最新データで見る建て替え期が迫る!貸家の築年数ごとの割合
公開日:2020/07/30
POINT!
・築年数が建った貸家は、相続や空室が一定割合を超える場合に、建て替えを検討する方が多い
・建て替えにより、賃料上昇、空室率低下、税務効果などのメリットが期待できる
300万戸以上ある旧耐震賃貸住宅物件
総務省が5年に一度調査し発表する「住宅土地統計」では、賃貸住宅(貸家)の築年数に関する統計があります。(注:総務省「住宅土地統計」の最新は2018年10月調査分。公表は2019年から。追加公表を含めて2020年春までに全て公表されました)
これによると、賃貸住宅(貸家)の総数は約1900万戸。築年数別の戸数も集計されています。ちなみに、築年数がわかっているのは約1730万戸で、そのうち1980年以前に建築された旧耐震物件は約300万戸です。
図1は、築年帯ごとの貸家数をまとめたものです。(注:総務省公表データでは、1990年より前は10年刻みで集計されています)
図1:築年数 別貸家の建築の時期(全国)
総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」より作成
1970年以前に建てられた、建築基準法における旧々耐震基準の貸家の多くは、建て替えや再開発などですでに消滅しています。それでもまだ約96.8万戸あり、築年数不詳分を除いた貸家約1730万戸の5.6%を占めています。また、旧耐震基準が適応された1971 ~ 80年の10年間に建てられたものは212.7万戸。旧耐震基準・旧々耐震基準の合計は309.5万戸で、全体に占める割合は17.8%と2割近くになります。5年前の前回調査(2013年分調査・2014年公表)の約20%と比べると少し減りましたが、それでも大きな数です。
少し本題から離れますが、グラフをみると、 1990年以降の5年ごとの建築数は概ね180万戸~ 200万戸で、大きく変わらない水準で推移していることが分かります。
築年数の経った貸家の相続の悩み
こうした1980年以前の貸家は、すでに築40年以上が経過しており、たいていは借り入れの
返済が終わっていると思います。また、建築主(所有者)の代替わり(相続)が行われていることも多いようです。
こうした古い賃貸住宅を所有され、「そろそろ建て替えをすべきか?」と悩まれている方も多いと思います。
築年数が経った物件は、超一等地でもなければ、空室率が上がり、家賃も下落し、また、築浅物件よりリフォーム・メンテナンス費用もかかってしまいます。旧耐震物件の場合は、最近頻発している地震の心配がさらに加わります。
また、「親から受け継いだ物件を、ご子息に引継ぐ」という2度目の相続の可能性がある場合、「古くなった賃貸住宅、子どもに相続してもいいものか」と悩む方も多いでしょう。
そこで、賃貸住宅を建て替えることについて検討してみます。
建て替えるかどうかを検討する基準
まず、「そろそろ建て替えが必要か?」とオーナーの方が思い始めるのは、空室が一定割合を超えた場合だと思います。
「これまで以上に空室の割合が多い」、「空室が出て、再び新しい入居者が決まるまでの期間が長くなった」、あるいは、「新たな入居者への賃料提示を下げざるを得ない」といった現象が起こったときです。
このような状況になると、多くの人は「少しリフォーム工事を行おう」と思い、一定の金額をかけてリフォーム工事を行います。これで改善すればいいのですが、結果的に「元が取れなかった」ということにもなりかねません。「建て替え」も併せて検討したほうがいいでしょう。
こうした、ネガティブ要因とともに重要なのが、築年数と減価償却の視点です。
築年数が30年(物件の建て方により異なります)を超えてくると、減価償却が取れなく(あるいは少なく)なってきて、税務効果が低くなります。また、大半の築35年を超えた物件は、すでにローン残債がなくなって(あるいはかなり少なくなって)いると思いますので、建て替えに踏み切りやすくなります。最後に貸家(賃貸住宅)の建て替えのメリットについて述べておきます。
建て替えのメリット
まず、賃貸住宅需要が変わらずあるエリアならば、かなりの確率で賃料上昇が期待できます。当然、空室率もかなり低くなるでしょう。
次に、建て替えに資金はかかりますが、修繕費用やリフォーム費用など、都度かかる費用が、しばらくなくなります(退去に伴う費用や不可避のものもあります)。大きなメリットが、減価償却費を十分に取れ、税務効果が期待できることです。
旧耐震物件を含め、これから賃貸住宅の建て替えを検討される方も多いでしょう。建て替えを行うには、現在の入居者の立ち退きから始まって、かなりの期間を要します。そのため、少しでも検討をし始めている方は、「まず相談をしておく」ことが必要でしょう。