貸家着工戸数に回復のキザシ!?
公開日:2021/04/28
POINT!
・2021年2月、低調だった住宅着工数に回復の兆しが見えている
・2021年2月の貸家着工戸数は、全国で対前年同月比-0.4%、首都圏で+5.0%まで回復
・特に東京都は+24.4%と大幅にプラスに転じた
しばらく低水準が続いていた貸家の着工戸数が、少しずつ上昇基調になってきました。
2020年の年間住宅着工戸数は約81万戸と4年連続で減少、貸家着工戸数は約30.6万戸とこちらも減少基調でした。しかし、2021年2月の貸家着工戸数は前年同月比-0.4%と、まだマイナス圏ながらも回復の兆しが見え始めています。
住宅着工戸数は、単に「住宅が何軒建てられているか」というだけでなく、住宅建築に携わる方々の雇用、そして住宅購入に伴う家具や家電といった耐久消費財の売れ行きなど、わが国の経済に大きな影響を与えるものです。そのため、
アメリカなどでは、新設住宅着工戸数の増減が株価に影響を及ぼすこともあります。
全国の状況
国土交通省から公表された2021年2月の新設住宅着工戸数の総戸数は、前年同月比-3.7%となる6万764戸でした。これは、20カ月連続の減少です。カテゴリ別では、注文住宅の持ち家が+4.3%で、貸家は2万2556戸で-0.4%でした。
首都圏では持ち家が前年同月比+10.4%、貸家が+5.0%でしたが、分譲戸建ては同-9.4%となり、ばらつきがみられます。
全国での年換算では約80万戸ということで、昨年とほぼ同じくらいの数字となりそうです。少しずつ回復のキザシも見えてきましたので、2021年は昨年よりも着工戸数は多くなると思われます。
図1:住宅着工戸数の前年同月比の推移(全国)
国土交通省「建築着工統計調査」より作成
図1は2020年9月~2021年2月(半年分)の住宅着工戸数(全国合計)のカテゴリ別前年同
月比推移を示したものです。
総計は、前年同月比を下回る月が続いていますが、持ち家は、2020年11月にプラスに転じ、それ以降プラスが続いています。また、デベロッパーの戦略や状況が色濃く出る、分譲カテゴリ(分譲戸建て・分譲マンション)はいつもながら波があります。例年住宅着工戸数の4割程度を占める貸家の着工戸数が、全体に大きな影響を及ぼします。図で分かるように2021年2月は大きく伸び、もう少しでプラス圏内に入る状況です。
東京都の状況
東京都が2021年4月6日に発表した「令和3年2月住宅着工統計」によると、貸家では回復
のキザシが見え始めています。
東京都内における2021年2月の新設住宅着工戸数は9,623戸で、前年同月比では、持ち家と貸家の2つのカテゴリが増加しました、分譲住宅(分譲戸建て・分譲マンション)が減少し、全体では+1.9%なり、プラスが2カ月連続しました。
これを、利用カテゴリ別でみると、持ち家は1,326戸(前年同月比+18.1%、3カ月連続のプラス)、貸家は5,316戸でなんと前年同月比+24.4%となりました。これは6カ月ぶりのプラスです。
分譲住宅は2,849戸(前年同月比-29.2% 2カ月ぶりのマイナス)で、そのうちマンションは1,547戸(同-39.0%、2カ月ぶりのマイナス)一戸建てでは1,281戸(同-13.8%、8カ月連続のマイナス)となりました。前述したように、分譲カテゴリにはかなり波がありますので、仕方ない面もあります。
地域別でみると東京23区全体では8,007戸(前年同月比+3.7%、6カ月ぶりのプラス)、市部では1,592戸(前年同月比-6.0%、2カ月ぶりのマイナス)となりました。
東京都における貸家着工戸数と投資家の意欲
東京都における貸家着工戸数ですが、2021年2月は前年同月比24%以上の増加となりました。
図2:貸家着工戸数と前年同月比の推移(東京都)
国土交通省「建築着工統計調査」より作成
図2は2020年9月~2021年2月の東京都における貸家着工戸数の推移です。しばらくマイナスが続いていましたが、2月は大きくプラスになりました。
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