01 光と影をあやつる
明るいだけの光は、空間から色彩を奪っていく。まさに家を考える上で重要なのは、季節や時間、天候によって変化する光を導きながら影にも心を配ること。陰影の濃淡こそが、空間に立体感や奥行きを与え、そこにある暮らしと人を美しく引き立てる。差し込む光の心地よさと、そこから生まれる影の落ち着き。夜には照明が映し出す光と影が、美しくそして優しく空間を彩る。
一日に一度だけ差し込む光がつくる美しいライン。
季節によって変わる日の高さと伸びていく影。
それらを全てコントロールし、設計は進んでいく。
トップライトから導く一筋の自然光、やわらかな光が届く寝室などこの家の美しい陰影は価値のある財産となる。
1. 陰影のコントラストを強調し空間の奥行きを演出。 2. 壁に窓をつくらず、天窓を設けて一筋の光を入れる。 3. 空間を木漏れ日で満たすために、植栽と窓を配する。
建物を一つの照明装置と考え、街並みに漏れる光にまでこだわる。
夜に差し掛かるにつれて浮かび上がる家の明かり。
それは室内を照らすとともに街並みに安心感を与える行燈の役割も担う。
壁や天井に反射させた光はやわらかく空間を包み影による落ち着きを演出。
さらに、内と外の連続性にこだわり室内と中庭を一つの光でつないでいる。
外から内に向けてスポットを配置。光のたまりで室内外のつながりを創出。
02 窓できりとる
家が紡ぎだすのは365日の物語。窓の向こうにある風景も、季節や時間によって絶えず変化している。窓は外と内をつなぐとともにその借景を空間の一部に取り込むためのもの。窓により住む人の視線をコントロールし、何を見せるか、どのように見せるかを考えることが空間づくりでは重要となる。窓の切り取り方によって、家はさらに魅力的になり、空間はもっと個性豊かに変わっていく。
窓の大きさ、形、配置は空間の個性をカタチづくる。奥行きを演出するために坪庭に向けた窓を配したり地窓を設けて視線を下げることで天井の高さを感じさせたり。光と風を導くだけではなく窓を考えることで心を満たす空間は生まれる。
1.地窓を設けて地面とつながり、日常の中で季節を感じる。 2. 影のゲートをつくることで、次の空間への期待感を膨らませる。
03 壁であらわす
壁は空間の中で、最も大きな演出力を秘めている。壁をスクリーンとして反射によるやわらかな光をつくり出したり、影を映し出して穏やかな空気を醸し出したり、この仕上がりが暮らしを大きく左右する。外に向けては存在感を表現しながら目隠しとしての役割を与えつつ、内に向けては囲い込むことで安心感を演出。壁をより効果的に用いることで、家はより表情豊かに、より心地よいものになる。
壁を重ねて構成した奥行きと幅のある外観。
壁でクローズすることで強調した空間と中庭のつながり。
窓のない壁面をつくることで実現した、美しい光のグラデーション。
囲うこと、開放すること、光の反射で空間を演出することそれらはすべて壁の役割となる。
シンプルかつ大胆に壁をつくることで、より豊かな暮らしは生まれる。
1. 壁で視線や光を遮り、囲われることによる落ち着きを創出。 2. 壁に光を反射させることで、室内に明るさを導いている。
04 空間をむすぶ
「庭屋一如」という考え方がある。自然と空間をひとつながりとし四季折々の表情を暮らしに招き入れることは、家の重要な要素のひとつ。手に届きそうな庭の木々、遠くに見える風景、刻々と変わる空模様の移ろい、ここにあるのはそんな自然を感じる贅沢、光と影質感と形状、内と外をつなげるディティールにこだわって、住む人が美しく暮らせる家づくりをここから。
※庭屋一如（ていおくいちにょ）：庭と建物が一体となり調和のとれたさま
1. 壁で囲うことで視線の抜けをつくり、空とのつながりを強調している。
室内の天井と軒裏をつなげ意識が空へと通じる空間。坪庭をつくることから生まれる空間の広がり。空を意識することで感じる精神的な豊かさ。内と外、空間と空間がつながることで暮らしはもっと魅力的になる。
四季の移り変わり
その温度や質感を暮らしの中で味わえることが人生を送る上での何よりの魅力。
