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プロパティマネジメントが不動産価値を上げる (2)プロパティマネジメントがビルをバリューアップする?
公開日:2018/05/31
プロパティマネジメントとは、ビルのオーナーとのパートナーシップによって、そのビルの利益が最大になるように経営を行うことであり、その業務を行うプロパティマネジメント会社とは、不動産オーナーの事業パートナー、あるいはアドバイザーともいうべき存在です。ビルの利益を最大にするためには、価値や魅力があるビルになるように、日々、ビルのバリューアップに努める必要があります。
継続的に収益を上げるために
ビルのバリューアップの目的は、ふさわしいテナントに、適切な価格で、継続的に入居いただくことです。プロパティマネジメントの業務の一つに、テナントの選定と契約があります。どのテナントとの契約が最も収益性が高いのか、継続した収益が望めるのかを検討したうえで、契約を行うわけです。契約中も、コミュニケーションを取りながら、細かいニーズやクレームに対応し、長期的に入居いただけるように(契約解除されないように)、対応します。契約の解除もプロパティマネジメント会社の業務範囲となります。
また、テナントに長く入居してもらうには、ビルの快適性が重要なポイントの一つです。これは、日々のメンテナンスによるところが非常に大きいため、オフィスをどのようにメンテナンスしていくか、どのメンテナンス会社に業務を委託するかを考えます。
このようなテナント各社との関係は、テナントマネジメントと呼ばれていますが、要は、テナントが
満足した状態で入居を続けてもらえるようにすることです。テナントの不満は、「空室率」に直接つながります。
具体的なバリューアップ
具体的なバリューアップの方法については、さまざまな要素があります。ビルの条件によっても、テナント企業のニーズによっても変わりますが、大前提となるのは、テナントのニーズをつかむことと、安全性に関することです。
テナントのニーズを確実につかむ
当然のことですが、テナントのニーズを把握することがスタートとなります。どんなに素晴らしい立地であっても、高価な設備が付帯していても、ニーズと合っていなければ、あるいはテナントのオフィスに関する問題を解決することができなければ意味がありません。逆に、貸す側からしてみたら、条件はさほど良くなくても、テナントが十分に満足しているのであれば、まったく問題はありません。テナントがオフィスビルに求めていること、優先順位が高い課題を的確に把握し、現在そのニーズを満たしているのかを考えることがバリューアップにつながります。
安全性を確保する
安全性はハード面で最優先にすべき課題です。日本不動産研究所の調査によれば、新耐震基準(1981年)以前に竣工したストックが、総ストックの約26%を占めているといわれ、まだ多く街中に存在しています。耐震補強の必要がある場合、早急な対応が必要です。また、避難階段の問題や、通路の問題、駐車場の問題など、安全性の問題は、大きな事故につながりかねません。万が一に備えた安全性の確保は不可欠です。
図:1981年以前に竣工したストック比率(全国における床面積ベース:万m2)
出典:一般財団法人日本不動産研究所資料より
リニューアル
ニーズを把握し、安全性が確保できていれば、バリューアップのために、リニューアルに取り組むことになります。オフィスビルの外観、内観を美しくしたり、景観を考慮したり、あるいは、オフィスビルの耐久性を高めるための改修をしたりすることは、テナントの誘致にとっても、継続して入居してもらうためにも効果的です。ただし、こうしたことは、あらかじめ計画を立て、コストアップにならないように工夫をすることも重要です。コスト高によって、契約の解除があっては本末転倒になってしまいます。
修繕や修理が必要な箇所に関しても、どうすれば効率的、効果的に行うことができるかを考え、計画します。大規模な改修や修復が必要な場合もあります。こうした業務は、「コンストラクションマネジメント」に含まれます。リニューアルは、工事が伴うものだけでなく、演出として実施されることもあります。植栽や芸術品の展示など、デザイン的な印象を良くする方法もあります。
オフィスの魅力を上げる
オフィスビルのバリューアップは、リニューアル工事を行うという単純なことではありません。その先にある、テナントを引き付けるための「オフィスの魅力」を向上させることです。そのオフィスビルで快適に仕事ができ、生産性が上がるようなオフィスを提供すること、この目的を果たさなくてはなりません。
それには、常日頃から、しっかりとテナントとコミュニケーションを取りながら、満足度を上げていく必要があります。まさに、テナントマネジメントをしっかりと行う必要があるわけです。
もちろん、費用をかければいいということでもなく、維持費用のコストダウンを図りながら、効率的に行うことは言うまでもありません。