2018年基準地価データと賃貸住宅着工数の推移
公開日:2018/09/28
POINT!
・基準地価は地方中核都市や外国人観光客に人気のエリアで上昇
・賃貸住宅着工戸数は減少が続く
2018年基準地価の概要
基準地価は、各都道府県が主体となって、不動産鑑定士が評価した土地価格を国土交通省が取りまとめて発表します。基準地価は民間企業などが土地取引をする際の指標になるもので、その年の7月1日が価格時点(基準日)となります。
今回の発表では、27年ぶりに全用途において前年対比でプラス(上昇)となりました。特に地方中核都市や外国人観光客に人気のエリアなどが大きなプラスでした。商業地(全国)は4年連続のプラスで+1.1%、住宅地(全国)は-0.3%でした。今年も三大都市圏は引き続き上昇していますが、それ以上に四大中核都市(福岡、広島、仙台、札幌)が商業地+9.2%、住宅地+3.9%と大きな伸びを見せました。
(図1)平成30年基準地価(住宅地)
国土交通省「平成30年都道府県地価調査」より作成
図1は、基準地価(住宅地)の前年増減比が大きい都道府県の順に並べたものです。
最も伸びたのは沖縄県で+4%、続いて東京都の+2.3%、福岡県の+1.1%となっています。逆に地価が最も下がったのは秋田県で-2.4%、三重県が-2.0%と続きます。
(図2)平成30年基準地価(商業地)
国土交通省「平成30年都道府県地価調査」より作成
図2は、商業地の都道府県別ランキングです。最も伸びたのは、訪日外国人が多い京都府で+7.5%、同じくアジアからの観光客が多い沖縄県で+7.3%と、どちらも驚異的な伸びを示しています。19の県がプラスになっていることから、大都市だけでなく地方都市でも商業地の地価が上がっていることがわかります。逆にマイナス幅が最も大きいのは秋田県、岩手県、福井県で、人口減少が進み、訪日外国人が少ない県が並んでいます。
4つの地価の特徴
地価といえば、3月に発表される公示地価が最もポピュラーですが、他にも路線価や固定資産税評価額などがあり、それぞれ少しずつ異なる値となっています。
各々の特徴をまとめたのが、図3です。
(図3)4つの地価比較
基準地価以外の地価の価格時点は、すべて1月1日です。基準地価は7月1日ですので、ちょうど中間点として途中経過をイメージすることができます。また、調査の実施機関が4つとも異なっています。
一般的に、公示地価と基準地価は同じ価格水準で、路線価や固定資産税評価額はその70~ 80%程度の価格になっています(例外地点もあります)。このことから、地価は一物四価と呼ばれています(図4)。
地価上昇の勢いは大都市圏では緩やかになって、価格の天井感が見えてきました。地方都市ではまだ好調な不動産市況が波及しており、もうしばらく上昇する見込みです。そのため、2019年の基準地価も上昇の可能性が高いでしょう。
(図4)一物四価(価格はイメージで、例外もあります)
賃貸住宅着工戸数の推移
基準地価の上昇ムードとは逆に、賃貸住宅着工戸数は減少が続いています。
図5を見ると、賃貸住宅(貸家)の着工戸数は、2017年6月から2018年の7月(執筆時最新データ)まで14カ月連続して前年同月比でマイナスとなっています。下げ幅も最大-12.3%(2018年3月)と-10%以上の月が2回ありました。
2017年の貸家着工戸数は41万9397戸でした。2017年の1 ~ 7月が23万7945戸で、2018年の1 ~ 7月は22万4682戸でしたので対前年比-5.6%となっています。このペースで年末までいくとすると、2018年1年間の貸家着工戸数は、 39万6000戸程度になります。
(図5)貸家着工戸数の推移
国土交通省「住宅着工統計」より作成
2019年10月からの消費税増税に向けて、今年の年末あたりから駆け込み需要が起こると予測されていますが、その度合いは少ないでしょう。駆け込み需要を加味しても2018年は40 万戸に届くかどうか程度になるのではないでしょうか。
一方で、ポジティブ要因もあります。図6を見ると、築35 年を超える賃貸住宅がこれから増えるため、これらの建て替えが増えてくると予想しています。そうなると、来年以降も大きく減少せずに賃貸住宅の着工戸数は推移していくものと思われます。
(図6)築年数別 貸家の建築の時期(全国)
総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査」より作成