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土地活用ラボ for Owner

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コラム vol.395
  • 賃貸住宅経営のポイント

「住む」と「貸す」のハイブリッド 賃貸併用住宅という選択肢

公開日:2022/03/31

POINT!

・人生100年時代に向けて、老後資金づくりの重要性・必要性がますます高まっている

・暮らしながら「稼げる」という新様式の発想が盛り込まれた住宅が増えている

・自宅を賃貸併用住宅にするなど、保有資産を有効活用し、複数の収入源を持つことが、将来への備えとなる

「老後2000万円問題」思い知らされた老後資金づくりの重要性

近頃、FIRE(Financial Independence, RetireEarly)という言葉を目にする機会が増えました。皆さまは聞いたことがあるでしょうか。FIREとは、企業戦士として定年まで働き続ける旧来型の就業形態から決別し、早期で退職後、これまで自身で築いてきた財産を元手に、その蓄財を運用・生活費に充てながらリタイア後の生活を送るライフスタイルを指します。若いうちから経済的自立を手に入れ、精神的にも金銭的にもゆとりあるセカンドライフを送ろうという考え方です。

こうした概念が誕生した背景には働き方の多様化がありました。働き手としての自立的なキャリアを活かした「個人」(従業員一人ひとり)が主役となる時代の到来です。組織や仕事に貢献し、勤務先への忠誠心や帰属意識が重要視されたのはひと昔前の話です。近年、経済主体は「企業」から「家計」へと移り変わりました。すでに終身雇用は形骸化しています。

ニューノーマル時代の到来を見据え、各企業も新しい働き方のスタイルを模索しています。コロ ナショック以前から企業を取り巻く経営環境は激変しており、副業や兼業を解禁する民間企業も 増えてきました。わが国にも少しずつ「ジョブ型」の雇用システムが浸透し始めており、人材流動 化の流れは早まるばかりです。

また、別の理由として、将来への不安もFIRE人気を後押ししています。2019年に勃発した「老後2000万円問題」の過剰反応ぶりには驚かされました。金融庁から同年に提出された報告書が問題となったわけです。「夫65歳以上、妻60歳以上のみの無職世帯では、95歳まで生きるために夫婦で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になる」という試算結果が、どうしてこれほどまでに過敏に受け止められたのでしょうか。

想像するに、公的年金だけでは安泰な老後生活が送れない恐れがあることを知らされ、その怒りが政府への不信感とともに増幅されたのではないかと分析します。老後資金づくりの重要性・必要性を思い知らされた格好です。自己防衛せずして明るい未来は期待できないのです。

暮らしながら「稼げる」という新様式の発想

ところで、なぜ、本コラムでFIREの話を持ち出したかというと、土地活用もひと工夫すればFIREと同様の生活が目指せることをお伝えしたかったからです。保有不動産も運用次第で経済的自立が手に入れられるわけです。働くことにも、お金にも縛られない、自由な暮らしが実現するのです。

私事ですが、2月中旬、東京都内の住宅展示場で仕事をする機会がありました。まん延防止等重点措置の適用期間中であり、各ハウスメーカーは集客に苦しんでいました。そこで、来場を促そうと週末にイベントを開催。私はセミナー講師として呼ばれました。
そこで気付いたのですが、常設するモデルハウスは大多数が3階建てで、ある1棟は1階部分が店舗でテナントを誘致できる設計になっていました。気になり見学させてもらうと店舗はフラワーショップになっており、2・3階が居住部分(オーナー様の生活スペース)という間取りでした。
この住宅展示場では、こうした非居住スペースを併設したモデルハウスが大多数を占めており、販売員に尋ねると「都心立地というポテンシャルを有効活用できるよう、『貸す』=『稼げる』収益フロアを提案している」と説明してくれました。建物には状況に応じて用途を可変できる耐久性の高い資材や工法が採用されており、『提案例(モデルハウス)は店舗仕様ですが、要望に応じて賃貸併用、あるいは将来的には二世帯住宅としても転用可能になっています』とのことでした。
つまり、このモデルハウスには単に住むだけではなく、暮らしながら「稼げる」という発想が盛り込まれているのです。汗水垂らして働くのが美徳と称賛された時代は過去のものとなりました。決して目新しい発想ではないのですが、それでも思わず共感・納得したのを今でも覚えています。

パワーカップルの興味対象はタワマンだけではなかった

では、実際、どういう人たちが暮らしながら「稼げる」という発想に共感し、契約しているのでしょうか?
私の予想では、すでに土地を所有しているシニア世代の建て替え層が中心かと思っていたら、「パワーカップルにも好評をいただいています」と説明されました。DINKSや未就学児のいる若い 共働き夫婦にも人気だというのです。パワーカップルの興味対象は都心のタワーマンションだけで はなかったのです。
しかも、建物を新築するだけではなく、敷地も同時に探して土地・建物そろって取得するという のです。決して立地にも妥協しないそうです。その裏には「賃貸併用にすることで、銀行が有利 な条件で融資してくれる」という理由がありました。収益不動産として扱われるため、高い掛け 目(少ない自己資金)での融資が受けられるのです。あらかじめ家賃収入を返済計画に当て込む ことで、若い世代でも都心の注文住宅が取得可能になるのです。

「住む」と「貸す」のハイブリッドで「長生きリスク」に備える

住宅市場を振り返ると、近年、自己居住用のマイホーム取得時にも「貸しやすさ」「売りやすさ」が意識されるようになりました。実需不動産にも投資的な視点(経営感覚)を持つ必要性が説かれているのです。人生100年時代、「老後2000万円問題」により公的年金だけでは安定的な生活が送れない恐れが現実味を帯びるなか、より収益源の複数化が欠かせなくなっています。その意味において、今後、暮らしながら「稼げる」という新様式の発想は、さらなる広がりを見せるはずです。利用価値のある物件選択が、さらに重要視されていくのです。その最有力候補となる賃貸併用住宅には、どのような魅力があるのか。以下、そのメリットとデメリットも併せて確認しておきましょう。

  • 【賃貸併用住宅のメリット】
  • ・家賃を充当することで、ローンの返済負担を軽減できる
  • ・アパートローンではなく、住宅ローンが利用できる(自宅部分の床面積が50%超の場合)
  • ・リタイア後の収入源(私的年金)として見込める
  • ・所得税や相続税の対策となる

賃貸併用住宅のメリットは、家賃収入によりローンの返済負担が軽減できる点です。完済すれば不労所得となり、私的年金として見込めます。
また、いくら低金利な融資環境とはいえ、アパートローンは住宅ローンより適用金利が高くなります。不動産融資は長期間にわたって大金を借り入れるため、わずかな金利差でも総返済額に大きく響きます。その点、自宅と賃貸を「併用」することで、住宅ローンを利用できれば返済計画に好影響を与えることができます。

  • 【賃貸併用住宅のデメリット】
  • ・建築コストは住居専用住宅に比べて高くなりやすい
  • ・住宅ローン減税は居住用部分のみが対象となる(賃貸部分は適用外)
  • ・オーナー様とご入居者の間で、余計な気遣いが必要になったり、管理面に関するトラブル解決が必要になることも考えられる。

他方、デメリットとして建築コストは住居専用住宅に比べて高くなりやすいのが難点です。その解決方法として賃貸部分の仕様を落とし、安価な部材や住宅設備を使う手はあるでしょう。オーナーとして、ローコストで仕上げて安く貸すのか、それとも一定のコストを掛け、その分、高収益を狙うのか、その選択は各オーナー様の投資スタンスによって異なってきます。いずれにせよ、建物を設計する段階で方向性(投資スタンス)を明確にしておく必要があります。また、オーナーとご入居者が一つの建物に住むことによる課題や管理に関しては、建築設計の段階で双方が出来るだけ気遣いをしなくて済む動線を考えたり、管理面は管理会社にしっかり委託するなど経営面での検討をすることも大切です。

2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳でした。男性は世界第2位、女性は世界第1位の長寿国です。とても喜ばしいことですが、その半面、「長生きリスク」も懸念されます。老後の蓄えが底をつき、生活に困窮しては困るのです。
そうならないよう、複数の収入源を持ってほしいというのが本コラムの結論です。マイホームは 「住む」だけではなく、「住む」と「貸す」のハイブリッドによる相乗効果を狙うべきです。もはや、企業戦士として定年まで働き続ける必要はありません。保有資産を上手に有効活用し、ぜひとも経済的自立を果たしてください。

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