知っておきたいポイントQ&A
共働き世帯は、夫妻それぞれの収入を前提にした
住宅ローンを組むことによって、住宅の購入チャンスが広がります。
共働き世帯が住宅購入に際して、考えるべき点について、
ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに解説してもらいました。
共働きローン世帯のローンの組み方は3種類 多くの借り入れが可能に
Q:どんなローンの組み方がありますか。
A:夫妻双方に安定した収入が見込め、それぞれの収入を前提にした住宅ローンを組む場合、夫や妻が単独でローンを組むより、多くの金額を借りることができます。ローンの組み方には、大きく分けて3種類あります。
夫妻がそれぞれの収入に応じ、別々にお金を借りるのがペアローンです。別々といっても、同じ金融機関からローンを借りることが必要です。夫と妻は、お互いに相手の債務についての連帯保証人になります。つまり、例えば、夫が返済できなくなったときは、妻は自分のローンだけでなく、夫の分のローンも返すことになります。
夫妻の収入を合算して考えたうえで、1本のローンを組む方法もあります。夫と妻が連名でローン契約をする連帯債務型です。夫妻はお互いに全額を返済する義務を負います。金融機関からすれば、夫からでも妻からでも返済を受けられれば構わないことになります。
夫か妻のいずれかの名義でローン契約するのが連帯保証型です。夫が契約を結んだ場合、妻は連帯保証人となります。妻に支払い義務が生じるのは、夫がローンを返さない場合のみです。
金融機関によって選べるタイプはほぼ決まっています。民間金融機関が主に提供しているのは、ペアローンと連帯保証型です。連帯債務型の代表的な商品は住宅金融支援機構の長期固定金利住宅ローン「フラット35」です。連帯債務型を提供している民間金融機関は一部にとどまります。
Q:住宅の名義はどうなりますか。
A:購入資金を出した割合とするのが基本です。従って、ペアローンや連帯債務型では夫妻の共有名義になります。夫と妻が2対1の割合で資金を出したのに、持ち分の割合が1対1とすると、夫から妻に財産を与えたとして贈与税がかかる可能性があります。
連帯保証型は、連帯保証人になった方が頭金を出していない限り、ローン契約を結んだ方が名義人となります。
知っておきたいそれぞれの特徴 税金、手数料、団信…
Q:メリットはどう異なりますか。
A:納める所得税や住民税が控除される住宅ローン控除の扱いで大きな差が出ます。ペアローンと連帯債務型は、夫妻それぞれが控除を受けられますが、連帯保証型ではローンを結んだ本人しか控除を受けられず、単独で借りた場合と変わりません。
住宅ローン控除は、年末のローン残高の1%、年間の最大控除額(新築では40万円もしくは50万円)、所得税と住民税(住民税の控除上限額は9.75万円または13.65万円)の合計額のいずれかのうち、最も少ない金額分だけ税金が控除されます。夫妻の双方にある程度以上の所得がある場合、住宅ローン控除がそれぞれ受けられることは、大きなメリットになります。逆に、パートなどで所得がそれほど高くない方にとっては、メリットはそれほど大きくありません。
借りられる額にも差が出ます。金融機関によって違いはありますが、ペアローンは夫妻それぞれの年収に応じて借りられますし、連帯債務型は夫妻の収入を合算した金額に応じて借りられます。連帯保証型はペアローンや連帯債務型より借りられる額が少なくなる傾向にあります。
- ※1妻が頭金を出した場合は、その分は妻名義になる
- ※2フラット35などでは妻も入ることができる(金利上乗せ)
Q:ローンを組んだ人が亡くなった場合はどうなりますか。
A:契約者の死亡時などに返済が免除される団体信用生命保険(団信)の扱いも、ローンによって異なります。単独ローンでは、ローン契約者が死亡すると債務がすべてなくなるので、配偶者が返済する必要はありません。しかし、ペアローンでは夫妻それぞれが団信に入りますが、例えば、夫に万が一のことがあっても、返済が免除されるのは夫のローンだけです。妻にローンは残ります。
連帯債務型では、夫妻のどちらかしか団信に入れないことがあります(フラット35では金利上乗せで配偶者も併せて加入可能)。団信に入っていない人が亡くなると、収入が減る一方、ローン残高が減らないので、家計が厳しくなります。連帯保証型も、配偶者は団信に入れないので、同様のリスクがあります。
Q:手数料は異なりますか。
A:ローンを2本組むことになるペアローンでは、金融機関への手数料や、登記に伴う司法書士への報酬が増えるため、10万~20万円程度負担が重くなるとみた方がよいです。
考えたくないけど、離婚や仕事ができないときのこと
Q:離婚したらどうなりますか。
A:ペアローンや収入合算で借りる場合では、離婚しても、双方に返済の義務が残ります。片方の返済が滞ると、もう片方がすべてを返済しなければならない可能性に注意が必要です。たとえば、離婚の際に、妻が家に住み続け、夫は別の家で暮らすケースの場合、夫は自分が住まない家のローンの支払いを続けることになります。法的に別れても、なかなか金銭面での縁を切れません。夫の生活が立ち行かなくなると妻が返済義務を負うため、トラブルになることもありがちです。家を売却して完済すればよいのですが、残債が多いと売却代金では足りず、離婚したくてもなかなか離婚に踏み切れない方もいます。
Q:どのような世帯が夫妻でローンを組むべきでしょうか。
A:ローン返済は、病気やケガ、失業、あるいは、出産や育児などで仕事ができない期間も続きます。手元に資金がないと、肩代わりすることになる配偶者の負担が重くなります。夫妻2人でローンを組むのは、ともに将来も継続して仕事を続けていくと考えている場合が向いています。
借りすぎ用心 収入の見通しを見極めて ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引士 竹下さくらさん
共働き世帯が、夫妻それぞれの収入を前提にした住宅ローンを組む場合、夫か妻が単独でローンを組むより、多くの金額を借りることが可能になります。だからといって、借りる額が大きくなりすぎることには注意が必要です。ローンの返済は長い時間にわたり続きます。その間には、妊娠や出産、親の介護などに伴い、夫妻のいずれかが仕事をできなくなるかもしれないことを念頭に置き、返済に余裕をもった借入額に抑えることが鉄則です。2人でローンを借りたり、どちらかが連帯保証人になったりするときは、1人だけに任せないという覚悟が必要になります。
死亡したときに、債務がなくなるのは、死亡者本人分のローンのみです(フラット35で夫婦双方が団信に入った場合を除く)。団信とは別に、生命保険でリスクに備えておきたいものです。
PROFILE
竹下さくら(たけしたさくら)
ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引士
損害保険会社・生命保険会社勤務を経て1998年にFPとして独立、現在に至る。個人のコンサルティングを主に、講師・執筆活動等を行っている。住宅関連の著書に、「『家を買おうかな』と思ったときにまず読む本」(日本経済新聞出版社)、「ローン以前の住宅購入の常識」(講談社)などがある。「SUUMO新築マンション」の特集記事を定期的に監修しているほか、東洋経済オンラインや日経カレッジカフェにて記事を連載中。
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※掲載の情報は2019年3月現在のものです。