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コラム vol.231
  • 不動産市況を読み解く

日銀黒田総裁続投決定と金利状況について

公開日:2018/02/28

2月9日、「日銀黒田総裁が再任」という報道が速報で流れました。翌日の新聞の1面にも大きく取り上げられていました。

黒田総裁は2013年3月に総裁に就任して、インフレ2%目標、大胆な金融緩和政策を打ち出し、企業だけでなく、広く国民に積極的な投資、積極的な消費を促しました。
就任当時の不動産市況を振り返ってみると、リーマンショック、東日本大震災などの影響で冷え込んでいた市況がようやく2012年の秋ごろから上向きになりそうな兆しが出始めた頃でした。そんな中で金融緩和政策、低金利政策が導入されましたので、不動産投資、土地活用投資、賃貸住宅経営などを始める方々が増えました。
こうした政策導入以前も長期にわたって金利の基準となる公定歩合は、史上最低水準をでしたが、そこからさらに突っ込んで、日銀が国債を大量購入することで金融機関による貸出金利を下げるなどといった大胆な策を行いました。

■各種金利の推移

  • ※ 基準割引率:都市銀行が自主的に決定した金利のうち、最多金利を採用。
  • ※ 短期プライムレート:1989年以降、都市銀行が短期プライムレートとして自主的に決定した金利のうち、最多金利を採用。
  • ※ 長期プライムレート:みずほ銀行が、長期プライムレートとして自主的に決定・公表した金利を採用。
  • ※ 都市銀行住宅ローン:都市銀行各行の中央値を採用。
  • ※ 長期国債金利:月末終値。35:返済期間21年以上の金利(融資金額9割以下)
  • ※ 繰上返済制限制度無、35年固定

(基準割引率・プライムレート:日本銀行、都市銀行住宅ローン:各金融機関、長期国債:財務省、フラット35:各金融機関、賃貸住宅融資(35年):住宅金融支援機構)

こうしたことが功を奏して、不動産価格は上昇し経済状況は良くなりました。たいていの状況下では貸出金利が低くなると、不動産市況はよくなります。また、図にあるようにTOPIXも経済の好循環の象徴として株価上昇となります。株価の基本は、実績×期待ですので、事業収益が向上することに加えて、今後の期待値があがれば、株価は自然と上がります。

■10年国債利回りとTOPIXの推移(2007年1月~2018年1月)

(10年国債利回り:日本銀行HP、TOPIX:東京証券取引所HPより作成)

日銀の総裁は5年任期となっています。明治期に初代総裁が就任してから130年以上経っていますが、日銀総裁が再任続投される例は極めて珍しく(過去1度のみ、ちなみに期間をあけて2度目の就任は2例あり)今回の黒田総裁の再任続投は、かなり異例と言えます。もちろん、政府政権与党の意向が強いと思いますが、「今の上向いている景気に水を差さない」というスタンスがはっきりと見えます。

そのため、当面は市場の動揺を抑えるため現状の大規模な金融緩和を続けると思われます。ですが、世界情勢により、こうした緩和策は変更を余儀なくされるかもしれません。
例えば、今年の1月に量的緩和を縮小させた欧州中央銀行が、来年にもしも利上げに傾くとすると、すでに利上げを数回にわたり行っている米連邦準備制度理事会(FRB)と足並みがそろうことになります。その時に日本経済が現在のような好調が続いていたとすれば、日銀もまず金融緩和を縮小させ、その後、利上げを検討という金融正常化シナリオが動き出すかもしれません。

しかし、少なくとも今年の秋ごろまでは現在のような大胆な金融緩和策を続けるのではないかというのが大方の見方です。 不動産投資、賃貸住宅投資において気になる金利。「もうそろそろ、金利が上がりそう」と心配する方もおられるかもしれませんが、現状から判断するともうしばらく先かもしれません。

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