3つの空室率データの見方と注意点
公開日:2019/01/30
POINT!
・務省統計局「住宅・土地統計調査」は5年に1度公表されるスタンダードな調査データ
・「タス空室インデックス(空室率TVI)」は毎月1回発表され速報性が高い
・「日管協短観」は都市部における景況感をつかむことができる
空室率に関するデータはいくつかありますが、 Webサイトなどで簡単に入手でき、かつメディアなどでもよく採用されているデータは以下の3種類です。
住宅・土地統計調査
まずは、公的なデータである、総務省統計局「住宅・土地統計調査」です。この調査は5年に1度行われています。住宅や土地に関する調査で最も幅広く、最もスタンダードな調査データです。全国・市区町村単位での調査なので、かなり詳細なデータを知ることができますが、いかんせん5年に1度しか公表されませんので、使用する時期によっては「古い」ということもありえます。
最近の調査年は、2008年、2013年、2018年(平成30年)でした。そして、発表は翌年です。つまり、2019年は2018年データの発表の年になります。調査の時点は、2018年の10月1日、今回の調査は1948年の第1回目から数えて15回目です。速報値は、7月末ごろに発表されます。
タス空室インデックス(空室率TVI)
二つ目は、株式会社タスが発表している、「タス空室インデックス(空室率TVI)」です。
民間企業であるタス社が、独自に調査集計して発表しているデータで、毎月1回のペースで発表しています。月1回ということで、速報性が高いデータといえます。
このデータは、メディアなどが「空室率が高いよ!」と伝えるときによく使われるデータです。一般的な感覚の空室率(空室戸数÷物件総戸数)とは少々異なるので、注意が必要です。
具体的には、このデータはあくまで「募集物件の空室を示す指数」です。つまり、満室稼働しており、募集していない物件は分母から外れて計算されます(このデータを採用している日銀もこのことに注釈をつけて、注意喚起しています)。
「純粋な空室率ではない」といえます。
日管協短観
三つ目は、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が公表している、賃貸住宅市場景況感調査=「日管協短観」です。
データの公表ペースは、半期に1度です。一つ目の総務省統計局「住宅・土地統計調査」に比べて、短いスパンで発表されますので、使用しやすいデータといえます。
この、「日管協短観」は、首都圏、関西圏を中心とした不動産管理会社に対して行った調査で、管理会社が管理する戸数を基に算出しています。賃貸住宅の景況感を調査したもので、調査項目は、空室に関することだけでなく、来客数、成約件数、成約賃料の他、さまざまな市場動向を調査・分析しています。
ただし、この業界団体に加盟していない企業のデータは含まれていませんので、全国津々浦々を網羅しているとはいえませんが、都市部における実際の空室率の景況感を最もつかむことができるデータだと思います。
地元業者に実際の状況を確認する
賃貸住宅経営において、建設予定エリアの空室率の現状を知ることは重要です。空室率を知ることで、賃貸住宅の需給バランスがわかります。空室が多いエリアでは、新築時は満室になるかもしれませんが、その後の入居者斡旋に苦労したり、賃料の下落を招いたりと、スタート時に想定した収益シミュレーションが崩れてしまう可能性が高くなります。
そうした事態を避けるためにも、先に紹介したデータで全体感を確認したうえで、建設予定エリアで事業を行っている不動産会社に実際の状況を聞くとよいでしょう。大和ハウス工業の場合は、グループ会社の中に管理会社などがありますので、賃貸住宅営業担当者に加えて、こうした管理会社の方から実際のデータを見せてもらうとよいでしょう。