昨今、めまぐるしく変わる社会に対応するため、住宅購入にあたって、政府はさまざまな支援策を提供しています。これらの制度を有効活用するためには、制度をよく知る必要があります。なぜなら審査や申請が必要であり、そのやり方、期間もそれぞれ異なるからです。今、ご自身が利用できる制度はどのようなものがあるのかを見極めるためにも、制度の内容、特に条件と期限をしっかり確認し、得られるメリットを最大限享受できるように準備をしておきましょう。今回お話しするのは住宅ローン控除、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置、子育てエコホーム支援事業の3つです。
令和6年度の利用できる制度
令和6年度の税制改正では、子育て世帯への支援強化と住宅価格の上昇に対応するため、住宅ローン減税の制度が見直されました。
住宅ローン控除
住宅ローン控除の制度は令和6年度からどのように変わるのか、まずは新築住宅についての変更点を見てみましょう。
今回の改正のポイントは、以下の通りです。
- (1)子育て世帯・若者夫婦世帯は令和6年に入居する場合、借入限度額が令和4・5年の水準を維持(認定住宅:5,000万円、ZEH省エネ住宅:4,500万円、省エネ基準住宅:4,000万円)。
- (2)新築住宅の床面積要件を40m2以上に緩和(所得1,000万円以下限定)、建築確認期限を令和6年12月31日まで延長。
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
住宅取得等資金に係る贈与税に対する非課税措置にも変更があります。
- (1)受贈に係る適用期限を3年間(令和6年~8年)延長。
- (2)非課税限度額が1,000 万円に上乗せされる「良質な住宅」の要件について、新築住宅の省エネ性能要件をZEH 水準(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)にする。
※令和5年12月31日までに建築確認を受けた住宅又は令和6年6月30 日までに建築された住宅については、現行要件(断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上)のまま。
では、詳細を見ていきましょう。
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について、以下のとおり3年間(令和6年1月1日~令和8年12月31日)延長。
贈与税非課税限度額
床面積要件
50m2以上
※合計所得金額が1,000万円以下の受贈者に限り、40㎡以上50㎡未満の住宅についても適用。
質の高い住宅の要件
以下のいずれかに該当すること。(変更点は赤字)
参考:改正前(令和4・5年受贈)
子育てエコホーム支援事業
令和6年3月中下旬頃に交付申請が始まる予定の支援事業です。
子育てエコホーム支援事業は、エネルギー価格などの物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修等に対して支援することにより、子育て世帯・若者夫婦世帯等による省エネ投資の下支えを行い、2050年のカーボンニュートラルの実現を図る事業です。では、詳しく見ていきましょう。
補助の対象
※ただし、注文住宅の新築および新築分譲住宅の購入については、子育て世帯または若者夫婦世帯が取得する場合に限る
補助額
登録事業者
補助対象者に代わり、本事業の手続き等を行う補助事業者として予め事務局に事業者登録※したもの
※交付申請または交付申請の予約までに事業者登録が必要
補助金の還元方法
登録事業者は、交付された補助金を予め補助対象者と合意した方法により、還元。 なお、還元方法は原則(1)とする。
- (1)補助事業に係る契約代金(最終支払に限る)に充当する方法
- (2)現金で支払う方法
対象期間
スケジュール(予定)
交付申請の開始 2024年3月中下旬
まとめ
省エネ等住宅等への優遇の方向性が色濃くなっている制度の背景には、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた長期的な政府の視点が含まれています。省エネ等住宅を取得することは購入時に税制面でのメリットがあり、購入後にも設備機器類のエネルギー消費量が削減できたり、優れた断熱性により光熱費が削減できたりするメリットがあります。また、子育て世帯への支援も強化されました。
このような視点を持って住宅選びをすることにより、得られるメリットを最大限享受できるようになります。
執筆者
山田健介
FPplants株式会社 代表取締役社長
住宅メーカーから金融機関を経て「お客さまにお金の正しい知識や情報をお伝えしたい」という思いからFPによるサービスを行う会社を設立。現在は全国のFPを教育する傍ら、執筆、セミナーを行う。特にライフプラン作成、住宅、保険に関する相談を得意とする。
※掲載の情報は2024年2月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。