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高まるBCP(事業継続計画)の重要性(3)経営戦略としてのBCM
公開日:2018/12/25
BCPを競争力の強化施策として
BCPは、危機対応だけでなく、企業価値の向上や平常時における企業競争力の強化につながると期待されており、この面からも積極的な取り組みが求められています。BCPを単に事業継続という観点のためだけではなく、経営者は事業計画の一環として取り組む必要があり、これはBCM(Business Continuity Management)と呼ばれています。
そこで国(内閣府)は、「事業継続ガイドライン第三版 解説書」(平成26年7月)において、BCMは「事業継続計画(BCP)策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動で、経営レベルの戦略的活動として位置付けられるものである」としています。また、同ガイドラインでは、BCMを経営戦略として考えるべきポイントやメリットを次のように紹介しています。
- ・BCMには、経営者のリーダーシップと意思決定が不可欠
- ・代替戦略などの事業継続戦略の多くは経営者が決断すべき経営戦略である
- ・BCMにおける「重要業務の選定」は経営の「選択と集中」と関わることが多い
- ・事業継続能力を高める対策・努力は、業務の効率化、経営資源の見直しにつながることも多い
- ・経営戦略は戦略目的の達成のために経営資源を分配するが、BCMもまた同様である
多岐にわたるBCP対策
内閣府の「平成29年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」(平成30年3月)では、被害を受けた際に有効であったBCMの取り組みを紹介しています(図参照)。 事業を継続するうえで最も効果が高かったのは、(1)「備蓄品(水、食料、災害用品)の購入・買増し」、(2)「災害対応担当責任者の決定、災害対応チーム創設」、(3)「安否確認や相互連絡のための電子システム(含む災害用アプリなど)導入」、(4)「避難訓練の開始・見直し」などです。やはり、災害時に従業員の安全を守ることがBCMの大きなテーマとなっています。 また、「所有資産の耐震・免震工事・耐震固定」や「生産設備の代替施設・建屋の確保又は準備」「本社機能・営業所等の代替施設・建屋の確保または準備」といった、社屋に関することも大企業を中心に幅広く取り組まれています。 経営戦略という点においては、「所有資産(社屋・機械設備等)の点検」「代替仕入先の確保」「代替販売先の開拓・情報収集等」「重要な要素(経営資源)の把握」など、まだまだ多数といえる状況ではありませんが、大企業を中心に、BCMを経営戦略の一環として取り組んでいる例も見られます。
図:被災後の取り組み
「平成29年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」(内閣府、平成30年3月)より作成
このように、単にBCP、BCMといっても、やるべきことは多岐にわたることがわかります。「事業継続ガイドライン第三版」では、BCMを効果的にするには、経営陣自らが率先して実行することが必要であるとし、そのポイントを以下のように紹介しています。
- ・BCMの必要性とメリットを理解し、相応の時間と労力、投資が必要であることも理解したうえで、BCMの導入を決定し、自社の重要事項として実施させること
- ・自社の経営理念(存在意義など)やビジョン(将来の絵姿)を踏まえ、経営と連関の取れたBCMの基本方針の策定、経営資源の割り当て、戦略策定、BCP等の計画策定、対策等の実施、見直し・改善などについて、的確に判断し、実行させること
- BCMに関する議論、調整、改善などに、自らのスケジュールを確保して、積極的に参画すること
- BCMについて利害関係者からの理解を求めること
- BCM及び事業継続能力について適宜、情報発信することにより、取引先等、企業・組織にとって重要な利害関係者に対する信頼構築に努めること
- BCMを通じて、企業価値を高める体制を構築することで、競争力を磨き高め、取引や利益等の拡大を目指すこと
- BCPの発動時において、戦略や対策の選択に的確な判断を行い、予想を超えた事態が発生した場合には、既存BCPを柔軟に活用し臨機応変な判断・対応指示を行うこと
- 出典:「事業継続ガイドライン第三版」(平成25年8月)
なお、自社所有の資産だけでなく、事務所や工場などを賃借している企業であれば、立地条件を含めて、ライフライン(電気、ガス、通信、上水、下水)のバックアップ機能の確保、機器の二重化などを整備したビルや工場を選択することが、事業継続のための大きな選択肢のひとつとなります。