トークン不動産、不動産投資の新しい形の紹介
公開日:2019/01/30
POINT!
・トークン不動産が誕生し、将来性が期待される
・反面、安全性・安定性が低く、課題も多い
不動産投資の新たな形が、じわりと広がっています。ブロックチェーン技術を活用した、トークン不動産が国内、海外で少しずつ組成されています。
2019年1月16日の日本経済新聞で、「米国で仮想通貨などの基盤技術であるブロックチェーン(分散型台帳)を使った不動産投資が登場している。物件を裏付けとしたトークン(デジタル権利証)を投資家が受け取り、賃料収入や売却益を得る仕組みだ。投資家が簡単な手続きで購入できるメリットがあるが、トークンの売買の流動性など課題も多い」との記事がありました。
トークン不動産とは、物件を裏付けとしてトークンを発行し、資金調達を行うことで建設される不動産のことです。記事によると、「米証券のプロペラー・セキュリティーズがテクノロジー会社のフルイディティと組み、不動産を担保にしたトークンを発行。投資家から約3000万ドル(約32億円)の資金を集めることに成功した。ニューヨーク・マンハッタン初のトークン不動産となる」とあります。
(日本経済新聞 電子版より引用)
また、日本でも、不動産事業を展開するRAXMt.Fuji合同会社が、FUJIトークンを発行することを発表しました。物件のフリーキャッシュフローのライツ(権利)をトークン保持者に与え、物件に関する書類、契約、経費、配当金、その他発生した関連情報はすべてブロックチェーンで確認可能となっています。
メリットとネガティブポイント
こうしたトークン化された不動産投資におけるメリットと懸念点を挙げておきます。
まず、メリットは以下の6点です。
- ・仲介会社必要なし
- ・手数料がかからない
- ・世界中のトークンを購入できる
- ・ロックアップ(売買できない)期間が存在しない(私募不動産ファンドでは、ロックアップ期間があることも)
- ・手続きが簡単
- ・サーバを分割しているため、ハッキングやデータ改ざんに強い
次に懸念点は以下の4点です。
- ・仲介会社による保証がないため流動性がなくなる可能性がある
- ・ブロックチェーンのシステムそのものが間違っている場合には、間違ったデータが導入され得る
- ・匿名性が高い
→マネーロンダリング目的で使用される可能性がある - ・機密性が低い
→大規模な取引情報を基に、金融取引や各種プロジェクトの情報が推測され得る
まとめると、利便性は高く、国際的な不動産取引につながるという面で将来性は大きいですが、安全性・安定性が低く、資産運用の手法としては未だ危険だといえます。そのため、より精度の高いブロックチェーン技術の選定と、柔軟性に富んだ法制度の制定が課題とされます。
しかし、思い起こせば2001年の9月、アメリカ同時多発テロ事件が起きた前日の9月10日に、東京証券取引所に二つのJ-REIT(日本ビルファンド=三井系、ジャパンリアルエステイト=三菱系)が初めて上場しました。当時はまだREITの仕組みが理解できていない方も多く、REITが広く知れ渡って、多くの個人投資家が投資対象にするまでには時間がかかりました。しかし、今では多くの方がREITに投資をしており、近年では安定した利回りを得ることができる資産としてREITが認められるようになりました。ここでご紹介したトークン不動産もかつてのREITと同じように、今はまだなじみがなく、若干不安な投資対象に思えるかもしれませんが、近いうちに一般的な投資対象になる可能性があります。注目しておいたほうがよいと思います。
また今後は、不動産だけでなく、債権、ベンチャーキャピタルファンドのような既存の資産の権利もトークン化されていくことが期待されています。