうということ。自宅にワークスペースをつくる時、机をどこに置くか、どこに向けるかで悩んだことはないでしょうか。移動しやすい文机ならば、子どもが遊んでいる時は子どもの様子が見える位置に、カメラを使用するオンライン会議の時には自分の後ろが壁になるように、陽が当たる時間帯は日光を避けられる位置に……と、その時その時で最適な場所に移動することができます。
また使用しない時は部屋の隅に置いておけますし、準備や片付けという動作をすることで、ONとOFFのメリハリもつけられます。ワークスペースとして使わない時は、文机の上に書類やノートパソコンなどを置いて収納棚にするのも良いでしょう」
季節を感じて、暮らしを楽しむ「和のしつらえ」
Q:和室を簡単に、おしゃれに演出する方法はありますか?
三浦さん:「和室の一角に小さな棚などを用意して、しつらえコーナーにすると部屋が一気におしゃれになります。大きな家具などは不要で、30センチ四方くらいのスペースがあれば十分。ここには、高価なとっておきのものを飾るというよりも、季節感のある小物、手ぬぐいや風呂敷、ポストカードなどを気軽に飾るというイメージです。
お気に入りのものと一緒に自然のものを飾ると和室の雰囲気に合いますし、季節を感じられます。例えば落ち葉や木の実、枝、石など、外をお散歩していて目にとまったものを拾って持ち帰って飾るのも良いですよ。
和風ではないテイストのものも、竹かごなどのナチュラルなものと組み合わせて飾ると、空間にしっくりとなじみます。陶磁器や鉄瓶など、普段の生活で使う暮らしの道具も、飾りとして活用できます」
Q:和室のしつらえを変えることで、どのような楽しみができるでしょうか?
三浦さん:「季節やその時の気分に合わせてしつらえを変えると、リフレッシュになります。お子さまと一緒に『今度は何を置いてみようか』と考えるのも良いですよ。鏡餅や小さなひな人形など、季節の行事を楽しめるアイテムを置いてみるのもおすすめです。折り紙で端午の節句の兜(かぶと)、七夕の笹飾りなどを親子で作ってみるとコミュニケーションにもなりますね。
和室のお掃除用に掃除機ではなくてほうきを1本用意して、お子さまに担当してもらうのも良いです。家具を少なくシンプルな空間にしていればお掃除しやすく、お手伝いもしてもらいやすいです。
こういったことは、日々を丁寧に生きることにつながるのではないでしょうか。丁寧な暮らしというと、几帳面である・しっかりやる、というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、もっと楽に考えて、『日々の中で気づいたことを取り入れてより快適に暮らす』『そのための工夫を楽しむ』といった意識で楽しむことが大切です」
和室で子育てを楽しみ、次世代に和の文化をつなげる
Q:和室での暮らしや和のしつらえを楽しむことで、
子育てにはどんな良い影響をもたらすのでしょうか?
三浦さん:「しつらえスペースを意識して取り入れることで、季節や日本の文化を楽しむだけでなく、思い出や愛情の記憶を積み重ねることができます。
毎日を忙しく過ごしていると、季節の変化や行事は見逃してしまいがちですよね。四季や行事を気にかけ、手間暇かけて思いをこめて飾りつけたということは、子どもたちの中で単なる思い出にとどまらず、家族から愛された記憶として残っていきます。その記憶は子どもたちが成長した後も、季節が巡るたびに思い出され、一生続いていくことになるでしょう。
さらに、成長した子どもたちから次の世代の子どもたちへと受け継がれていくことで、文化が継承されることにもつながっていきます。家庭の行事は、高尚な目的やかしこまった伝統によるものではなく、家族が幸せに暮らすための物事ばかりです。楽しみながら『なぜこの行事があるのか』といった文化の背景や飾りの意味などを知り、代々伝承されていくことが、理想的だと感じます」
人と人をつなぐ和の住まい
Q:和室を住まいに取り入れる場合、
どのような工夫をしたらさらに快適になるでしょうか?
三浦さん:「現代では椅子での生活が主流となっているため、正座やあぐらが苦手、という方が増えていますね。そういった場合は、掘りごたつを設けるのがおすすめです。長時間座る時も快適に過ごすことができ、洋室と和室のいいとこどりに。掘りごたつ部分は板でふさいでしまえば普通の床になるので、通常の和室同様に、フレキシブルに空間を使えます。
窓辺には簾(すだれ)やよしずなどを使用し、風を室内に取り入れると自然を感じられ、一気に涼しげになります。その中で子どもたちを遊ばせたり、仕事をしたりすれば、家で過ごす時間がさらに心地よいものになるでしょう。
今は、よりモダンでインテリアにも合わせやすい琉球畳や、バリエーション豊かなカラー畳もあるので、お子さまの成長や好みの変化に合わせて変えてみるのも面白いですよ」
Q:和室に限らず、和の住まいの魅力はどのような点にありますか?
三浦さん:「和の住まいの大きな特徴は、開口部が広く、外に向けて開かれているところです。家族や地域とのつながりが希薄になり、孤立が課題となっている現代において、そういった住まいのあり方は、人と人がつながっていく上で、とても大事なポイントではないでしょうか。
もちろん、住まいにはプライバシーが欠かせませんが、例えば、外からの視線を避けるために遮光カーテンを使用すると、外からは中の様子が全く見えなくなり、人がいるかどうかすらわかりません。しかし、和の住まいで使用されている障子であれば、人影だけは見えるので、プライバシーは守られながらも、なんとなく「人がいる」ということは外に伝わります。
近年は、近所付き合いがなく、隣にどんな人が住んでいるかわからない、という声も多く聞かれます。障子であれば、障子越しに影が見えることで、中の人の顔まではわからなくても、なんとなく安心感や親近感を抱くことができますし、室内からも外の雰囲気がうかがえます。
お隣の庭がふと見えたとき、お隣さんがいるなと気づいたら声をかけて縁側でお茶をする、というのも昔ながらのコミュニケーション。障子を閉めれば住まいの中は見せずに済み、縁側がアウトドアリビングとして住まいと外をつなぐ社交場の役割を果たすわけです」
従来の日本家屋と現代の技術が融合した、
ダイワハウスの住まい
ここまで、和室や和の住まいの魅力を三浦さんにたっぷり教えていただきましたが、従来の日本の木造家屋には、冷暖房効率、耐震性能などの点で課題がありました。
そのため、気密性が高く安全性が高い、機能的な鉄筋コンクリートのマンションなどが人気となった、という流れがあります。
しかし、現代は住まいの技術が進化し、日本家屋の快適さと、省エネや安全性を叶える最新性能、両方を兼ね備えた住宅に住むことが可能となってきました。
日本家屋の良さは広い開口部にありますが、ダイワハウスのxevoΣ和暮らしも開口部が広く、風や自然を感じ、季節の移ろいを住まいの中から楽しめる住まいです。
xevoΣの構造体の強さを活かせば、最大7m10cm※もの大開口にも。これにより、外の景色もインテリアの一部として取り込むような、自然と寄り添う和の暮らしの魅力を一層感じられるでしょう。
- ※幅3m45cmの窓を2枚連続で配置可能です。
- ※プランにより対応できない場合があります。また、中間に柱が入ります。
また、柱が少ない一方で、住まい全体を高断熱化する外張り断熱通気外壁や、独自のエネルギー吸収型耐力壁「D-NΣQST(ディーネクスト)」などを採用しており、快適性や安全性にも配慮しています。
時代とともに受け継がれてきた和室、そして和の住まい。私たちの暮らしが大きく変わっていく今、その魅力にあらためて気づかされます。これまでの暮らし、そしてこれからの暮らし、それらに想いを馳せる中で、人と人がつながるオンオフ快適な「和暮らし」を、ぜひ住まいづくりに取り入れてみてはいかがでしょうか。
Profile
三浦 康子さん
和文化研究家、ライフコーディネーター。All About「暮らしの歳時記」ガイド。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。大学で教鞭(きょうべん)もとっている。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)ほか著書、監修書多数。