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プロパティマネジメントが不動産価値を上げる (1)プロパティマネジメントとは?
公開日:2018/04/27
プロパティマネジメントの登場
ここ十数年、不動産を取り巻く環境は大きく変わっています。特に、ファンドというモデルの成長は、不動産取引市場に、大きなインパクトを与えました。そして証券化、不動産ファンド市場は、リーマンショックという、世界的な金融不況を乗り越え、着実に成長を続けています。
不動産が投資の対象となり、市場が多様化、複雑化していく中で、資産としての不動産価値を高め、投資収益を最大化するためには、これまでにない新たな知識やノウハウが必要とされています。
その重要な任務の一つが、不動産経営に関するさまざまな業務をオーナーに代わって行い、不動産の収益力や不動産の持つ価値を最大化することを目的とする不動産経営代行業、プロパティマネジメント(PM)です。不動産ビジネスを行うに当たって、プロパティマネジメントの導入が、経営戦略上、必要不可欠となっているといっても過言ではありません。
所有と経営の分離
プロパティマネジメントとは、英語で「Property Management」、これの頭文字をとって「PM」と呼んでいます。文字どおり、プロパティをマネジメントするということは、収益の最大化に向けた経営ということになりますが、このプロパティマネジメントが生まれた背景には、不動産における「所有と経営の分離」という考え方がありました。昨今、さまざまな分野の企業経営において、所有と経営の分離(株主と経営者)ということがいわれていますが、不動産業においても、所有と経営の分離の流れは広がっています。
かつては、不動産の収益拡大のための管理業務は、不動産オーナー自らが請け負っていました。メンテナンスや補修が必要になれば設備会社にオーダーし、テナントとの交渉や空室対策なども、オーナーが行うケースが多かったのです。
しかし、不動産業界のビジネスモデルが複雑化し、さまざまなプレーヤーが関係している現在のような市場では、高度な知識と専門性がなければ、容易に対応できなくなってきました。プロパティマネジメントは、時代の変化に応えるべく生まれた、不動産経営のアウトソーシングだといえるでしょう。
プロパティマネジメントの業務
プロパティマネジメントには、さまざまな業務がありますが、代表的な業務は、「ビルディングマネジメント」「リーシングマネジメント」「コンストラクションマネジメント」の三つでしょう。
ビルディングマネジメントとは、不動産資産の中でも、特に建築物に関する収益の確保、運営、管理、改修などをマネジメントする業務です。ビルマネジメントとビルメンテナンスはよく混同されますが、ビルメンテナンスとは、ビルオーナーから依頼を受け、ビルの設備管理・清掃・警備などの建物に関する作業やその管理を行うことです。契約内容によって決められた業務を固定費で行いますから、ビルの収益性や経営とは関係ないといえば関係ありません。それに対して、ビルマネジメントは、ビル経営の収益最大化のための業務ですから、ある意味、経営の代行といってもいいかもしれません。
テナントの募集から契約・管理までを網羅するのがリーシングマネジメント業務です。ビルの稼働率を上げるために、テナント募集の企画から募集、契約までを行うこともあります。各テナントと情報交換によって良好なコミュニケーションを築くのも重要な業務の一つです。
また、コンストラクションマネジメントという業務もあります。コンストラクションとは建設、つまり、大規模なリニューアル工事を指します。品質やコスト、納期の管理だけでなく、経営視点に立脚した、安全性やコンプライアンス、CSR、快適性など、さまざまな観点からマネジメントを行います。
このように、プロパティマネジメントとは、不動産に関わるビジネスサイクルにおいて、さまざまな観点からオーナーをサポートする業務だといえるでしょう。ですから、プロパティマネジメント会社の収益は、ビルや不動産の収益に連動することがほとんどです。収益を上げるために何をするべきか、この観点からビルオーナーに提案します。そのためには、高いレベルの不動産経営の知識に加えて、最新のトレンドを含めて、オーナーにアドバイスすることも必要です。プロパティマネジメント会社は、現在の不動産ビジネスには不可欠の存在だといえるでしょう。