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コラム vol.205-1
  • 土地活用税務コラム

第1回 不動産を買い増すためには、こんな決算書にしよう 法人で収益不動産を購入することがリスクヘッジに!? ~実体験に基づいた法人活用の極意~

公開日:2017/05/31

POINT!

  • ・どのような決算書を銀行に提出するのかが非常に重要となる
  • ・黒字決算は重要だが、キャッシュフローと債務償還年数を意識する

物件を新たに取得する際に、個人で購入すべきか法人で購入すべきか迷われたことはありませんか?
弊社(叶税理士法人)は不動産投資専門の税理士事務所のため、毎月不動産投資家の決算書を作成しています。作成するにあたり、弊社では法人の決算期の前後に必ずお客様と打ち合わせをします。
そして、その打ち合わせの中で、どのような決算書にしていくかを必ず相談しています。
これからもどんどん物件を建てたい方、買い増していきたい方にとって、どのような決算書を銀行に提出するのかが大きなポイントになるからです。銀行にとっては決算書の数字でしか計れない部分があるわけですから、見せ方は重要だと思っています。不動産投資家にとって銀行受けの良い決算書とはどういうものかをお伝えしていきたいと思います。

チェックポイント(1) 黒字決算

最初のポイントとしては、「黒字」の決算書か、「赤字」の決算書かです。
結論から申しますと、絶対に「黒字」決算の方が有利です。
ただ、不動産投資の場合、不動産取得税の支払いや大規模な修繕により赤字決算になってしまう可能性があります。
このような場合、取得税や修繕費用は突発的・臨時的な費用であるため、その費用を除外して損益計算を見てもらうことも可能です。そういった費用が出た場合には、決算書とは別に、臨時的であることを説明できる資料を添付する工夫が必要になります。
また、上記の理由とは別に、親族に役員報酬を出すことで赤字になるケースもあるでしょう。
このような場合、親族間にお金が流れているだけであって、第三者に対して外部流出しているわけではないので、この役員報酬の支払いも損益計算から除外して見てもらうことが可能です。

チェックポイント(2) キャッシュフロー

「黒字決算の方が良いことは分かりましたが、それではどの程度黒字を出せばよいのですか?」という質問をよく受けますが、実は、10万円の黒字も100万円の黒字もあまり変わりません。それよりも、重視されるのが損益計算書から計算できるキャッシュフローなのです。たとえば、次のような決算書を作成したとします。

損益計算書

売上 賃料収入 19,000,000
礼金 1,000,000
合計 20,000,000
経費 広告宣伝費 400,000
減価償却費 7,000,000
地代家賃 1,500,000
修繕費 2,000,000
通信交通費 400,000
水道光熱費 200,000
租税公課 2,000,000
保険料 200,000
管理費 2,000,000
雑費 300,000
支払利息 3,000,000
合計 19,000,000
税引前当期純利益 1,000,000

年間で返済する元本返済額が1,000万円だとします。
税引前当期純利益が100万円出ていますので黒字決算となっています。しかし、この損益計算書からキャッシュフローを計算してみると、

税引前当期純利益100万円+減価償却費700万円-年間の元本返済額1,000万円=△200万円

となってしまうのです。
このような場合、接待交際費や通信交通費や雑費などで、経費から省いても支障のないものを除外して利益を多く出すことでキャッシュフローを改善させることができます。
法人の場合は、減価償却費の計上額が減価償却限度額の範囲内で任意となっていますので、減価償却費の計上額を減らして利益を多くしたとしても、キャッシュフローの計算においては結局利益にプラスされてしまうので意味がありません。

別の視点で考えると、先ほどの例の場合、年間の元本返済額が500万円ならプラス300万になるので、キャッシュフローとして問題ないと思ってもらえるということです。

チェックポイント(3) 債務償還年数

「債務償還年数」を意識するということです。
実は、銀行員がもっとも重視しているのが「債務償還年数」だといわれています。完全には理解できなくても銀行員がどのようにみているのかは把握しておきましょう。

お金を貸す側からすると確実に返済してもらえるかどうか、貸したお金が毎年生み出される現金でどれだけの年数で返済されるのかが重要であり、その指標として会社が利益やキャッシュフローで借入金を何年で返済できるのかを見ているのです。
銀行や定義によって異なりますが、大枠は下記の計算式で問題ありません。

債務償還年数=(借入金-現金)÷(税引後利益+減価償却)

ただし、この計算をする場合の借入金には、役員借入金は含まれませんのでご注意を。
なぜならば通常このような借入金は、ある時払いの催促なしのためです。
それでは、不動産賃貸業に求められる債務償還年数は何年なのでしょうか?

不動産賃貸業は、賃貸物件という資産を購入し、その資産から家賃収入が発生するというものです。その特徴として、資産である賃貸物件を購入するのに多額の資金調達が必要となるため借入も大きくなり、返済までの期間も長期間になるという特徴があります。
賃貸物件は、短くても10年以上、長いと35年間に渡って賃料を確保し返済していくものですので、売上金額に対し多額の固定資産がバランスシートに計上されます。
では、不動産賃貸業での債務償還年数は何年以内がいいのでしょうか。一般的には20年以内をクリアした方がいいです。25年でも問題ない銀行も多いですが、20年であれば、多くの銀行をクリアできます。15年以内までくれば不動産事業の債務償還年数としては優秀です。
通常のビジネスでは10年以内を求められますが、不動産賃貸業のため、20年程度を基準としています。

チェックポイント(4) その他

チェックポイント(1)~(3)以外に、次に挙げるような視点からも数字をみるようにしています。

  • 年間の債務返済比率…借入金の年間返済額<(家賃収入―減価償却費を除いた経費)×30%~40%
  • 税引前キャッシュフロー【家賃収入―減価償却費を除いた経費-ローンの元金返済額】>物件購入時の総投資額×5%
  • 税引後キャッシュフロー【家賃収入―減価償却費を除いた経費-ローンの元金返済額-税金】>物件購入時の総投資額×3%

このようにいろいろな角度から毎年見ることが大切だと思っています。
ぜひ参考になさってください。

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