キャップレートの現状はどうなっているのか?2021年の状況と今後の見通し
公開日:2022/01/11
POINT!
・都市における賃貸住宅のキャップレートは、ワンルームマンション・ファミリータイプともに、低い数字が続くと見られている
・不動産投資や土地活用投資としての賃貸住宅投資の熱はしばらく冷めない、 と考えられる
キャップレートとは、投資家が不動産投資を行う際にどのくらいの利回りを期待するか、つまり「不動産投資の期待利回り」のことです。通常は、不動産から得られる年間の収益(賃料収入―経費等)÷不動産価格(投資金額)で計算されます。
今回は、2021年のキャップレートの動きと、今後の予測について「第32回不動産投資短期観測調査:協力一般社団法人不動産証券化協会」のデータをもとに解説します。
※キャップレートは、不動産種別、立地(エリア)、建て方(工法)などいろいろな変動要素がありますので、ここでのキャップレートの数字は、傾向や状況をつかむためのイメージとして捉えていただきたいと思います。
キャップレートについては、2021年3月に公開された本サイトでの連載「2020年、主要都市のキャップレートはどう動いたのか」において、新型コロナウイルスによる影響がどのくらいあったのかを、一般財団法人日本不動産研究所のデータをもとに解説しましたので、併せてお読みください。
賃貸住宅 ワンルームタイプのキャップレート
この「不動産投資短期観測調査」は毎年2回(6月と12月)、半年ごとに調査が行われます。2021年6月分(第32回分)が先ごろ発表されました。
賃貸住宅(ワンルーム)のキャップレートでは、最も低い東京港区(赤坂・青山・麻布エリア)で3.8%(前回から変化なし)、東京城南地区で3.9%(前回調査からマイナス0.05%)、東京城東地区では4.1%(前回からマイナス0.1%)でした。いずれも、コロナ禍前から大きな変化はなく、あっても0.1%程度となっており低いキャップレートが続いています。また、東京23区の主要エリアでのキャップレートの差は0.2%程度となっており、以前に比べて都心の中での差が小さい状況になっています。説明は不要かもしれませんが、前回からキャップレートがマイナスということは、賃料が横ばいとすれば同一条件下で価格上昇を意味し、プラスということは価格下落ということになります。
このようにワンルームマンションへの投資熱は都心中心だけでなく、城東エリアをはじめ都心周辺部まで広がっています。しかし、都心のワンルームマンションでは多少空室が出ているようです。
一過性のものであればいいと思いますが、少々注意が必要かもしれません。
東京以外の首都圏では、さいたま4.8%(前回から変化なし)、千葉4.9%(前回からプラス0.1%)、横浜4.6%(前回からプラス0.1%)となっています。
地方都市に目をやると、札幌5.0%(前回から変化なし)、仙台5.1%(前回からマイナス0.2%)、名古屋4.8%(前回からマイナス0.05%)、大阪4.5%(前回から変化なし)、神戸5.1%(前回からプラス0.05%)、広島5.4%(前回からマイナス0.1%)、福岡4.6%(前回からマイナス0.05%)となっています。
半年先を見越したキャップレートでは、おおむねほとんどのエリアが横ばいとなっていますが、仙台・広島が0.1%程度、千葉・横浜・名古屋・福岡では0.05%程度のキャップレート上昇見込みとなっています。
賃貸住宅 ファミリータイプのキャップレート
次に、賃貸住宅のファミリータイプのキャップレートについてです。こちらも前回から大きな変化はほとんどなく、また半年先の見通しでも同様にほぼ変化の予測はありません(最大でも
0.05%)でした。
東京港区エリアは3.8%、城南エリアは4.0%、城東エリアは4.2%となっており、ワンルームタイプと大きな違いはありません。また他エリアも同様にワンルームタイプとほぼ同じとなっています。
まとめ
本調査の結果をみると、ワンルームマンション物件(1棟単位での投資・区分マンション投資)、ファミリータイプ物件とも、しばらくは現在のような低いキャップレートが続くと見られています。つまり、この調査結果だけで判断すると、しばらくは不動産投資や土地活用投資としての賃貸住宅 投資の熱は冷めないものと思われます。