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コラム No.162

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急がれるZEB基準クリア~オフィスビル等の省エネ性能に関する調査結果~

公開日:2025/01/31

わが国におけるCO2排出量は、オフィスビルなどの建造物から発生するものが全体の約2割を占めています。国はCO2排出を抑制するため省エネ建築基準に対する規制を年々強化し、地球温暖化対策に取り組んでいますが、進捗度合いは必ずしも順調とはいえないようです。

ZEB基準は達成率19.4%と未達

オフィスビルなどでは、空調や照明、給湯などで消費するエネルギーから多くの温室効果ガスが排出されています。国はこれを2030年までに51%削減(2013年比)する目標を立てています。
この目標達成に向けて、国土交通省のシンクタンクである国土技術政策総合研究所(国総研)は2018年度から、オフィスビルなどの省エネ性能評価指標(BEI)、外皮・設備設計仕様に関する実態調査を実施し公表しています。2024年2月、2022年度に新築・増改築された床面積300m2以上のオフィスビル(計13,175棟)を対象にBEIや外皮・設備設計仕様(断熱性能や空調機器の効率等)を分析した結果を公表しました。

第6次エネルギー計画で2030年度の目標とされている「ZEB」基準(Net Zero Energy Building=ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、その基準から30~40%の削減が目安ですが、現状のZEB基準の達成率は19.4%で、建物用途の「工場」などを除くと14.2%。ZEBは38件(0.09%)、ZEB Ready(50%以上の省エネ)が290件(0.6%)、Nealy ZEB(75%以上の省エネ)は1,463件(3.3%)となっており、今後一層の省エネルギー化の推進が必要な状況です。

図:ZEBの達成状況(工場以外、件数ベース)

出典:国土技術政策総合研究所「非住宅建築物の外皮・設備設計仕様とエネルギー消費性能の実態調査」

省エネ性能評価指標(BEI)は3割程度の達成率

住宅以外の建築物の省エネルギー性能を評価する指標のひとつに「BEI」(Building Energy-efficiency Index:省エネ性能評価指標)があります。国が定めるエネルギー消費量の基準値を「1」とした場合における建築物のエネルギー消費量がいくつになるかを示したもので、エネルギー効率を数値化したものと解釈できます。
オフィスビルでは空調や照明設備などを使うことで電気やガスが消費されますが、その元となるエネルギー量を「設計一次エネルギー消費量」といい、事前に定められた「基準一次エネルギー消費量」という値で割った結果がBEI値。「基準一次エネルギー消費量」は国の省エネ基準がベースにあります。BEI値が1.0以下なら省エネ基準適合と見なされます。
エネルギーは石炭・石油などの化石燃料や水力、太陽光など自然から得られるのが一次エネルギー。二次エネルギーは「一次」を加工・変換して生まれた電気やガスなどをさします。省エネ計算では一次エネルギーを使います。電気やガスが生まれるまでの間に使われるエネルギーは種類が多く、単位も異なるので、一次エネルギー消費量に換算して総エネルギー消費量を評価し、省エネ効果をより明確にするためともいわれています。

国総研が2024年2月に調査した結果によると、BEIの平均値は0.70~0.75。国の基準の3割程度を達成しています。温暖地の事務所ビルにおいてBEI平均値は2018年度が0.76、以降0.74(2019年度)、0.73(2020年度)、0.72(2021年度)と減少傾向にあり、省エネ性能は年々高まっていることが数値に表れています。

住宅・建築物の脱炭素対策の予算強化でGX推進

国は2025年度の予算概算要求枠で「脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の推進」策として、脱炭素効果の高い住宅・建築物の普及や木材利用の促進などを通じた住宅・建築物の脱炭素対策の強化費として1263億円を計上しています。強化・支援策として次の5点を掲げています。

  • (1)ZEH(Net Zero Energy House)やZEB、長期優良住宅およびライフサイクルカーボン(建築物を構成する資材などの製造・運搬・施工・改修・解体で発生するCO2)算定への支援の強化
  • (2)既存ストックの省エネ改修への支援などの強化
  • (3)優良な都市木造建築物などの整備への支援
  • (4)省エネ住宅・建築物の普及の加速に向けた中小住宅生産者などによる体制整備への支援
  • (5)木造の住宅・建築物の担い手の技術力向上などへの支援

政府はカーボンニュートラル(2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロにすること)の実現を目指して、国内CO2排出量の約3割を占める住宅・建築物部門で省エネ・再エネ利用や住宅・建築物の省エネ化や木材利用を促進していく意向です。また、ライフサイクルCO2(建築物の建設で発生するCO2排出量を削減するため建物寿命1年あたりのCO2排出量を算出して評価する手法)についても削減を図り、我が国の脱炭素社会づくりと持続可能な地球社会の発展に寄与していく方針です。

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