気候ニューノーマル時代の賃貸住宅のあり方
公開日:2021/05/21
テレビなどの天気予報でよく耳にする「平年より~」という言葉。この天候の平年値が2021年5月19日から変わりました。
平年値は、西暦で末尾に1のつく年に改定されます。現行(2021年5月18日まで)の平年値は、1981年~2010年の30年間の平均を算出して平年値としていますが、今後は、1991年~2020年までの30年間の平均の値となります。これに伴って、現在少し感じられていた「平年より~」の数値に対する違和感が多少なくなるのかもしれません。
かつては、「異常気象」と呼ばれていた、夏の猛暑、長く続く大雨、巨大化する台風など、これらは、今ではすでに当たり前となってきていますが、我々の住まいにも大きな影響を及ぼすようになってきています。
新平年値の特徴
新しい平年値の特徴は、気象庁によると以下のとおりです。
平均気温
現在の平年値よりも高くなる季節・地域が多く、年平均気温では0.1~0.5℃程度高くなるところもあります。真夏日(日最高気温30℃以上)の年間日数の新平年値は、東日本から沖縄・奄美の多くの地点で3日以上増加し、猛暑日(日最高気温35℃以上)が4日以上増える地点もあります。
これに伴い、桜の開花の平年値も新平年値では1~2日早くなるようです。「平年に比べ1週間も早い」というような報道を目にすることもよくありましたが、これが「平年より5日早い」となるのでしょう。
降水量
夏の西日本や秋と冬の太平洋側の多くの地点で10%程度多くなります。
降雪量と寒さ
新平年値は、現平年値と比べ、多くの地点で少なくなっており、30%以上減る地点もあります。冬日(日最低気温0℃未満)の年間日数の新平年値は北日本から西日本の多くの点で2日以上減少します。
こうしてみると、温暖化がジワジワと確実に進んでいることが分かります。そしてその影響なのか降水量が増えています。
ハザードマップの告知、義務付け
2019年10月の台風19号により多摩川が一部氾濫したことで、多摩川沿いに建つタワーマンションの電源が落ち、大きな話題となりました。タワーマンションは地下に電源があることが多いため、こうした問題が発生したと思われます。
温暖化の影響からか、近年は大規模水災害の頻発により、それに伴う大きな被害が生じています。そのため不動産の各種取引時においても、水害リスクに関する情報が、これまで以上に契約締結の意思決定を行う上で重要な要素となっています。
こうしたことから宅地建物取引業法施行規則の一部が改正され、2020年8月28日以降、水害(洪水、雨水出水、高潮)ハザードマップ上の記載状況が重要事項説明に加わりました。浸水想定域内はもちろん、浸水想定区域の外の売買の仲介、賃貸物件を仲介する場合にも説明が必要になっています。
また、賃貸物件検索サイトの中には、公募物件が地図上でプロットされるページにおいて、国土交通省が公開する「浸水想定区域データ」を重ねて表示できる機能を付けているサイトもあります。
異常気象がニューノーマルになる時代の賃貸住宅のあり方
こうしたことから、賃貸住宅のあり方が少しずつ変わっていくものと思われます。
例えば、浸水想定区域やそれに類する地域においても、当然、土地の有効活用は求められます。こうした地域での新たな賃貸住宅建築の際には、「万が一」に対応できる賃貸住宅にするべきだと考えます。利回り重視のコストのみを考えた賃貸住宅ではなく、しっかりとリスク対応し、オーナー様の資産を守りまたご入居者の暮らしを守る賃貸住宅を建てることが必要だと強く思います。
また、その元凶となっている地球温暖化への対策がしっかりとされた賃貸住宅、例えばZEH(ゼッチ)基準を満たした賃貸住宅を建てることは、多少割高になるとしても、これからの時代に求められる賃貸住宅なのではないでしょうか。